17.次の助けは?

「大天使ルナちゃんのおかげで、物資不足が解消されたわ! 本当にありがとう!」

「みんなが助かったのなら、それでいいよ!」

「うぅ、ルナちゃんは本当に大天使だぁ……」


 町の物資不足も解消して、お姉さんたちはニコニコ笑顔だった。それを見て、やり遂げた感があり、私はホクホク顔だ。


「今回のルナちゃんの功績を称えて精査した結果、冒険者ランクが一気に上がったわ」

「どれくらい上がったの?」

「EランクからDランクにアップよ! 二段階アップ!」

「わぁ! 二段階もアップしてくれるの!? ありがとう!」


 アイテム無双をしたお陰か、一気に冒険者ランクが二段階もアップした。人を助けて、こんなに良いことがあるなんて、気持ちがいい!


「ふふっ、ルナちゃんの笑顔を見ると、こっちまで嬉しくなっちゃうわ。こんなに小さいのに、本当によく頑張ってくれて……。ぐすっ、お姉さん……感動して涙が」

「大丈夫?」

「ルナちゃんの優しさが胸に沁みるわぁ……」


 ここ最近、受付のお姉さんが良く泣いている。心配になるけれど、それについてはどうしようも出来ない。


「よしよし、お姉さんもいい子」


 少しでも慰めになればと思って、頭を撫でると――。


「大天使ルナちゃんに頭を撫でられた!? こっちの方が沢山撫でないといけないのに! ルナちゃん、よしよしよしよしー!」

「わぁ! そんなに頭を撫でられたら、髪の毛がぐちゃぐちゃになっちゃうよ!」


 お姉さんが嬉しそうな顔で私の頭を高速なでなでしてきた。嬉しいんだけど、髪の毛が……。嬉しいんだけど……。


「えへへ、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう」


 二人で笑顔を見合わせる。それだけで、胸が温かくなって気持ちよくなれた。よし、遊びはお終いだ。


「それで、次は」

「次?」

「何か出来る事ありますか?」

「……えっ?」

「えっ?」


 お互いに言葉が重なる。しばらくの沈黙の後、お姉さんが控えめに口を開く。


「……まだ、何かしてくれるの?」

「うん! 出来るだけの事はしたいの!」

「そ、そんな! あんなに働いた後なのに、まだ働くだなんて! 無理はしていない!?」

「全然平気!」

「そ、そう……。じゃあ、クエストを見に行きましょうか」


 元気よく答えると、お姉さんは言葉を詰まらせながら驚いた。お姉さんに連れられて、クエストボードの前にやってきた。


「素材やアイテムのクエストは全部ルナちゃんがやってくれたから、ないとして。残ったものは町の仕事と外で魔物を討伐するものね」

「どっちが困ってる?」

「困っているのは魔物の方ね。村の近くで増えた魔物が退治出来なくて、畑が荒らされて大変みたい。このままだと収穫に影響が出てしまうし、食料問題に発展するわ」


 今、一番困っているものは魔物の増加らしい。畑が荒らされると作物が育たなくなって、大変な事になる。


「冒険者が少ないのは言ったわよね。その中でも強い冒険者が他所に行ってしまったから、大規模な討伐に人員を避けなくなっているの」

「じゃあ、残っているのは大規模な討伐の依頼?」

「そうね。数人程度じゃ足りないくらいに規模が大きいわ。ここに残ってくれた冒険者たちじゃ手に負えなくて……」


 そう言って、お姉さんは困ったようにため息を吐いた。これは、手助けをするチャンスなのでは?


「じゃあ、そのクエストを私がやるよ」

「ル、ルナちゃんが!? いや、とても難しい依頼よ? それに魔物も沢山いて危険だし。ルナちゃん一人に任せる訳には……」

「私は一人じゃないよ。レイも一緒にいてくれる!」


 戸惑うお姉さんに向けて、小さなレイを抱き上げてアピールをした。


「確かに、その魔物は大きくなって強いけれど……。一人と一体に任せるのは……」

「大丈夫だよ! だって、今まで作ってきたアイテムには強い魔物の素材が必要な物もあったでしょ? それは、私が強い魔物を倒したから、手に入れられたんだよ」

「そういえばそうだったわ……。強い魔物の素材で作ったアイテムもあったわね……」

「だから、私に任せてくれない? ダメ?」


 手を組んで、上目遣いでお願いする。すると、お姉さんは凄く動揺した顔を見せた。


「ぐっ……大天使のルナちゃんの上目遣いが効くっ!」

「お願い、お願い、お願い!」

「うぅ、可愛いルナちゃんのお願い攻撃がっ!」


 お姉さんは胸を掴んで屈んでしまった。そのまま黙ってお姉さんを見ていると――。


「正直、ルナちゃんに頼るのは気が引けるんだけど……お願いしてもいいかしら?」

「うん、私に任せて!」


 凄く申し訳なさそうな顔をして、クエストを受ける事を許してくれた。よし、これでまた困っている人を助けに行ける!


「でも、本当に危険だからね。魔物の数は多いし、強いし。危険だと思ったら、すぐに帰って来るのよ」

「うん!」

「少しでも怪我をしたらすぐにポーションを飲むこと。服が汚れたら、すぐに着替えて。早く寝て、早く起きて……」

「なんか、話がずれていっているよ」


 真剣な顔で話が脱線していくから、思わず突っ込んでしまった。


「あぁ、不安だわ。ルナちゃんの身にもしもの事があったら……! 外に行かせるのも不安だったのに、離れた村に行かせるだなんて……!」

「お姉さん、心配しすぎ!」


 おろおろとするお姉さんは見ていると楽しい。でも、それだけ私の身を案じてくれているって思ったら、嬉しい気持ちになっちゃう。


「手続きをお願いします!」

「わ、分かったわ。じゃあ、こっちに来て」


 急かすようにお姉さんを押すと、観念したように動き出してくれた。よし、新しい仕事、頑張るぞ!

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