一般人の俺、何故かクラスメイトの退魔家業に巻き込まれる
daichi
プロローグ
灯りの消えた病室があった。
その病室は四人の患者が入れるように作られた入院部屋であり、窓際左にあるベッドの上には、小学生高学年ほどの年齢と思しき少年がいる。
少年は目を覚ましており、窓のある方へ体を向ける様にベッドに腰かけ、足はベッドの縁から外側に出してぶらぶらとさせていた。
カーテンの開いた窓からは月の光が入り込み、少年とその一帯を照らす。
彼の視界は、窓の外に広がる光景を捉えていた。
それは、幻想的な白の景色であった。
積もった白雪が光を反射し、目に移る景色全体を明るく照らしている。その上で雪が降っていなかったため視界はとても良好であった。5階にある病室からは、白く染まった住宅群の屋根が良く見えた。
だが、少年の視線を奪っていたのはそんな美麗な景色ではない。
彼が見ているのは、白銀の世界を駆ける一つの黒点。
それは人のような形をしていた。
“人影”は駆けていた。地を這う様な姿勢になる程に体を倒し、その体を両手の指先で触れる様に柔らかく支え、くっつきそうなほど胸に引き付けた脚で体を前に押し出す。一歩でおよそ三〜五メートルは跳んでるだろうか。屋根から屋根へ、ほとんど直線に近い放物線を描きながら“人影”は高所を渡っていく。
少年は手足の感覚を、それらを動かすことを忘れていた。“人影”の動きに合わせて、眼球の上を瞳孔がゆっくりと滑る。呼吸で胸が膨らみ、肩が微かに上下する。少年の動きは本当にそれだけだった。
網膜に焼き付ける様に“人影”の動きを彼は見続けていた。瞬きすら忘れて、“人影”が視界から外れるまで、ずっとずっとそれを見続けていた。
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