第二章 ともに狩りをし、ともに食事をする
2-1
お
朝食など、体型を気にする
それなのに、どうやってあの
どこの
白シャツにズボン、
「さて、
「おおおお奥様!?」
後ろで
「奥様! 早朝からどちらに行かれるのですか!?」
「狩りだけど? 侍女に伝えておいたでしょう」
「……はい? え、本当に狩りに? お一人で?」
一人で行ったら
執事が、レオン様を呼んでくるからここで待っていてほしい、と必死に
許可を取らねばならなかったのなら、昨日のうちにいただけばよかったですね。わざわざ眠っているのを起こすのは気が引けてしまいますから。段々と朝日が
このままだと朝の狩りは中止でしょうか……とぼんやり空を
「クラウディア! 家出をしようとしていると聞いたが!」
――――はい!?
「なぜ、狩り、を?」
「先日、レオン様が屋敷の奥のことは私に任せると
「……言ったが………………日課? 狩り? すまないが、順序立てて話してくれ」
屋敷の運営を任せていただけることになりましたので、とりあえずお肉の確保が優先度一位ですから、日課を再開すべきと判断したのです。まだまだこの領地の地形を
「…………肉の確保が優先度一位……とりあえず、私も同行する。
レオン様はそう言い残すと、走って屋敷の中に
玄関先でしばらく待っていると、屋敷の裏手から
なぜに空の馬を? と思いましたら、乗るように言われました。
「え?」
「あっ、乗れないのか?」
「いえ。乗れますが」
「…………乗れるのか。まぁそんな気はしたから連れてきたんだが」
狩り場には馬で向かってもよかったようです。
「先日は
「いや、あれは訓練目的だからだ」
レオン様が馬から降りて、白馬の
左足を
「………………ん、乗れるよな……」
右足を鐙に掛けていると、レオン様が
そして、とても美しい所作で芦毛の馬に跨がると、馬の腹を
あまり早く走らせない
「馬上で話せるか」
「はい、
「ん。クラウディア、私は君が何ができて何ができないか、全く知らない。私たちはまだ知り合ったばかりだ」
確かに。
「予期せぬ形ではあったが、君と
「まぁ! ありがとう存じます!」
「……うん。なるほど」
なぜか苦笑いをされてしまいました。お礼を言っただけですのに。
「クラウディア、
「この子との
「………………ん、分かってた。うん。では駈足で向かおう」
「ハイッ」
白馬の腹を
「申し訳ございません、旦那様を立てねばなりませんでしたね」
これは完全なる失態でした。そう思って速度を
そこで、ふとこれまでレオン様に全く
それとも
ともに生活しているのに、まだまだお互いのことを知らないものですね。
「あそこの広場に馬を
「はい」
昇り始めた朝日を背に走ること二十分。レオン様おすすめの狩り場近くに
白馬は
芦毛の馬はなんだかご
「っ!?」
レオン様が振り落とされるのではないかと心配しましたが、彼は慣れた様子で手綱を片方の手でしっかりと握り、もう片方の手で首と胸の
「怒るな怒るな。全く、お前はわがままだなぁ」
レオン様いわく、芦毛の馬ことラースは、とにかく先頭を走りたがるのだとか。どうやら私が少し先を走っていたのが気に食わなかったようです。ちなみに、レオン様以外が乗ろうとすると、
「アレクは誰でも乗せたがるし、穏やかな馬だから大丈夫なんだがな」
私が乗っている白馬はアレクというそうです。降りて鼻筋を
対してラースは
「ん。ほら、草が食えるところに繫いでやるから少し待て」
レオン様がラースに鼻でドシドシと
もう少し馬たちと
レオン様と二人、森の中を足音を立てぬよう歩き始めました。
現在、私たちはうさぎを狩ろうとしています。うさぎは『
そうっと歩きながら草木の
――――よし!
うさぎには声帯がないのに、ギェェェェと
「え?」
「ホーンラビットか。仲間が来るぞ」
レオン様がそう言うと同時に腰から剣を
――――え?
レオン様が「来るぞ」と言って一分もしないうちに、草むらがガサガサと音を立て始め、何かが数
「ホーンラビットは、ああやって仲間を呼ぶ。仕留めるときは
「……初めて見ました」
「ん、王都に
少し下がっていなさいと言われたので、
レオン様が上半身を少しだけ低くした次の
「ん。二
なぜ、一振りで二羽仕留められているんでしょうか? しかも二羽ともしっかりと喉を
狩り場に来て十五分。
「まだ何か探すか?」
「いえ、狩りすぎても生態系を
レオン様にお
「ホーンラビットは魔獣の中でも少し強い程度でしかなく、
「肉食獣の餌が足りなくなり、人里に下りてくる?」
「ん、正解だ」
レオン様が
でも、まぁ、なんだか心がポカポカするので文句はありませんが。
「では血抜きをしてから、屋敷に戻ろうか」
「はい」
二人で手早く処理をし、馬を繫いでいた広場に戻りました。
もう少し、二人きりでいたかったような、ホーンラビットのお肉を早く食べたいような、そんな複雑な気持ちです。
帰り道は常歩で
しかも、
先日は見かけなかった魔獣。なぜなのかと
「魔獣といえど、根本は同じ習性だ」
「なるほど。だからホーンラビットも早朝の今、出てきていたのですね」
「ああ、そうだ」
レオン様と魔獣についてたっぷりお話ができて私はかなり満足なのですが、レオン様はこのあとも騎士団でお仕事をされるとのこと。朝から体力を使わせてしまいなんだか申し訳ない気分です。
屋敷に戻り、湯を浴びてから朝食を取ることになりました。お昼と夜は、レオン様の
今日の朝食は、厚切りのハムが三枚とカリカリベーコンが五枚ありました。昨日と違うのは、レオン様のお皿にもハムが一枚とベーコンが二枚置いてあったこと。
細かく
あまりお
価値観、
「ん、
「マヨネーズを少しだけパンの断面に
「ふむ。次のはそうする」
レオン様がワクワクとした顔をしています。
「今まで、出されたものを食べるだけだったが、食べ方や味を自分で
ハムとベーコンのダブル挟みはタブーだろうか? など、色んなことを聞かれました。個人的には、アリです! と答えました。二つの食感と、それぞれの
「色々
「ふむ。見習い騎士と同じだな」
「うふふふ。レオン様もお肉大好きメイツの仲間入りですね」
「…………お肉大好き、メイツ……ぶふっ……ふはははは! ゲホッ!」
なぜかむせ込むほどに笑われました。そして、何度も『お肉大好きメイツ』と
騎士団に向かわれるレオン様を見送ったあと、今朝狩ったホーンラビットの調理を指示するため、
レオン様は着々とお肉大好きメイツになっていますね。
この調子で厨房の使用人たちもメイツにしていきましょう。とりあえず料理長から。
「――――ということで、
「……はぁ。えっと、はい。ホーンラビットの角は素材として利用されますので、なるべく傷付けずに根元から魔獣専用のノコギリで切断します」
魔獣専用ノコギリなんてものがあるのですね。
聞けば、ノコギリの
「凄いです、魔獣専用ノコギリ」
角をガシッと握り、ゴリガリと
「ところで、素材って何になるんでしょうか?」
「ホーンラビットですと、
「へぇ。ただ討伐して終わり、じゃないんですね」
そんな話をしつつ、ホーンラビットを捌き、料理長にリエーブル・ア・ラ・ロワイヤルを作るように指示しましたら、引きつった笑顔を返されてしまいました。
リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルは『王家の野うさぎ』とも呼ばれる、ジビエ料理で
それをハーブでしっかりと
レオン様に食べていただきたいので、何が何でも作っていただきます! 料理長がやりたくないと言うのなら、私がやります。そう伝えると、料理長が「作らせていただきます」と言いながら
とにもかくにも、
リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルは煮込みに数日を要するので、今日は食べられないのが悲しいところ。
お昼はホーンラビットから出る
私はというと、魔獣
侍女に案内され中に入ると、ふわりと香るシトラスとシダーウッド。レオン様の
――――お腹が減ったのかしら?
とにかく、今は魔獣図鑑が優先! 執務室の左側の
「普通、魔獣図鑑に捌き方も
「の…………せないかと……」
侍女が言葉を
あら? もしや普通じゃないの? ちょっとあとでレオン様にお伺いしてみましょう。
部屋に戻り、ソファに座って魔獣関係の本を読んでいたのですが、非常に
ついつい読みふけってしまい、レオン様が屋敷に戻られたことにも気付きませんでした。
「そんなに面白いのか?」
「ふあぁ? レオン様!? あっ! 申し訳ございません」
「ん、気にするな。それにしても凄く楽しそうだったが、何かいい情報でもあったのか?」
レオン様がくすりと笑いつつ隣に座り、体をピタリとくっつけて
――――近い、近い近い近い!
ふわりと
執務室の残り香よりも強く感じるものの
あと、また心臓とお腹がギュッとなりました。
そっとお尻半分程度レオン様から
これ、言っていいんですかね? でも、色々とお互いのことを知りたいと今朝話したばかりですし、失礼なことだったとしても、伝えた方がいいのかも?
「その…………」
「ん?」
レオン様は柔らかく微笑まれたし、大丈夫よね?
「その……レオン様の
「ん? ああ」
「凄くいい匂いだとは思うのですが……」
「うん?」
レオン様がキョトンとされていますね。あれ? これ、本当に伝えて大丈夫なのでしょうか? 凄く傷付けたりしませんかね?
「その、
「………………………………天然か!」
レオン様が両手で顔を
「ひょわ!? ごめんなさいぃぃ、
「
目を
覆い
――――これ、どういう
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