こんな大河ドラマがみたい!『三好長慶』

鷹山トシキ

第1話 阿波の雛鷲

大永2年(1522年)、阿波国。

細川管領家の家臣として、畿内最大の勢力を誇る三好元長(堤真一)の嫡男として、**千熊丸(せんくままる)**が生まれる。

​勇猛な父とは異なり、千熊丸は連歌や書を好む内省的な少年(後に三好長慶:宮沢氷魚)。父は、武術よりも静かに思索にふける千熊丸に「武家の棟梁たる器か」と複雑な思いを抱くが、母・慶春院(奥貫薫)は、千熊丸の並外れた知性と穏やかさこそが、乱世に必要な資質だと見抜いていた。

​享禄5年(1532年)。 細川晴元(高橋一生)の讒言を受け入れた裁定により、父・元長は堺で自害に追い込まれる。

​11歳で父を失い、一族は没落。阿波へ逼塞した長慶は、血に塗れた父の鎧を前に、ただただ慟哭する。仇敵・晴元への復讐を誓う長慶に対し、慶春院は静かに諭す。

​「そなたの父は、戦で負けたのではない。人の心と、『理(ことわり)』を違えたゆえに滅んだ。血をもって血を洗う復讐は、新たな憎しみを生むだけ。そなたが成すべきは、天下を乱したこの不条理を正し、民に安寧をもたらすこと」

​慶春院は、武力ではなく知恵と文化で天下を治めた公家の歴史書を長慶に与える。長慶は、母の言葉と古の書物から、復讐の炎を鎮め、**「理世安民(りせいあんみん)」**という新たな志を見出す。

​そして、長慶は晴元への臣従を決め、わずか11歳で三好家当主となる。その表情は、復讐者に特有の焦燥ではなく、すべてを見通したかのような静かな決意に満ちていた。

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