第18話 新たな戦いの予感
ゼノス公爵の視線が、俺の背中に刺さるのを感じた。
王都の謁見の間。大理石の床に反響する足音。豪華なシャンデリアの光。この世界に転生してから何度も見てきた光景だが、今日はいつもと違う。
公爵は俺の予想外の対応に警戒を強め、新たな策略を巡らせ始めていた。
(くそ、完全にマークされてるな)
王都の貴族社会の闇は、俺が思っていた以上に深く、複雑な『マップ』だ。まるで、常に『アンチ』を仕掛けてくる『敵チーム』のようだ。
だが、俺はもう、この『ゲーム』から降りるつもりはない。
公爵との対峙を通じて、俺は王都の貴族社会がFPSの『ランクマッチ』のように、常に上位を目指す者たちの戦場であることを再認識した。
そこには、明確な『勝利条件』と『敗北条件』が存在し、一瞬の油断が命取りになる。
だが、俺には、この『ゲーム』を『クリア』するための『チート』がある。それは、前世のFPSで培った、あらゆる『戦術』と『知識』だ。
「貴様、本当にこの王都で、その奇妙な戦い方を続けるつもりか?」
隣で、セリナが心配そうに尋ねてくる。彼女の琥珀色の瞳が、俺をじっと見つめていた。
彼女は俺の『常識外れ』な言動に呆れつつも、俺の戦術と人間性に惹かれ、俺を支えることを決意してくれている。
彼女は俺にとって最高の『バディ』だ。どんな『マップ』でも、どんな『敵』が相手でも、彼女がいれば『勝てる』気がする。
「もちろんだ。王都は、複雑な
俺はセリナの肩をポンと叩いた。彼女は、少し驚いたように俺を見つめ、そして、かすかに微笑んだ。その笑顔は戦場での猛々しい姫騎士のそれとは違い、年頃の少女の可愛らしさを感じさせた。
(やっぱセリナは可愛いな。普段は『タンク』みたいに硬派なのに、こういう表情見せるとギャップがヤバい)
「さあ、次の『ラウンド』だ。王都の貴族たちよ、俺の『FPS戦術』、とくと味わわせてやる」
俺の心の中で、再びリロードの音が響いた。
王都の闇に、新たな『プレイヤー』が参戦する。そして、その『プレイヤー』は、この世界の『常識』を根底から覆す。
国王の命令で、俺が考案した戦術の有効性を試すため、王都防衛シミュレーションが開催されることになった。これは、王都を仮想の敵から守るという大規模な演習だ。
「レナード•アルバート。そなたの戦術、この目で確かめさせてもらおう」
国王陛下の重厚な声が、謁見の間に響く。
「はっ。必ずや、陛下のご期待に応えてみせます」
膝をついて頭を下げる。くそ、この世界の礼儀作法、まだ慣れねえな。そして当然のように、ゼノス公爵もこの演習に参加を表明した。
(来たな、公爵。お前の『裏工作』、全部お見通しだぜ)
俺の失脚を狙っているのが透けて見える。彼には俺みたいな没落貴族の出来損ないが注目を浴びることが許せなく、また突然現れて常識を覆す若造に無意識のうちに恐怖を抱いていた。
大貴族と取り巻く周囲の大派閥、かたや何の政治的権力もない没落貴族......基本的に周りに味方はいない。
(完全に『1vs多』の状況じゃねえか。まあ、FPSで散々『1vs5クラッチ』やってきたし、これくらいなんとかなるだろ)
だが、俺には秘策があった。過去のFPS大会で実際に使われた、勝利を掴むための『有名戦術』を、この異世界で再現してやる。
演習場に向かう途中、リシアが駆け寄ってきた。
「お兄様!頑張ってください!」
俺の妹、リシア。この世界で俺が心から信頼できる家族だ。彼女の金色の髪が朝日に輝いている。
「ああ、任せとけ。お前の兄貴を信じろ」
俺は、リシアの頭を軽く撫でた。彼女は嬉しそうに笑う。
(リシアのためにも、絶対に負けられない)
訓練場の広大なフィールドが、今日の『マップ』だ。
城壁、塔、建物、森。まるで『Counter-Strike』の複雑なマップを現実にしたような地形だ。
シミュレーション開始の合図と共に、俺は騎士団の兵士たちに指示を飛ばした。
「いいか、お前たち!まずは『数的有利』を徹底しろ!常に敵よりも多くの味方を特定の場所に配置し、数的優位を保て!孤立するな!常に味方と『連携』しろ!」
俺の指示は、FPSの基本中の基本だ。
これは、例えば『カウンターストライク』のようなゲームで、AサイトとBサイトのどちらに攻めるか、あるいは守るかという判断の際に、敵の人数を予測し、味方の人数を集中させることで、撃ち合いを有利に進める戦術だ。
「レナード様、それは一体......」
騎士の一人が困惑した表情で尋ねる。
「いいから黙って従え!今から見せてやる!」
俺は訓練用の木剣を掲げ、フィールドの東側に向かって駆け出した。
「第一小隊、第二小隊、俺についてこい!第三小隊は西側の『ポジション』を『キープ』しろ!」
騎士たちは、俺の指示通りに動き、個々の戦闘で優位に立ち、敵役の兵士たちを圧倒していく。
(よし、『3vs1』の状況を作り出せた。これなら勝てる)
実際、敵役の兵士が一人で防衛していたポイントに、俺たちは三人で攻め込む。結果は明白だ。
「な、何という戦い方だ......!」
敵役の兵士が驚愕の声を上げる。
彼らは、俺の戦術が、単なる机上の空論ではないことを、身をもって体験していた。
セリナは、俺の指示の意図を理解し、その有効性に驚いているようだった。彼女の目は、まるで『新しい魔法』を見たかのように輝いている。
「レナード、貴様の戦術は......理にかなっている」
セリナが、珍しく素直に褒めてくれた。
(おっ、セリナに褒められた。これは『レアドロップ』だな)
リシアは、兄の指揮する姿に目を輝かせ、誇らしげに俺を見つめていた。
「レナード殿の戦術は、まことに理にかなっている。個々の武勇に頼るだけでなく、集団としての力を最大限に引き出すものだ」
騎士団長が、感嘆の声を上げる。
ゼノス公爵は、俺の戦術が、従来の戦術とは全く異なることに気づき、焦りを見せ始めた。彼の顔には、苛立ちの色が浮かんでいる。
(公爵、顔に出すぎだぞ。お前の萎えたプレイ、丸見えだ)
次に俺が指示したのは、『ストレイフ』と『ピーク』の応用だ。
これは、敵のエイムをずらし、被弾を最小限に抑えつつ攻撃する高等技術だ。FPSでは、左右に細かく動きながら射撃することで、敵の弾を避けつつ攻撃を当てる『ストレイフ撃ち』や、角から一瞬だけ体を出し入れして敵を撃つ『ピーク』が常識となっている。
「左右に動け!敵の攻撃を避けろ!そして、角から一瞬だけ顔を出して、敵を撃て!」
俺は、騎士たちにデモンストレーションを見せる。
建物の角に身を隠し、一瞬だけ顔を出して敵役の兵士を確認。すぐに引っ込む。そして再び顔を出して攻撃。
「こんな風にだ!」
騎士たちは、最初は戸惑うが、俺の動きを見て、その有効性を理解する。
「左、右、左、右!リズムを掴め!」
彼らは、俺の指示通りに動き、敵役の兵士たちの攻撃を避けながら、正確に反撃を加えていく。まるで、彼らが『プロゲーマー』になったかのように、洗練された動きを見せ始めた。
「すごい......攻撃が当たらない......!」
敵役の兵士たちが困惑している。
「こ、これが新しい戦術なのか......!」
(よし、これで『基礎』は叩き込めたな。次は『応用』だ。公爵、お前の『妨害工作』、全部『カウンター』してやるからな)
俺は、ゼノス公爵の顔を見て、心の中でそう呟いた。
このシミュレーションは、俺にとって、ただの演習ではない。王都の貴族社会という『戦場』で、俺の『戦術』がどこまで通用するかを試す、絶好の機会なのだ。
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