呪言という設定が世界の理と倫理に接続しており、読み切りとして筋が通っています。ベルゴア渓谷から最奥までの進軍は、役割分担が整理され、戦闘は記録調の精度で積み上がるタイプ。クライマックスでの一言の決断と、その代償の描写は大仰に煽らず、余韻で落とす設計が効いています。一方で、固有名や用語の初出が多く、序盤の会議パートは好み次第で情報過多に映るかもしれません。戦闘描写は機能重視で、感情の掘り下げは必要最小限。総じて、堅実にまとめたダークファンタジー読み切りで、最後の別れが静かに残る一篇。