第17話 作戦会議の確認


「さて、それじゃあ始めようか」


 作戦会議。

 校門前に集合した私たちは、剣崎君司会のもと話し合いを始める。


「まず、今回集まってもらった理由だが、他でもない。作戦確認をするためだ」


 今日まで作戦概要は各々に伝えるという形で伝わっている。全員集合して話すのは今日が初めてだ。


「とはいっても、大した話はしないんだが。一応簡単な確認は必要だからな。それが終わり次第攻略を始めようと思う。何か質問があれば随時してくれ。答えられるものは全部答える」


 そう言って剣崎君は作戦の確認を行う。


「最初は俺たち護衛班の役割からだ。俺たち護衛班の仕事はクエストをクリアする回答班を教室へ送り届けること。そしてクリア後学校を脱出するまで守り抜くことだ。それ以外の役割は特にない。とにかく守る!! その一辺倒でいい。それさえできりゃあとは回答班がどうにかしてくれる。とはいえーー」


 剣崎君は校門のほうを見る。そこにはグラウンドがあった。

 グラウンドにはここからでも見てわかるほど、うじゃうじゃと魔物が徘徊していた。まるで休憩中の小学生のように、何をするでもなく歩いているのが見える。


「ここからでもわかる通り、相当な数の魔物が歩いている。俺たちはまずダンジョンに入り、やつらを狩るところから始めなきゃいけない。ある程度倒した後は早速回答班の出番だ。合図を出し次第教室へ向かってくれ」


 ここは護衛班の腕の見せ所。回答班も急いで向かう必要があるし、絶対にダメージを食らってはいけない。そこは要注意だ。


「こっちの体力も有限だからな。回答班はできるだけ急いで教室へ向かってほしい。教室に入れば魔物は中に入ってこない。そこからは出された問題をクリアしてすぐに脱出する」


 やることは単純だ。護衛班は魔物を倒しつつ私たちを守る。私たちはクエストをクリア次第すぐに脱出。以上。


「回答班は全員で9人。これはクエストの数とほぼ同数だ。科目は……えーっと……なんだっけ?」


「国語、英語、数学、理科、社会、美術、音楽、技術、体育、保健」


「あーそれだ。この10個な。それぞれの担当はもう決まってると思うから、護衛班はうまく誘導してやってくれ」


 ちなみに、私は先ほど言った通り数学を担当。由利原は国語と理科。静香は英語担当だ。他、社会は他クラスの家入いえいりさんって人が担当して、美術は藤村ふじむらさん、音楽は久遠くおんくん、技術は神崎かんざきくん、体育は裕栄ゆうえいくん、保健は尋菜たずなくんが担当する。みんなお得意の担当科目で勝負するらしい。特に体育の裕栄君は剣崎君と並ぶ強者で今回護衛班としても参加するらしいが、回答班も担当するそうだ。

 初めてそれを聞いた時、素直にすごいと思った。

 やっぱり超人というのはどこの世界も存在するらしい。よくあるよね、同じ学校でもなんでこんな学校にいるの?ってくらい優秀な人。前世でもいたけど、今世でもいるようだ。

 ともあれ、そういうわけで回答班は私含め9人。護衛班もそれぞれ存在する。


「何か質問がある人はいるか? あるなら今のうちにしてくれ、攻略が始まったらそれどころじゃないからな」


 剣崎君はそう言って締めくくる。


「はーい! 一つ質問!」


 手を挙げる人が一名。


「どうぞ、由利原さん」


 由利原である。剣崎君もそれに気づいて僅かにぎょっとしていた。


「私たち回答班それぞれにつく護衛班ってもうみんな決まってるの?」


 素朴な質問だ。たしかに、適材適所決まってたりするんだろうか。


「ああ、決まってる。例えば俺の護衛は保健室だ。理由は近くに音楽室もあるため万が一の際は駆けつけられると判断したから。他のみんなも各々適材適所で振り分けてる」


「じゃあもう一つ質問!」


「どうぞ」


「私の担当科目を保健に変えてもいいでしょうか!」


「いいわけねえだろ! さっさと座れ!」


「なんでぇ!? 私剣崎君に守られたいのにぃ!」


「知るかそんなもん! 下心丸出しじゃねえか!!」


「いいじゃん! それで力が出るんだからさぁ!」


「よくねえよ! だったら最初から保健担当にしろ! もう遅いんだよ!」


「ちっ。けちぃ!」


 不貞腐れたように静かに座る由利原。

 相変わらずのブレなさに私も感心する。流石に冗談で言ってるんだろうけどよくこの状況で言えるものだ。いっそ参考にしたいくらいである。


「他には? 何か質問がある人はいるか?」


 剣崎君の問いに手を挙げる者はいない。まあ、由利原が変なことを聞いたせいで聞きにくいっていうのもあると思うけど。


「よし! じゃあ作戦確認は以上だ。今から俺たちが攻略を開始するから、回答班の人はここで待機しててくれ。

 合図は護衛班の何人かがダンジョンを出てから出す。担当じゃない人はそのまま攻略に集中するように。あと、攻略前に自分の護衛班の顔は確認すること」


 作戦確認はそれで以上。最後にそれを言うと剣崎君は解散を命じた。みんなそれぞれ散らばりつつ護衛班の確認を行っていく。


「はぁ……剣崎きゅん。私を守ってはくれないんだね」


「まだ言ってんのかこいつ……っ!」


 由利原はもう少し緊張感が必要だと思う。いくら好きな人とダンジョンを攻略するって言っても命懸けだからね。

 まあ由利原もそれはわかっていることだし言ったところで意味はないんだろう。


「んじゃ、とにかく行くか! ダンジョン攻略。お前らもついてこい!」


 剣崎君はそう言うとダンジョンの奥へと入っていく。それを皮切りに冒険者たちはみんな落ち着いた様子でゾロゾロと続いていった。


 攻略が始まったらしい。


 その瞬間、叫び声とともに武器同士がぶつかる音が響いていく。悲鳴、鳴き声、歓喜、怯え。それぞれが入り混じった声が混雑した。


「始まったな」


 背後にいる千代が呟く。

 それを聞いて、ダンジョン攻略が遂に始まったのだと、改めて思った。

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