第2話 デッドウイルストルーパー
大量の遺体を見てガスマスクを付け黒いチョッキを身につけたアサルトライフルを所持している謎の兵士は任務を遂行するため警戒しながら病院内を歩いて行く。
彼の任務は速やかに金庫を探し現金を盗むこと。
「マスター、全員の殺害を確認。これより金庫を探し出し、現金を入手します」
『良し、よくやったウイルス。そのまま予定通りことを進めろ。だが安心はするな。バトルロワイヤルはすでに始まっている。もし
〈ブックエスケープ〉とは1日1回使用できる逃げの一手、いかなる状況でもその場から自分のデビルフェイスに自身を転送することできる。
「分かりました。命を大切にしていただけるマスターを誇りに思います。では現金を奪いに行きますので失礼します」
通信を切り、金庫があるであろう理事長室に向かう。
彼のコードネームはウイルス、意味は
能力は殺人ウイルスを自由自在に操ること。
ただし
それでも軍人仕込みの戦闘技術がある。
そう、ウイルスは人間ではない。
マスターに従えるデビルフェイスシリーズ〈デッドウイルストルーパー〉に潜む悪魔なのだ。
とは言え戦闘力は人より少し高いレベルなため対
(警察が来る前に、さらに他の
焦りを感じるウイルスに追い打ちを掛ける出来事が。
なんと病院内から足音が響いてきたのだ。
(まさか、
早足で理事長室に向かっていると、発砲音が聞こえてきた。
(後ろから!?)
振り返ろうとした時にはすでに銃弾が左ふくらはぎに命中しており、血がドボドボと流れ出す。
「仕留め損ないましたか。しかしこれも神様のため。ここで始末させていただきます」
予期していたとは言えこんなにも早く
静かに銃口を向けられ、怯むウイルスだったがこちらには〈ブックエスケープ〉がある。
手を上げ、降参のポーズをとった。
「俺はバトルロワイヤルに興味はない。金がマスターに渡せればそれでいいんだ」
「だから見逃してほしい、と言うわけですか? 残念ですがそれはできません。私達
彼女にとってマスターであるカンバは崇める神様である。
その治療を行った医者や看護師を金のために殺した相手を許せないのだ。
(交渉決裂か。仕方ない)
考えをまとめ、最終手段であるブックエスケープを使用するウイルス。
ブックエスケープとは自分が潜んでいるデビルフェイスシリーズに1日に1回だけどこでもテレポートすることができるまさに最終手段だ。
「逃がしません!」
相手が逃げることに勘づいたサルベーションはとてつもない速度で走り出し、サバイバルナイフを突き刺しにかかる。
「あばよ」
そう言って刃が刺さる直前にこの場から一瞬できえてしまった。
歯を噛み締め、逃したことに悔しさでナイフを強く握る。
怒りで叫ぼうとするが、少女でありながら偽りとは言えシスターである身。
次元の裂け目を開き武器を収納、敵の
「シスター様、なぜ人間如きに手を合わせているんですか?」
サルベーションに話しかけてきたのは信者であり人間の戦士達に殺された死神の幽霊、悪夢の暗示である
ボロボロのフードを着た骸骨で、頭蓋骨にヒビが入っておりルビーの首飾りを付けている。
幽霊であるが言えに足は存在せず、代わりにサルベーションの影に取り憑いている。
「確かに我々モンスターは人間を殺害した報いを受けたのでしょう。しかしシスター様が悲しむ必要はありません」
「私はモンスターのシスターであり1人の人間です。兵士として駆り出された時は救いはありませんでしたし、それにあの戦士達には恨み以上の感情が存在します。ただし他の者にまったくそんな感情はありませんよ」
サルベーションの優しくそれでいて
「まったく。気持ちは分かるが、シスター様だって生き物だ。すべてを受け入れられる訳ではないだろうに」
「仕方ないよ。ナイトメア君は人間嫌いだもん」
話に入ってきたのは同じく信者の幽霊、
虫の騎士、インセクトナイトである女性で、カミキリムシを彷彿させる頭、黒き装甲は実に軽く背中にはカブトムシの様な羽が備わっている。
もう一人は痛みの暗示ことダメージ。
木でできているその体は人形の素体、目も鼻も耳も口もなく代わり体中に赤いバッテンが描いている。
「私は、私はただシスター様を想って………」
「はいはい。それを小さな親切大きなお世話って言うんだよ」
ことわざで返され、グーの音もでないナイトメア。
「ダメージさん、その発言はあまりよろしくないですよ」
サルベーションのお叱りを受け、ダメージは「はい………ごめんなさい」と謝罪するのだった。
一方その頃、ウイルスは軽車を運転中のマスターである男性が持つ〈デビルフェイス〉で待機していた。
『マスター、申し訳ございません。
謝罪する彼に、マスターはため息を吐きながらのど飴を舐め始める。
「謝る必要はない。それよりもお前には死んでもらっちゃ困るんだよ。ウイルス、生存する判断は正しいかった」
「褒めていただきありがとうございます」
「後でハンバーガーを一緒に食べよう。なにが食べたい?」
マスターの質問に「ダブルチーズが食べたいです」と返す。
その時だった。
「分かった。とりあえず人混みに紛れるぞ」
アクセルを深く踏み、スピードを上げる。
どこから狙われているか分からない状況では逃げることしかできない。
するとどこからか銃声が聞こえ、車のタイヤがパンクする。
かなりのスピードのままスピンする車体、エアバックが起動したものの逃走できる状態ではない。
「このまま………俺達………殺されるのか………」
『そんなこと、俺が許しません』
そう言ってウイルスは〈デビルフェイス〉から飛び出し、マスターを守るため単身車から出る。
事故を目の当たりした者達が続々集まってくるなか、どこから撃ってきたのかを確認する。
だがその必要はなくなった。
なぜなら目の前に
鎧に赤き触手が巻かれており、いかにも人間ではないことがうかがえる。
「お前か、俺のマスターを殺そうとした
「そのとおり。俺は武器の暗示、名をウェポン。能力は武器を生成し、完全に使い方を理解すると言う物。俺のマスターの命令でお前達を殺しに来た。ふん、悪く思うなよ。マスターのボーイフレンドがいる病院にいたのが運の尽きだ」
明らかに能力が強力すぎる相手に後退りするウイルスだったが、とにかくマスターの命を優先し立ち向かう。
次元の裂け目からアサルトライフルを取り出すと、狙いをウェポンに定めた。
そこに警察が到着し、シールドを構える。
「お前達は完全に包囲されている! 速やかに武器から手を離しなさい!」
そう言いながらジリジリと彼らに近づいてくる。
「邪魔だ」
人間程度、ウイルスにおいてザコ当然。
殺人ウイルスをばらまき、次々と虐殺していく。
それに対してウェポンは触手を伸ばし、敵
しかし身体能力はピカイチ、サイドステップで攻撃をすべて躱す。
「ホウ、良い運動神経だ。だが判断力は少しばかしたりないようだ」
「どう言う意味だ」
自信あり気にウェポンが語り始め、ウイルスはアサルトライフルの銃口を向けた。
「あの人間達に任せれば自分の手を汚さず、さらにマスターと逃走できたはずだ。それを不意にしたお前は俺によって始末される」
「なるほど、理解した。どうやらなにか勘違いしているらしい。俺の能力は殺人
「そうか、悪いがそれを見る余裕はない」
黒騎士は話を無理やり終わらせ、次元の裂け目から刀身がとてつもなく長い日本刀を取り出す。
そして素早く構えを取り、技を繰り出そうとする。
その時だった。
なんと亡くなったはずの警察達が拳銃を取り出し、こちらに向けてトリガーを弾いたのだ。
銃弾の雨を食らい、膝を突くウェポン。
「一体、どう言うことだ?」
思わぬ奇襲にたまらず血反吐を吐く。
その隙をついたウイルスは自分の〈デビルフェイス〉に戻る。
そこに丁度救急車が駆けつけ、マスターと共に搬送されていく。
「クソ。ここで任務失敗なんて、マスターに怒られちまうなぁ」
なんとか体をお越すも、とき既に遅し。
さらに遺体である警察達に囲まれ、追いかけられない状況。
「仕方ねぇ。逃げ帰らせてもらう」
悔しげに両腕を拳にしつつ、ブックエスケープを使用した。
一方その頃カンバは戻ってきたサルベーションを〈デビルフェイス〉に収納し、病院から脱出していた。
全力疾走したせいか息を切らし、公園のベンチで座り込む。
「なんとか……逃げ切れたみたいだな……」
『神様、油断してはいけませんよ。さっき出くわした
確かに言う通りだと思う。
相手は残り7組、油断は禁物だ。
「そうだな。とにかく人を巻き込まないように………」
その続きを言おうとした時だった。
『
「サルベーション、戦闘をするのは俺の指示があってからだ。頼むよ」
『分かりました』
どこから
いつでも逃げれるように立ち姿で待機する。
すると見かけたことがある女子高生がこちらに近づいて来た。
「カンバくん? どうしてこんな所にいるの?」
「シルヴィア? 君こそなんで?」
「カンバくんのお見舞いに来たんだけど。もしかして病院を脱走して来たの?」
疑いの目を向ける彼女に「違う違う」早口で否定する。
「信じてはくれないかもしれないけど。〈デビルフェイス〉の噂は本物だったんだ。病院の中でみんな殺されて、それでそれで」
動揺で口が回らない。
人が大量死したのは事実、あの状況を表現するのはとても難しい。
思い出す度に恐怖で気づかない内に体が震える。
「カンバくん、
「姿は見てない。けどあんなの人間技じゃない。とにかくここから逃げないと」
焦りから連岩は早口で悲痛な発言していると、シルヴィアが突然右手を強く握ってきた。
「大丈夫、私が守るから。絶対に」
なにやら決意を硬めた様子でこちらを見つめて来る。
連岩はその行動の本当の意味を知らない。
「う、うん。ありがとう」
女子に守られるなんて少し恥ずかしいが、彼女に礼を言う。
そこに金髪の40代男性がゆっくりと歩いて来る。
どうやらシルヴィアの父親のようだ。
「シルヴィア、この子が言ってたカンバ君かな?」
「うん、パパお願い。カンバ君をお家に返してあげて。誰かに狙われてるの」
「それは良いんだけど。彼は入院中だ。まずはご両親に話をしないといけない。カンバ君、スマホはあるかな? 勝手に返してトラブルが起きたら困るからね」
シルヴィアの父に言われるように連岩はスマホを取り出す。
「はい、あります」
「うちのパパは警察官なの。だから必ず守ってくれるよ」
彼女の言葉を信じ、スマホの電源を入れる。
すると背後からゆっくりとした足音が聞こえて来た。
「なんだ君は? ここはコスプレの会場じゃないぞ?」
連岩はシルヴィアの父が発した声の方を振り返ると、恐怖で背筋が凍る。
そこにいたのは特撮に出て来そうな赤きヒーローだった。
(あいつ、前に襲われた奴だ。もしかして俺を殺しにきたのか)
危機感を覚えた彼は「あいつは危険だ! 早く逃げないと!」と叫ぶ。
「逃げるなら逃げるといい。だが俺は絶対な正義だ。悪であるお前達を逃すことはない。うん?」
赤き戦士が視線を送ったのはシルヴィアの父だ。
まるでなにかを計測するようにそちらを見つめる。
「なぜだ? なぜ悪の心を持たない者が?」
「君が何者なのかは知らない。だが娘や友達を悪く言ったことは許せないなぁ。すぐに警察を呼ぶから待ってなさい」
そう言ってスマホを取り出すと100番通報をしようとする。
次の瞬間、赤きヒーローは後ろを振り返りベルトのスクリューから持ち手部分を引き抜き、黄金の刃を持った剣を出現させる。
「ブレードゴールド!」
決め台詞と共にチェーンソーで奇襲して来たのは全身黒尽くめでのっぺらぼうのガタイが良い化け物だった。
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