04 お化け屋敷

「こんな大きなジャック・オー・ランタン……」


 ティミーの声が震えている。さすがの仔猫ちゃんも興奮したのかと思ったら。


「大丈夫なの!? こんなものお庭に置いて、お化けがたくさん来たりしない!?」


 庭師の手先の器用さを我が事のように自慢していたキーラの頭に疑問符が浮かんだように、アリエッタには見えた。アリエッタ自身も、なんだか様子がおかしいな、と思い始めた。

 しばらく呆然としていたキーラは、慌てたように頷く。


「そ、そうよ! これだけ大きなランタンが、お化けの目に入らないはずがないじゃないの! 我が家はこれから、たくさんのお化けをお招きするんだから。せいいっぱいおもてなしするのよ!」


 あ、これ悪手だ。

 アリエッタの予感の通り、ティミーは身体を震わせた。


「いやだ! ぼく……ぼく……お化け屋敷に、一ヶ月もいなきゃいけないの!?」


 そんなのいやだ! と叫んで、ティミーは門のほうへと走って行ってしまった。キーラはまた呆然とし、子どもの掛け合いを面白がっていたクルスもまた少年を見送り、アリエッタと一緒にお嬢様たちのお供をしていたメーガンが、慌ててティミーを追いかける。彼女が追いかけているなら良いか、とアリエッタは焦るのを止め、お嬢様に苦言を申した。


「さ、さすがに、本気にするとは、思っていなかったわ……」


 強がってみせるが、三角帽子の先端が萎れてしまいそうなほどに、キーラは意気消沈していた。


「私も夢見がちなほうだと思うけど……あの子のほうが、想像力たくましいみたいね」


 がっくり、と魔女は肩を落とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る