第2話 仇敵の膝下(ひざもと) 時代
これは面白くなってきました!宮沢氷魚さん演じる長慶の、静かな闘志と奥貫薫さん演じる慶春院の知的な導きが、第2話でどのように展開するかを描いていきましょう。
第2話は、父の仇敵である細川晴元に臣従するという、長慶にとって最も屈辱的な、しかし最も重要な転換点となる出来事を中心に描きます。
天文2年(1533年)頃。長慶 12歳。
あらすじ
◆ 命懸けの「理」
父・元長の自害から一年。阿波の芝生城に蟄居(ちっきょ)していた三好長慶(宮沢氷魚)は、ある決断を下す。それは、父の仇敵である管領・細川晴元(高橋一生)に再び仕える、というものだった。
家臣団は激怒し、特に父の代からの古参は「武士の道に悖る(もとる)!」と反対する。しかし、長慶は冷静だった。
「この乱世において、阿波一国に籠もっていては、三好家は滅びる。父上を討ったのは晴元公だが、彼の後ろには強大な一向一揆がある。その一揆を抑え、畿内を安定させられるのは、今や晴元公をおいて他になし。憎しみを捨て、力を持つ者の傘下に入るのが、三好家存続の『理(ことわり)』にございます」
長慶の言葉は、12歳の少年とは思えぬほど理路整然とし、家臣たちは言葉を失う。
◆ 越水城での初陣
やがて、晴元公が頼みとしていた一向一揆が勢いを増し、今度は晴元公自身が窮地に立たされる。その報を聞いた長慶は、母・慶春院(奥貫薫)に「今こそ動く時」と告げ、和睦の仲介役として京へ向かう。
京の郊外、越水城(こしみずじょう)(現在の兵庫県西宮市)は、三好家が畿内進出の拠点としていた重要な城だったが、今は敵対勢力の手に落ちていた。
長慶の最初の仕事は、この越水城を奪還することではなく、晴元と一揆勢との間で、血を流さない和睦を成立させることだった。仇敵を救うことで、三好家を畿内復帰させるという、長慶の緻密な計算だった。
◆ 仇敵との再会
交渉の末、一揆との和睦を成立させた長慶は、細川晴元が身を寄せる城で、ついに父の仇と対面する。
長慶の前に現れた晴元は、華美な装いながらも、どこか怯えを隠せない若き管領だった。晴元は長慶の顔を見るなり、父・元長の面影を重ね、わずかに顔を引き攣らせる。
「…よくぞ、参った。そなたの働き、見事である。元長が子とはいえ、これほどの手際、感服した」
長慶は一礼し、静かに答える。
「理世安民。父上の仇を討つことよりも、乱れた世を治めることが、三好家の務めにございます。主君として、どうか天下の安寧をお考えください」
その真っ直ぐで、冷徹な視線に、晴元は一瞬たじろぐ。晴元の後ろには、元長に代わって晴元の重臣となった三好政長の、憎々しげな顔があった。
長慶は、晴元の家臣として畿内での活動を許される。しかし、彼が戻った場所は、父の血に塗れた仇敵の膝下。長慶の「理」に基づく新たな戦いは、ここから始まるのだった。
そして、その長慶の背後を、長慶が阿波から引き上げてきた一人の男、松永久秀(香川照之)が、不気味な笑みを浮かべて見つめていた。
(終)
次回予告
次回、第3話は**「鬼と梟雄」。長慶の弟、十河一存(加藤清史郎)が初登場し、長慶の右腕となる松永久秀**(香川照之)との緊迫した関係が描かれます。そして、長慶はついに畿内での拠点として越水城を奪取し、勢力拡大に乗り出します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます