第4話

 ソフィア・ラティーナは、侯爵家の別邸を出て、再び王宮へと向かう馬車に揺られていた。

冷徹な公爵、レオン・グランヴィルの提案から数日後、彼女はついに一つの決意を固めた――王宮へ戻り、これまでの全てに自ら決着をつけることを。


「お嬢様、本当に大丈夫ですか?」

侍女のルーシーが心配そうに隣に座るソフィアを見つめる。


「大丈夫よ、ルーシー。王宮で私が何を言われようと、もう動じはしないわ」

ソフィアの声には静かな強さが宿っていた。


彼女は王宮に呼び戻されたのではない。彼女自身が望んでその場へ赴くのだ。過去に罪人として追放された場所に、今度は真実を持って堂々と立つために。



---


王宮の大広間――。


高くそびえる柱、威厳に満ちた玉座、そして重臣たちが集まる中、ソフィアは静かに広間の中央へと歩みを進めた。その姿は一切の迷いもなく、凛とした気高さを漂わせている。


「侯爵令嬢ソフィア・ラティーナ、参上いたしました」


堂々とした声が広間に響く。その瞬間、重臣たちの間に動揺の色が走った。彼女が追放された時の記憶を持つ者も多い。そしてその中には、未だ彼女に疑念を抱き、面白く思わない者たちもいる。


「よくぞ現れたな」

重々しい声が響き渡る。玉座に座る王が、鋭い眼光でソフィアを見下ろしていた。


「お前の潔白は、グランヴィル公爵の調査によって証明された。だが、それだけでは済まぬ。王宮に背いた過去を払拭するだけの覚悟が、お前にはあるのか?」


「王よ」

ソフィアは膝をつき、深々と頭を下げた。


「私はあの時、不名誉な形で王宮を去りました。しかし、その後の真実はすでに明らかになり、私の無実も証明されました。ここに立つのは、過去の汚名を返上し、もう一度自らの誇りを取り戻すためです」


静かながら力強い言葉に、重臣たちの間からどよめきが上がる。その中には、彼女を追い落とそうとした者たちの顔も見える。


「ほう……随分と肝が据わっているではないか」

王の口元がわずかに緩む。


その瞬間、重臣の一人が前に出て、冷ややかな声で言った。


「だが、ソフィア嬢。いくら潔白を証明したとはいえ、第二王子エリオット殿下の失脚に関わったことは事実。我々は貴族としての忠誠と信頼に疑念を抱かざるを得ませんな」


その言葉には明らかな悪意が滲んでいた。ソフィアは眉一つ動かさず、その男を見据える。


「確かに、第二王子の不正を暴いたことで、私は貴族社会の一部を敵に回したかもしれません。しかし――それを恐れて見て見ぬふりをすることこそ、貴族の名誉を汚す行為ではありませんか?」


その反論に、重臣たちの間から再びどよめきが起こる。重臣の顔には焦りが滲んだ。


「ぐっ……!」


そこに、レオン・グランヴィルが静かに口を開いた。


「王よ。侯爵令嬢ソフィアの潔白は、もはや疑いようもない。それでも彼女を貶める者がいるのなら、それは真実を恐れる者たちの戯言に過ぎぬ」


レオンの冷徹な声が広間を支配する。彼の存在そのものが重臣たちに威圧を与え、誰一人として反論する者はいなくなった。


王は玉座から立ち上がり、ソフィアを見つめる。


「侯爵令嬢ソフィア・ラティーナよ。お前の強さ、そしてその気高さを、私は認めよう」


その言葉に、ソフィアの胸に熱いものが込み上げた。彼女はゆっくりと頭を下げ、静かに言葉を紡ぐ。


「恐れ入ります、王よ。これからは誰のためでもなく、自らの意志で、この国に貢献させていただきます」



---


王宮の外――夕暮れの庭園。


ソフィアは深呼吸をしながら、澄んだ空気を胸に吸い込んでいた。長い闘いを経て、彼女はついに過去の汚名を返上し、堂々と王宮に戻ることを果たした。


「やるじゃないか」


静かな声が背後から聞こえる。振り返ると、そこにはレオン・グランヴィルが立っていた。


「レオン様……」


「王宮に戻り、そして自らの意志を示した。見事だ」


彼は淡々とした口調だったが、その瞳にはわずかに温かみのある光が宿っていた。


「あなたのおかげですわ。私がここまで来られたのは」

「違う。お前が自分の力で掴んだものだ」


レオンはそう言い切ると、彼女に近づき、手のひらに一つの小さな紙片を置いた。それは契約書のようなものだった。


「これは……?」

「お前が今後、自らの道を歩むための第一歩だ」


ソフィアは目を見開き、その契約書を見つめた。それは、新たな商業権や領地経営の自由を保障するものであり、彼女が一人の貴族として自立するための確かな支えでもあった。


「私に……?」

「貴様の強さを示せ。貴族の名誉やしがらみに縛られず、自分の力で未来を切り拓いてみせろ」


レオンの言葉に、ソフィアの目がじんわりと熱くなった。これまで誰もが彼女を家のため、政略結婚の道具として見ていたのに、彼だけは彼女の「意志」そのものを尊重してくれた。


「ありがとう、レオン様」

ソフィアは微笑み、力強く契約書を握りしめた。


――自分の力で未来を掴む。もう誰にも支配されない。


夕陽が庭園を黄金に染める中、ソフィアの新たな物語が静かに幕を開けようとしていた。




王宮への帰還を果たし、名誉を取り戻したソフィア・ラティーナ。しかし、次に向き合わねばならない相手は、彼女を罪人として切り捨てた侯爵家の家族たちだった。王宮での一件が広まったことで、侯爵家も彼女の無実を認めざるを得なくなっていたが、それでも残るしがらみと緊張感は簡単に拭えなかった。



---


その日、ソフィアは馬車に揺られながら、侯爵家本邸の門をくぐった。見慣れたはずの豪奢な邸宅――だが今の彼女には、かつての居場所がどこか遠く感じられる。


「お嬢様、どうかお気を確かに」

ルーシーが心配そうに言葉をかけるが、ソフィアは落ち着いた表情のまま微笑んだ。


「大丈夫よ、ルーシー。これは私自身が決めたことだから」


邸宅の扉が静かに開き、執事と使用人たちが彼女を迎える。その表情には困惑とわずかな罪悪感が滲んでいた。


「お嬢様、侯爵様がお待ちです」


「分かりました」


ソフィアは堂々とした足取りで広間へと向かった。重い扉を押し開けると、そこには父である侯爵、母、そして兄たちが彼女を待ち構えていた。侯爵は厳しい表情で椅子に座り、母は冷ややかな目を向け、兄たちは何とも言えぬ表情で彼女を見つめている。


「……久しぶりね」

ソフィアは静かに口を開く。その声には皮肉も怒りもなく、ただ淡々とした強さがあった。


「貴様が戻ってくるとはな」

侯爵が重々しく言葉を吐き出す。彼の声には、わずかな苛立ちと、何より敗北感が滲んでいた。


「私の名誉は王宮によって証明されました。もう、私が罪人でないことはご存じでしょう?」


「……それは確かだ。しかし、お前が侯爵家にもたらした騒動は、そう簡単に許されるものではない」


侯爵の言葉に、ソフィアは微笑みを崩さない。


「許されない?それはどういう意味ですか、お父様」


「お前が無実だろうと、この一件によって侯爵家の名は大きく揺らいだ。私たちがどれほど恥をかいたか、分かっているのか!」


侯爵の声が一段と強まる。だがソフィアは動じなかった。むしろ、彼の言葉に深い失望を覚える。


「……恥をかいたのは私ですわ。侯爵家が私を罪人として見捨てた時、私は一人で全ての非難を受け止めました。それを忘れてはいませんか?」


鋭く返した彼女の言葉に、侯爵は一瞬言葉を詰まらせた。母が冷ややかに口を挟む。


「けれど、あなたがその場を荒立てなければ、ここまで事が大きくなることはなかったのでは?」


「荒立てたのは私ではなく、第二王子と、それに乗じた貴族たちですわ」

ソフィアは冷静に母を見つめ返した。


「それに――あなたたちが私を最初に見捨てたのです。家の名誉のために、娘を駒として扱い、真実を見ようとしなかった。その責任をどうして私に押し付けるのですか?」


母は何も言えず目を逸らし、兄たちも黙り込んだ。



---


「もういい」

侯爵が低く呟き、ソフィアを見つめる。その目には、彼女が以前の「従順な娘」ではなくなったことへの困惑と、かすかな恐れが滲んでいた。


「お前はもう侯爵家に戻る必要はない。お前の潔白は証明されたが、それでもお前をここに置くことはできん」


ソフィアは静かに頷いた。彼が何を言おうと、それは彼女が望んだ未来ではない。


「……分かりましたわ、お父様。それで構いません」


彼女の落ち着いた返答に、侯爵は驚いたように眉を動かす。


「私は侯爵家に頼らず、自分の力で生きていきます。そして――私の力を示すことで、あなたたちの見る目が間違っていたと証明してみせます」


「貴様……!」


侯爵の怒声が広間に響くが、ソフィアは揺るがない。彼女の凛とした姿は、もはや侯爵家の従順な令嬢ではなかった。



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その後、ソフィアは別邸に戻る馬車の中で、静かに外を見つめていた。ルーシーが心配そうに尋ねる。


「お嬢様……本当に良かったのですか?」


「ええ。私にとって、侯爵家はもう過去のものよ」

ソフィアは微笑む。その表情には悲しみはなく、むしろ解放されたような清々しさが漂っていた。


「彼らは私を見捨てたけれど、私はもう誰にも縛られないわ。私の力で、私の未来を掴む。それが、私の決断よ」


彼女の目には、確かな強さと覚悟が宿っていた。侯爵家を離れることは痛みを伴う決断だったが、それは彼女自身の新たな始まりでもある。


――私はもう道具ではない。私の人生は、私のもの。


夕焼けに染まる空の下、ソフィアの心には確かな未来への道が開かれていた。そしてその先に、彼女の力を示す新たな舞台が待っているのだ。




侯爵家との決別を果たしたソフィア・ラティーナは、これまでのしがらみから解き放たれ、自らの道を進むことを決意していた。彼女にはもう、過去に縛られたり、誰かの手の中で踊るつもりはなかった。


その足が向かったのは、かつて彼女が立つことを許されなかった公爵領――レオン・グランヴィル公爵が統べる領地だった。



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馬車に揺られながら、ソフィアは窓から外を眺める。侯爵家の敷地を離れてからの数日間、彼女は王宮や貴族社会から一時的に距離を置いていた。そんな彼女に、レオンが自分の領地へと招待の書状を送ってきたのだ。


「侯爵家を離れた私に、何の用かしら……」


彼女は小さく呟きながらも、その胸の中には小さな期待と不安が入り混じっていた。レオンは彼女に指輪と自由を与え、決して彼女の人生に口出しはしなかった。だからこそ、今回の招待が何を意味するのか――彼女は慎重に考えていた。



---


グランヴィル領・公爵城――。


ソフィアが馬車を降りると、そこには堂々たる石造りの城が広がっていた。王都の宮殿とは違い、無駄な装飾のない厳かな佇まい。その威厳に圧倒されつつも、ソフィアは背筋を伸ばして城門をくぐった。


「お待ちしておりました、ソフィア嬢」

執事と思しき老人が深々と頭を下げ、彼女を中へと案内する。廊下を進みながら、ソフィアはふと尋ねた。


「公爵様は何を私にお求めなのかしら?」

「それは……公爵様自らお話されるでしょう」


静かに進む先の扉が開かれ、広々とした応接間が姿を現す。その中心には、黒い外套を纏ったレオン・グランヴィルが待っていた。金色の瞳がソフィアを一瞥し、彼は軽く顎を引いて彼女を迎える。


「よく来たな」

「……ご招待ありがとうございますわ、公爵様。突然のお誘いには驚きましたけれど」


ソフィアは優雅に礼をし、レオンの正面に座った。その目は冷静で、彼の真意を見極めようとする強い意志が宿っている。


「少し前に言っただろう。お前はお前の力を示せ、と」

レオンは机の上に一枚の書類を置く。それは公爵領の新たな商業計画について書かれたものだった。


「これは……?」


「俺の領地をさらに発展させるための計画だ。だが、この計画を進めるには、領内外の貴族たちとの連携が不可欠だ。そこで――お前にその一端を任せる」


「私に?」

ソフィアは目を見開いた。


「侯爵家を離れた今、お前は誰にも縛られていない。だからこそ、お前の力をここで証明してみせろ」


レオンの言葉は淡々としているが、その意味は重い。彼は彼女に「試練」と「舞台」を与えたのだ。それはソフィアが自身の価値を示す機会でもあり、貴族社会における新たな立場を築くための挑戦でもあった。


「……私を信頼してくださるのですか?」

ソフィアの問いに、レオンは金色の瞳で真っ直ぐに彼女を見つめる。


「信頼ではない。お前ならやれると判断しただけだ」


その言葉に、ソフィアの胸が静かに震えた。彼は甘やかすことなく、しかし彼女の可能性を誰よりも見抜き、こうして道を示してくれている。


「分かりました。公爵様のご期待に応えてみせますわ」


ソフィアは力強く答えた。彼女の中にはもう迷いはない。侯爵家を離れたことで得た自由を、今度は自らの手で掴み取る――その強い決意が表情に滲んでいる。



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それから数週間、ソフィアはグランヴィル領で新たな生活を始めた。商業計画の視察や会合の取りまとめ、貴族たちとの交渉――慣れない仕事に苦戦することもあったが、彼女は決して逃げ出さなかった。


「侯爵令嬢、いや……今や商人顔負けの手腕だな」

視察先の商人たちも彼女の行動力と聡明さに舌を巻く。かつて貴族社会の中で“駒”として扱われてきた彼女が、自分の意志で道を切り拓いていく姿に、多くの人が感嘆と興味を寄せ始めていた。



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ある夕暮れ、城の庭園。


「どうやら順調なようだな」

レオンが背後から声をかけると、ソフィアは振り返り、微笑んだ。


「公爵様の期待を裏切るわけにはいきませんもの」


「……そうか」


レオンは短く返事をしながら、彼女の成長した姿を目に焼き付ける。ソフィアはもう、誰かに守られるだけの令嬢ではない。自ら行動し、自分の力で未来を切り拓く、一人の気高い女性になりつつあった。


「これからも私は、私自身のために進み続けます」

「その意志があれば、どこまでも行けるだろう」


レオンの言葉に、ソフィアは微笑みながら静かに頷く。夕陽が二人を照らし、彼女のシルエットは一層強く、しなやかに輝いていた。


――これは新たな舞台の始まり。誰にも縛られず、私の道を歩む。


ソフィア・ラティーナの物語は、ついに本当の意味での自由と輝きを手にし始めたのだった。


 グランヴィル領での新たな生活は、ソフィア・ラティーナにとって刺激的でありながら、困難な日々の連続だった。王宮や侯爵家でただ「駒」として生きてきた彼女にとって、自分の判断で物事を進めるのは、初めての経験だったからだ。


「お嬢様、明日の交渉の書類がこちらです」

侍女のルーシーが新たな報告書を手渡す。ソフィアは紅茶を飲みながら書類に目を通し、ふと目を細めた。


「この案は……あちら側の条件が少し強すぎるわね」

「その通りですわ。しかし、彼らはかなり強気に出てきているようです」


ソフィアは冷静に書類を閉じ、考え込む。この数週間で、グランヴィル領の商業発展を支えるため、複数の商会や領主たちと交渉を重ねてきた。最初は彼女を軽んじ、甘く見ていた者たちも、今ではその毅然とした態度と聡明な判断力に一目置くようになっていた。


――私ならやれる。私の力で。


彼女の中には、かつてなかったほどの自信が芽生えつつあった。



---


翌日――商会との交渉の場。


豪奢な会議室に、領内外から集まった商会の代表たちが座している。中心にはソフィアが立ち、その隣にはレオン・グランヴィル公爵が控えていた。


「さて、本日の議題ですが――」

ソフィアの澄んだ声が部屋に響く。彼女はゆっくりと周囲を見渡し、次いで机に並べられた契約書に目を落とす。


「皆様には、グランヴィル領の新たな商業計画への協力をお願いしております。しかし、この条件――一部、過剰な利益を求めすぎではありませんか?」


彼女の指摘に、商会の一人が微かな笑みを浮かべて口を開いた。


「これは我々の立場として当然の要求だと思いますが、いかがでしょう? ラティーナ嬢はそれを受け入れるのが筋では?」


挑発的なその態度にも、ソフィアは動じない。彼女は書類を軽く指で弾き、冷静に言い放った。


「残念ですが、この条件は受け入れられませんわ。領地全体の発展のための計画です。特定の商会が利益を独占しては、他の者たちとの信頼関係に傷がつきます」


「ですが――」


反論を試みようとする商会の代表たちを、ソフィアは真っ直ぐに見つめ、その気品ある声を重ねた。


「公平であることが、長期的な利益を生み出す秘訣です。それを理解していただけないのであれば、この契約はお見送りするしかありませんわ」


その一言に、室内は静まり返った。彼女の毅然とした態度と、論理的な反論に、反論の余地を残す者はいなかった。


「……分かりました。では、条件を見直す方向で検討いたしましょう」


代表たちが折れると、ソフィアは微笑んで頷いた。


「賢明なご判断ですわ。それが双方にとっての最善ですもの」


彼女の言葉に、会議室にいた者たちは完全に彼女の力量を認めざるを得なかった。彼女がただの侯爵令嬢ではなく、一人の指導者としての才覚を持つことを――。



---


会議終了後――グランヴィル城の庭園。


夕暮れの光が庭を柔らかく照らし、ソフィアはほっと息をつきながらベンチに腰を下ろした。疲労はあったが、それ以上に充実感が彼女を包んでいた。


「随分とやるようになったな」

突然の声に振り返ると、レオン・グランヴィルが立っていた。いつものように冷徹な表情だが、その瞳には小さな賞賛の色が浮かんでいる。


「公爵様……」

「商会との交渉、見事だった。あれで奴らもお前を侮ることはないだろう」


ソフィアは微笑みながら答えた。


「彼らに認めてもらわなければ、私自身の価値を証明することはできませんから」


レオンは彼女の隣に座り、夕陽に照らされる庭を見つめた。


「お前は変わったな、ソフィア」

「変わった……かしら?」

「以前のお前なら、誰かに従い、ただ流されていた。それが今は違う。お前はお前自身の力でここにいる」


その言葉に、ソフィアは静かに目を閉じた。かつて罪人として追放され、すべてを失ったと思ったあの日。しかし、その経験が彼女を鍛え、今の彼女を形作ったのだ。


「すべては、私を陥れた者たちのおかげかもしれませんね」

「皮肉なものだな」


レオンが小さく笑う。彼の隣でソフィアもまた、心からの笑みを浮かべた。


「でも、今なら分かります。私の人生は私自身のもの。誰にも奪わせません」


ソフィアの目には未来への強い決意が宿っていた。その姿に、レオンは小さく頷き、立ち上がる。


「お前ならどこまでも行けるだろう。だが、忘れるな――一人で背負う必要はない」


その言葉に、ソフィアは少し驚き、彼を見つめた。レオンはそのまま彼女を見下ろし、淡々と続ける。


「俺はお前の可能性に賭けた。もし必要なら、いつでも力を貸そう」


「……ありがとうございます、公爵様」


夕陽がレオンの姿を照らし、その背中が遠くへと歩き去っていくのを、ソフィアはじっと見送った。彼は常に冷徹な男だが、その中には確かな優しさと信頼があった。



---


ソフィアは立ち上がり、静かに呟いた。


「私の物語は、ここからが本番――誰にも負けない。私自身の力で未来を掴んでみせるわ」


新たな決意と共に、ソフィア・ラティーナは再び歩み始めた。その道の先には、輝かしい未来が待っているに違いなかった。


――彼女のざまぁは、ここで終わらない。


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