第27話 迷宮部活動再開

――――【颯真目線】


 アリシアたちが裏切らなきゃオレは姉貴に莫大な借金を背負わなくて済んだんだ!


 アリシアの裏切りは後ろで哪吒が糸を引いてやがるに違いねえ! オレのパーティーから追い出されたことを逆恨みして、姑息な手段を取りやがる……。


 アリシアに哪吒……てめえらは絶対に許さねえ。


 婚前交渉はダメとか訳わかんねえことを言ってやがるようなアリシアは結婚したらガバガバになるまでハメ倒して風俗、いや立ちん坊で金を集めさせてやる。


 オレの前ではちっとも笑顔を見せねえくせに哪吒の前だと楽しそうに笑ってやがった。気づくのが遅れたが、あいつらオレが知らない間にできてやがったんだ……。


 オレ以外の男を好きになるとかありえねえだろ、フツー。マジで何考えてやがんのか分からねえよ、まったく。


 まあ見てろ、哪吒。


 おまえがオレの所有物であるアリシアを奪った罪は重い。アリシアをてめえの前で犯してやるからな。おまえの好きな女はぜんぶオレに犯されて、気持ち良さからおまえの前でイッちまうんだよ!


 最高過ぎだろ、まったくよぉ!


 天才的頭脳を持つオレはアリシアを奪う計画を既に進めている。迷宮探索校の執行部部室にとある呼びつけていた。


 トントンと部室のドアがノックされた。


「おう、入れ」

「失礼いたします」


 詰め襟のホックをきっちり止めた男が緊張した面持ちで入ってきた。オレは執行部長のデスクの上に靴のまんま足を投げ出している。黄昏学園の生徒会長程度の小物ならこんくれえの応対でちょうどいい。


「石動……てめえ、何ちんたらやってんだ?」

「も、申し訳ありません、カイザー……」

「ちゃんと部を潰せ。じゃねえと女を紹介しねえからな」

「カイザー、そんなご無体な!」


「オレが紹介してやった女で童貞捨てられたんだろ? だったらオレのために尽くす……この世はギブアンドテイクだ。なのにてめえはオレからの恩を畜生みてえに貪ろうってのか?」


「滅相もございません! 廃部にする計画についてはすでに動いております」


 石動はデスクの前に跪いて報告した。廃部計画進捗書なる紙をオレに見せ、読み上げる。


「ははは! 石頭にしてはちったぁマシなことを思いつくじゃねえか。だがまだ手緩いな。哪吒とシノブを除くその三人の部員に圧力を掛けて潰せ」

「イエス! マイカイザー!!!」


 石動は拳を床につけて、オレに頭を下げた。


 哪吒がダンジョン探索可能な状態で迷宮部に加わったことは誤算だったが、石動の奴にしてはいい仕事をしてやがった。


 哪吒が迷宮部存続のための活動実績に関する書類にサインしてる以上、しくじれば迷宮部は確実に廃部だ。ククク……森野シノブ。オレが抱いた女コレクションにおまえのような古風な女はいねえ。ちゃんとオレのコレクションに収めてやる。


 シノブを手に入れ、哪吒のダンジョン探索の復活の手立てを封じる……オレは自らの才能が恐ろしい。あの諸葛光明すら裸足で逃げ出すほどの策が思いついちまうんだからなぁ!!!



――――【哪吒目線】


 俺は迷宮部の部室にいた。


「部長! お久しぶりです」

「ずっと休んでて済みません……」

「部室が綺麗になってる!?」


 男子二人と女子一人が部室に入り、三者三様の反応を示した。長髪で白い肌の男子が佐渡、髪が短くて肌が浅黒い男子が赤沢、茶髪ロングのポニーテールの女子が伊勢というらしい。


 三人はダンジョン探索自体は好きだが、部室に巣くっていた不良たちからスライムにすら負けたことを馬鹿にされて自信をすっかり喪失していたようだ。


 佐渡が目を輝かせながらシノブに訊ねる。


「元迷宮探索校のエリートが入部したってホントですか!?」

「ええ、とってもスゴい子よ。紹介するわ。出てきて哪吒くん」

 

 シノブに呼ばれて、カーテンで仕切られた奥から顔を出す。


「いやエリートじゃないよ、腕もないし……」


 嵌めたグローブを外して、俺の腕が義手であることを明かす。変に期待されても困るからだ。


「生哪吒さんだ……」


 生哪吒!?


 俺が目を丸くしてると赤沢がポケットからスマホを取り出し、スクショを見せてくる。画面には俺が双頭呪竜ツインヘッドカースドラゴンと対峙しているシーンが収められていた。


「おれ、見ました! 腕に噛みつかれても仲間を逃がすために孤軍奮闘……『ここは俺に任せて、おまえらはれもんを連れて逃げろ!』なんてなかなか言えないっす!」


 赤沢は俺の声色を真似て、アリシアたちを助けるために言ったことを再現していた。


 あのときは必死だったから、こっぱずかしいこともすらすら言えたが、通常時にあんなこと言うのは無理。


 ダンジョン探索していてアリシアたち以外から誉められたことがなかったから、とにかく恥ずかしい。


 伊勢は俺が義手であることなんてまったく気にせずに握手を求めてくる。彼女の手を握り返すと……。


「まさかあのダンジョン探索レジェンド、日向小次郎の薫陶を受け継いだ日向哪吒さん!?」

「そ、そうだけど……父さんはスゴいけど、俺は……」


「わあっ!? 義手なのにこんなに滑らかに動かせるんですね! まるで本物の手みたい……」


 俺が伊勢に義手を両手で握られてる隣でシノブが残念がっている。


「真島くんは……来れなかったのね」 

「もしかしたら嫌がらせがあったのかも」

「嫌がらせ?」

「はい……」


 伊勢は俺の手を離さずにスカートのポケットからスマホを取り出し、シノブに画面を見せている。俺もちらっと画面を覗くと匿名で脅迫とも取れる内容が書いてある……。


 まあこんなことしてくる相手は言うまでもなく生徒会の連中だと思うんだけど、はっきりとした証拠がない。


「シノブさん!?」


 ほむらから脅迫メッセージを見せられたシノブは目に涙を浮かべる。


「こんなことをされているのに来てくれて、ありがとう……」


 迷宮部員同士の感動の再会を見届けたあと、すぐに活動実績を上げるためのトレーニングを行う必要があった。


「私たちに残された時間は一週間……すぐにでもダンジョン探索に行きたいけど、実地演習となると協会に許可を取らないといけない……」


 迷宮探索協会に探索許可申請をしても最短で明日。だが探索実績がしばらくなかったパーティーの審査は厳格に行われるため、結局許可が下りたのは活動実績を報告する当日のみだった。


「はあ……これじゃ、実績を上げるどころか……途中で撤退せざるを得ないわ……」


 肩を落とす俺たちだったが、部室のドアの枠に手を伸ばしてこちらを見てる者がいた。


「やっと揃ったか、迷宮部員ども。こんな日が来るかもと思い、シミュレーターを隠しておいてよかった」

「志麻姉ちゃん!」

「「「「早瀬先生!?」」」」

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