第24話 高額請求される間男【ざまぁ】

――――【颯真目線】


 なんとか集めに集めた秘蔵のレアアイテムを使って、スケルトンの群れを撒くことに成功した。だが、アイテムの総額だけで500万は逝ったぞ!


 あまりにも腹が立って、遺跡みてえな場所の壁をガンガン蹴っていた。


「くそっ、くそっ、くそったれっ!!! どいつもこいつもオレを馬鹿にしやがって! オレを誰だと思ってんだ! 網代家の令息颯真さまだぞ!」

「颯真くん、落ち着いて……ね。あなたは選ばれた人なんだから……」


 ゆきが不安そうになりながらもオレを宥めてきやがる。


「おまえにオレの悩みが分かんのか! 網代家の重圧を背負い、結果を求められるオレの辛さをよぉ! オレは哪吒苦みてえな底辺がちょっと頑張ったら誉められるような浅瀬で水遊びやってる人間じゃねえんだ」


「……ご、ごめんなさい」


 オレが拳を振り上げ、ゆきに向けると頭を下げ小さくなる。


 まったくこいつは何かある度に謝れば済むって思ってやがる! ゆきがパーティーに加入してからオレは不運続きだ!


 疲れ果てたオレは壁を背に座り込んだ。ゆきは膝を抱えて、うなだれている。


 体力も魔力もRTAで景気よく全ぶっぱしちまってすっからかんだ。体力はこのままモンスターに見つからねえで済めば回復するだろうが、魔力は魔力補充液マナポーションでも飲まねえと無理だな。


 ぐうと腹の虫が鳴る。


 食料のほとんどはアリシアたちに持たせてたのが間違いだった! あいつらがオレを裏切りやがったせいで、ダンジョンに潜って三日間何も口にしてねえ!


 ああ、シャトーマルゴー1978とA5ランクのリブロースのステーキをしこたま腹に詰め込んでやりてえのに……。


 地下アイドルの後列程度の容姿のゆきとここで野垂れ死んじまうのか……。


 オレが目を閉じようとしたときだった。


「あー、ホンマ情けない子やねぇ。あんた、網代の血引いてるん?」

「あ、姉貴……何でここに……」


 目の前にいたのはオレの異母姉の琴魅ことみ……。


 糸目で京美人を思わす容姿、美貌に任せ数々の男を籠絡、現役大臣ですら彼女に顎で使われるほどの魔性の女だ。


「あんたがピーピー騒がはるさかい、うちが尻拭いさせられとるんや。そないなことも分からんとは……ホンマ、ダメな弟持つと苦労するわ」

「どうもはじめまして、更科ゆきって言います」


 ゆきは立ち上がるとふらつきながら姉貴に挨拶をした。


「ほーん、この子があんたの新しいオナホかいな?」

「何言ってんだ! ちげえよ!」

「ほな、セフレ?」

「……」


「あんた、付き合う女はちゃんと選んだ方がええで。その子、見るからにさげまんやん。あんたのお仲間やった哪吒くん、見てみ。その子と別れて昇り調子やから」


 何を言ってるのか分からなかったが、姉貴の後ろにいたサングラスを掛けた黒服の男たちが前に出る。


 姉貴が籠絡した従者スレイブ……。


 オレたちの目の前に来た従者は跪くと無言でタブレットの画面を向けた。


「なっ!?」


 そこには配信のコメントが流れており……。


―――――――――――――――――――――――


○三下 15秒前

うっほ、哪吒裏山!


○山田こうじ 30秒前

カイザーのハーレム奪われとるやん草


○ドリラー 30秒前

マジ美少女ばっか!


○トイレの帝王 30秒前

哪吒ってカイザーにハメられたん?


○ずっぽし 1分前

さあ? 知らんけど


○エクレア 1分前

前よりおんにゃのこがイキイキしてるなー


○ズルムケア 1分前

>エクレア わかる


○インジャスレイヤー 2分前 


○森野シノブはいいぞおじさん 3分前

森野シノブはいいぞ!


○グラスワンダー 3分前

>森野シノブはいいぞおじさん 大草原


―――――――――――――――――――――――


 見せられた配信の光景。


 哪吒がアリシアたちの窮地を救い、あいつらからの好感度を上げてやがった。それだけじゃねえ、いつの間にか義手まで装着して、以前にも増した動きを見せてやがった。


 いやオレのパーティーにいたときは意図的に手を抜いてやがったんだ……。なんて卑怯な奴なんだ。


 姉貴は動画を見ながら、頬に手を当てている。


「あらまあ、ホンマ使えん反社やわ。高い金積んだのに誰一人拉致られへんとか。まあええどす、期待なんてしてなかったからね」


 動画にはオレが欲しがった人材、森野シノブがいた。哪吒と親しげに話してるのをアリシアたちが嫉妬して……。反社どもをいとも簡単に処理できたのはあいつの隠蔽スキルのなせるわざだろう。


 あろうことか、カイザーと称されるオレが毎日直々に森野にスカウトのラブコールを送ってやったにも拘らず、あいつの対応はオレを舐め腐ったものだった。


《そんなショボい学校で燻ってねえで、オレのパーティーに入らねえ? 迷宮探索校に特別転入の許可取ってやっから》


《オレのこと知ってるよな? 七帝校でも名が通った網代颯真だ。おまえだけ特別にオレのレアショット収めたフォトをプレゼントしてやんよ》


《シノブって処女ぽいよなぁ。安心しろ、オレのパーティーに入りさえすりゃ、オレがおまえに手取り足取りセッ○スのことを教えてやるよ。オレと寝たら飛ぶぞ》


《何無視してんだ? 怒ってねえから返信して来いって。ああ分かった、オレみてえなイケメンに声掛けられて恥ずかしいんだな。仕方ねえなぁ、ま、オレは寛大だ。おまえからの返信待ってるぜ》


 既読無視され続けて、最後にシノブから返信があった。


《キモいのでメッセージは送って来ないで!》


 って、ふざけた返信を寄越したあと、このオレをブロックしやがったんだよ!!!


 ありえねえだろ!


 オレがシノブのことを思い出し憤慨していると動画のコメントがオレを馬鹿にしたものが増えてきやがった。


―――――――――――――――――――――――


○メスガキたまらん 30秒前

カイザーって自意識過剰過ぎ


○ケセランパセラン 45秒前

イケメンゆうても広告のチラシレベル


○エロフ動画観てね 45秒前

>ケセランパセラン それな!


○メリーさん 45秒前

>ケセランパセラン wwww


○月村りゅうせい 45秒前

>ケセランパセラン 吹いた


○クロノ 45秒前

>ケセランパセラン チラシカイザー


―――――――――――――――――――――――


「ふふ! みんな、上手いこと言わはるわぁ」


 姉貴は扇子を口に当てて、オレを馬鹿にしたコメントを笑っていた。


「ふざけんじゃねえぞ、こらぁ!」


 オレは姉貴の従者が持っていたタブレットひったくる。


「面白いとこやったのに。事実陳列罪で訴えるつもりなん? 無様な格好晒したあんたが悪いんとちゃうの?」

「くそっ!」


 従者に押し付けるようにタブレットを返すと……。


「あ、そうそう。忘れんうちにこれ渡しておくわ」


 姉貴が目配せすると従者はホストよろしく片膝つきながらオレに紙切れを渡してきやがる。


「ああ?」


―――――――――――――――――――――――

請求書


BBB代表      (株)ラビリンスレスキュー

網代颯真 様      東都渋川区鳳2丁目19-2

            網代ビル8F

       

下記の通りご請求申し上げます。

合計金額 ¥100,000,000-

――――――――――――

内容       金額

ダンジョン捜索費 ¥50,000,000

ダンジョン救出費 ¥50,000,000

―――――――――――――――――――――――


「あっ……あっ……ああああああーーーっ!!!」


 法外な金額に悲鳴を上げてしまったオレはすぐさま従者の胸ぐらを掴むが、向こうはまったく動じた気配がない。


 ロボットか? こいつらは!


「ふざけんな! 1億とかどんだけぼったくってんだ!!!」

「ん? そんな鬼婆みたいに言わんといて欲しいわぁ。なんならローンでええんよ。うちって身内に甘いからぁ。そやね?」


「琴魅さまは天使です」

「琴魅さまマジ女神さまに他なりません!」

「琴魅さまの慈愛は小笠原海溝より深いです」

「この命、琴魅さまのために捧げても良いほど、寛大です」


「あーん、うれしいこと言うてくれはるわ。ご褒美にあとでうちからビンタしてあげるけど、うれションしたらあきまへんで」

「「「「「はっ!!!」」」」」


 姉貴に洗脳された従者どもがうぜえ!!!


「んなことじゃねえ! 金額だ、金額!」


 オレは左手で請求書を掴んで、右手で叩きながら言ってやった。


「あのなぁ、これはあんたに対するお仕置きや。網代家の名誉を毀損した罪は重いんやで。それともそこのオナホちゃんとここで心中か野垂れ死にするって言うんなら、うちは止めへんけどな」


「くそったれがぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」

「吠えても鐚一文びたいちもん負けへんで」


―――――――――あとがき――――――――――

ネキって、何で暴君なんでしょうね?

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