第二章 ハッピー・ニューダイブ!!!

第7話 新春のニューダイブ!!!

「どうも〜! ソウジの『デザイン探求チャンネル』です。

 今日は、『非日常のインスピレーション』を求めて、アキバのディープなスポットに潜入しますよ〜。はい、自撮りチェック、OK!」


  ••✼•• 


 さて新年ですね! 明けましたね!


 でも、だからって新年に何があるってわけでもなく。僕はいつだって仕事ですよ、とりあえず。会社では初詣もないらしいですね。ほんまに殺風景なことですよ。

 門松は置いてありました。そういえば。お正月はね、綺麗さっぱり前年の汚れを落としていかんとねえ。

 相変わらずの徹夜もなんのその、寒風吹き荒ぶ年末を、居酒屋を梯子して越してきましたよ。


 しかし! 今年の年始は仕事だけではなく、心温まるイベントを入れてみようと、今日は秋葉原名物、男の娘カフェ、『NEW DIVE!!!』に来ました。

 終わらない仕事の合間の癒しです。


 え、いや、僕の趣味ではございません!

 これはもうタカヤナギさんの趣味でございます。

 彼のかわいいものセンサーばっちり、早春から感度良好です。


 タカヤナギさんは、この会社リヴコードでは、コーディネーターという肩書き。

 ニューヨークでツアーコンダクターをしていたり、北海道から沖縄まで場末のバーをバンドマンとして歌って全国渡り歩いていたり、ピースボートに乗っていたり、戦場カメラマンをしていたり。謎の経歴の持ち主です。

 はい、このおっさんです。


 で、今は、まあなかなかに出来る上司です。

 僕は、しがない何でも屋のアートディレクター。

 さ。お店に入ってみますよ!

 入り口扉の前にはゴシックフォントのロゴが前面に描かれた縦長の看板が立っています。

 ビビッドなショッキングピンクのシンプルな文字。アルファベットで下から上に描いてあり、左半分には笑顔を振りまくメイド服の男の娘たち。


 細い雑居ビルの地下への急な階段を降りていくと、くの字に折れ曲がる踊り場からぐっと暗いブラックライトの空間です。

 階段を降り切って分厚い鉄の重い扉を押すと。

 明るい遊園地のような部屋が広がっていました!


 えっと、内側は可愛らしいインテリアで統一されています。

 白を基調とした壁に、淡いピンクや水色の装飾が散りばめられ、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだようです。


 突き当たりの一段高くなったショースペースには、メリーゴーランドのピンクのファンシーな馬が5体、シャンパンゴールドのツイストされた柱も5本。ショースペースの部分だけ若干天井が高くなっていて、全体は小さいスペースなのに不思議と圧迫感はないですね。

 上からの照明は赤いラメの光る幾重にも重なった薄桃色のシフォンのカーテンを明るく照らしています。

 天井から鹿にウサギ、クマのぬいぐるみが太いロープで吊るされていますよ!

 壁際には大きなモニタも備えつけてあり、ポップな色のアニメが流れています。


 扉が開き切ったらすぐに、キャストさんが近寄ってきて席に案内してくれました。

 今日は新年なので着物デイだとか。

 皆それぞれ花魁ふうに着物に飾りつけをしています。


 グレーのオフィスの社畜な日常から掛け離れて、ドギマギしてしまいますね。

 客層は若い女性から年配の男性まで、幅広いです。


 視線が泳ぐ僕をニヤニヤ眺めて、タカヤナギさんは得意げですね。


「奮発して綺麗どころを呼んだったわー。みんな可愛いやろ」


 ほんま可愛いっすね。

 そんなことを言いつつも僕の視線は泳ぎまくって、男の娘おとこのこたちの方へ戻ってこれません。着物デーと言いつつ、肌色多すぎやねんけど!

 店内の遠くに視線を向けると、皆んなチェキ撮影したり、色とりどりのドリンクを手にしたり。


「はーい! ドキドキハートのオムライス、ひとつでーす。ハートのサービスさせていただきますね!」

 隣の席の女の子の前に置かれたプレートには、焦げ目のないきれいな黄色のオムレツ、可愛いですね。さすがはタカヤナギさん御用達の店。細部にこだわり。

 真ん中にはケチャップで猫のイラストが描いてありますよ。

 そのテーブルの赤い着物のキャストさんは、プレート部分にケチャップでハートを書き込んでいます。

「くるくるハート、描きますねえぇ。美味しくなあれ♡」


(……僕が仕事をしているときに、彼はこんなところで遊んでいるのか?)

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