第15話 それぞれの準備期間②
そのころ、技術準備室では。
「あぁ~疲れたぁ~!!」
私ーー宮野ルリが疲労により机に伏していた。疲れている理由はもちろん魔道具製作のためである。あの日、人手を集めることが決まってから、私はずっと由利原に言われた魔道具を作っているのだ。
「流石に全員分となると多いな。あと半分くらいか」
「うーん」
目の前にあるたくさんの紙の束に目を通しながら千代が言う。それに返事にならない返事を返す私。
一応空いてる時間は魔道具製作に心血を注いではいるが、まだ半分を越したくらい。これだけ頑張ってるのにさらに倍疲れなくちゃいけないというのはもはや拷問である。
「もういっそ全部破り捨てたい。こんなの別にいらなくない?」
「そんなことないよ。この紙はみんなの命をつなぐ生命線だ。あるのとないのじゃ安心感が違う」
「そうかねぇ」
製作している魔道具を横目に私は呟く。
たしかに、ないよりはあるほうがマシだ。そんなの聞かれなくてもわかってる。小学生の防犯ブザーだってないよりあるほうがマシなんだから。そういうもんなんだろう。
とはいえ、問題はそれを作るのが私一人ってことだ。私の知り合いに魔道具を作れる人なんていないし、由利原の友人にも私以外魔道具を作れる人はいないと言っていた。
流石に母さんとかほかの仕事仲間に助けを求めるわけにはいかないしな。
なにせ作ってるものが特殊だ。いかにも危ないことをしようとしてるやつが使う魔道具。こんなの母さんたちに言えるわけがない。
ララだって私に危険が及ぶかもしれないと思って母さんには言わなかったわけだし。ララ本人も魔道具を作るにはまったくの経験不足。だからこれは私がやるしかない。
「幸か不幸か、どうやら人手は順調に集まってるらしいよ。今のところ14人だって」
「そうですか。集まればいいですねぇー」
ちょっと投げやりである。
ほんと、幸か不幸かって感じだな。人が増えるのはいいことだけど、その分魔道具を作る私は仕事が増える。
「一体どうやって人集めしてるんだろうな。昨日まで10人くらいしか集まってなかったのに」
「さあね、わからないけど何かいい案があるって言ってたじゃん。多分それじゃない?」
由利原は今日から本格的に人手集めをすると言っていた。その初日で既に4人集まってるってことは、相当良い案なんだろう。
私は体を起こす。
「こっちは仕事増えるから素直に喜べないよ。どっかの誰かさんが全員分とか口走るから」
「悪かったよ。けどそのおかげで安全に攻略できるわけだろ? ならやる価値はあるはずだ」
千代からすれば仕事が増えるわけじゃない。だから口では何とでもいえる。こっちは仕事が増えるのに。
それを言うとイライラしそうなので、黙って魔道具製作に手を付けることにした。
「あぁそれと、今回のダンジョン攻略の回答班、ルリも参加するんだろ?」
「回答班? …あぁ…あれか。うん。するよ、参加」
ダンジョン攻略の回答班、というのは今回の攻略の役割の一つだ。
今回の攻略は主に二つの役割に分けられる。
一つが護衛班。これはクエストをクリアする生徒を目的地まで護衛する係。そもそも目的地まで行けなかったらクエストはクリアできない。よって相当な数がいる。
もう一つが、回答班。これはクエストをクリアする係だ。目的地まで行ってそこで問題を解き、クリアする。目的地までは護衛がついているので問題はないが、その後のクリアに重きを置いている。失敗したら攻略できないから、これは一番重要な役割と言っていい。
そんな二つの班がいる中、私が志願しているのが後者。つまりクエストをクリアするため、回答班として一科目担当することになった。
「たしかルリが志願したのが数学だったっけ? あれ本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。私はもう前の私とは違う。天才になったから」
そう。前世の記憶を持つ私はまさに別人。まあ特段頭がよくなったかと言われれば別だが、しかし大学生として生きた経験がある私にはそれなりの学力がある。以前と比べれば別人と言っても過言ではない。
「その自信が一番怖いんだよ。そもそも数学ってルリが一番嫌いな教科だったじゃん。絶対足引っ張ることになるよ」
「し、失敬な! これでも結構できる方なんだから! 絶対大丈夫!」
「だからその自信どっから出てんだよ」
千代は呆れ気味だ。
でも前世の記憶があるので問題ありませんなんて流石に言えない。言ったところで信じてもらえないだろうし、たとえ信じてもらえたところで混乱を招くだけだ。
私も記憶が戻ったのはちょっと学力が上がってラッキーくらいにしか思ってないし。
「まあなんにしても、やるって決めたならちゃんと最後までやりなよ。魔道具も、勉強も。失敗は許されないからね」
「うん。わかってる」
由利原も静香も千代も。他の集まってくれる人達のためにも失敗は許されない。ダンジョン攻略は一人でやるわけじゃないのだ。みんなが命懸けでやるのだ。
失敗して攻略できませんでした、なんてことになれば頭が上がらなくなる。
特に静香やララ。あの二人に対して、どんな顔をすればいいのか……。
「最悪、ルリの体一つで許してもらうしかないな」
「は、はぁ!? 誰がそんなことッ……!!」
私は純潔だ。絶対にそんなことしないからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます