【ガチャ】で記憶を失った俺、7年後に再会した親友が「お前が憎い」と復讐者になっていた

第八話「古代の扉と虹色の価値」

森の静寂が、再び戻ってきた。

だが、その静けさは、先ほどまでとは全く違う重さを持って、俺たちにのしかかっていた。

地面に転がる、生々しい亡骸。

立ち込める血の匂い。

俺は、生まれて初めて人の命を奪った。

その事実が、ずしりと両肩に重い。

ふと隣を見ると、ケイが、返り血を浴びた自らの剣を、ただ黙って見つめていた。

その表情は、普段の冷静さが嘘のように、固くそして青ざめている。

彼もまた、その手で命を奪ったのだ。

エレインは、倒れた男たちから少し離れた場所で、祈るように胸の前で十字を切っていた。

その瞳は潤み、唇はかすかに震えている。

彼女が奪った命はない。

だが、仲間が犯した罪を、自分のことのように悼んでいた。

「行くぞ」

最初に沈黙を破ったのは、ケイだった。

彼は、無理やり感情を押し殺すように剣を鞘に納め、前だけを見据えている。

「長居は無用だ。まだ仲間がいる可能性もある」

そうだ。

ケイの言う通り、感傷に浸ってる場合じゃない。

俺は自分の頬を強く叩き、無理やり意識を切り替える。

エレインも、涙を拭って、静かに俺たちの後についてきた。

俺たちは、男たちが現れた茂みの奥へと進んだ。

そこには、苔むした石畳の道が、森のさらに奥へと続いている。

明らかに、人の手で作られた道だ。

道をたどって数分。

視界が開けた先に、それはあった。

崖をくり抜いて作られた、巨大な神殿のような建造物。

古代遺跡だ。

だが、俺たちの目を奪ったのは、その大きさではなかった。

遺跡の入り口を塞ぐようにそびえ立つ、一枚岩で作られた、巨大な扉。

高さは10メートル以上あるだろうか。

表面には、見たこともない複雑な紋様がびっしりと刻まれており、魔法や物理的な力でこじ開けることが、到底不可能であることが一目で分かった。

「完全に、封印されているな」

ケイが、扉を見上げながら呟く。

「鍵穴らしきものもない。これでは、手も足も出ない」

どうする？

せっかくここまで来たのに、ここで終わりか？

いや、と俺は首を振った。

今の俺には、さっき手に入れたばかりの、莫大なポイントがある。

ガチャポイント：2582 pt

俺は、目の前にガチャのスクリーンを呼び出した。

敵の命を奪って手に入れたこの忌まわしいポイントで、俺は新しい仲間を目覚めさせる。

その矛盾に吐き気を催しながらも、俺は、スクリーンを睨みつけた。

俺は、震える指で、「10回召喚」のボタンに触れた。

（これは、十数人の命の対価だ）

吐き気が、また込み上げてくる。

だが、 （ルナを救うためだ） 俺は、歯を食いしばり、ボタンを押し込んだ。

閃光

10枚のカードが画面上を回転し、やがて一枚のカードが、まばゆい金色の輝きを放った。

「頼む、こいつを、ルナを動かす何かを」

カードが全て裏返る。

確定枠から現れたのは、（SR【風禍ノ剣】）

刀身に嵐のような紋様が刻まれた、見事な片手剣だ。

確かに大当たりだ。

今使っている安物よりずっといい。

だが、この扉を開け、ルナを目覚めさせるためのものではない。

「悪くはねえが、これじゃねえ！」

俺は、残ったポイントを見つめた。

まだ、いける。

「もう一回だ！」

俺は、迷わず二度目の「10回召喚」ボタンを押した。

再び、閃光

カードが、裏返っていく。

一枚、また一枚と、NやRの光が流れていく。

もうダメか、と誰もが思った、その時だった。

最後の十枚目のカードが、再び、ひときわ強い金色の輝きを放った。

「頼む。出てくれ」

スクリーンから溢れ出した光が、洞窟全体を照らし出す。

やがて、光の中心に、そのアイテムの名が浮かび上がった。

（SR【古代の動力炉（エンシェント・コア）】）

俺たちの目の前に、そっと具現化されたのは、手のひらサイズの、暖かな光を放つ金属の球体だった。

表面には、あの巨大な扉に刻まれていたものと同じ、複雑な紋様が描かれている。

間違いない。

これが、答えだ。

俺は、そっと動力炉を手に取った。

確信があった。

これは、こいつのためのものだ。

俺は背負っていた背嚢から、眠ったままのルナを慎重に取り出し、近くにあった石の台座の上に、そっと横たえる。

そして、祈るような気持ちで、動力炉を彼女の小さな胸に近づけた。

その瞬間、動力炉は淡い光の粒子となって、まるで吸い込まれるように、ルナの体の中へと消えていった。

「入った？」

俺が呟いた、その時だった。

ルナの銀髪が、ふわりと宙に浮いた。

彼女の全身から、金色の光が溢れ出し、閉じていたはずの金色の瞳が、カッと見開かれる。

その瞳には、今までなかった、確かな光が宿っていた。

（使用ポイント：2000 pt → 残りポイント：582 pt）

【今回の20連ガチャ結果】

SR【風禍ノ剣】

SR【古代の動力炉（エンシェント・コア）】

R【防御の指輪】

R【ポーション（中）】×２

R【スキル：暗視】

R【小ぶりのナイフ】

N【きれいな小石】

N【丈夫なロープ】

N【干し肉】×３

N【鉄くず】×２

N【空き瓶】

N【よく滑る石鹸】

N【割れた皿】

N【きれいな水（１リットル）】

N【火打石】

N【カビの生えたパン】

「この力で、ルナを救えた。でも、この力は、人の命を奪って手に入れたものだ・・・」