この作品は、奈良時代を舞台に、波瀾万丈の人生を得て、どん底に突き落とされることになった男女が、三十余年の時を経て、再び巡り会う奇跡の物語を鮮やかに描き出しています。
夫を亡くし、息子を流刑にされ、愛も若さも美貌も、すべてを失った四十五歳の小古根(ここね)が故郷で再会したのは、かつて兄と慕っていた義理の兄、五十一歳の伊留加(いるか)でした。彼は蝦夷との戦で片腕を失い、妻を亡くし、故郷でひっそりと暮らしていました。
若かりし頃、秘めた想いを抱えながらも、時代の波に翻弄され小古根と離れることを選んだ伊留加。長い歳月を経て、もはや失うものなど何もないと悟った彼らが、再会した瞬間に爆発させる感情のほとばしりが、この物語の核心です。
過去の傷や苦しみを抱えながらも、互いを認め、支え合うことで、もう一度人生を歩み始める。運命が引き合わせた奇跡の再会と、そこから生まれる大人の純愛を、ぜひご堪能ください。