第3話 陳宝という漢(おとこ)
文官、武官問わず袖で口元を覆いはしていても、こうした笑いは周囲に
「これは私の娘が無礼な物言いをして申し訳ない。
「待たれよ。
陳
視線を隣に移し、チョコンと
「
「あなたはお父上とも旧知の仲のようだけど、孫
「お嬢ちゃん、その正式な使者とやらに
そう言って小難しい顔をしたかと思うと、両手の指を一本づつ立てていく。
そして両手の指を見詰めていたかと思うと、今度は
「そんなに何日も
「そう言えば、ここ一年以上は
その一言で
そんな光景を、温かい眼差しで見守っていた
「いやはや。
「あたしは全然! 意気投合なんてしてないわっ」
相変わらず鼻を摘まみながら、頬っぺたをプクっと膨らませて見せる。
気を利かせた文官が進み出て、県令の
「
「なんて素敵な提案なのかしら、全員の衣にもシッカリ香を焚き込むと良いわ」
「おお! それは助かる。我もあの御方に臭いなどと思われたくはないのでな」
二人の視線が自然に交差すると、どちらからともなく思わず吹き出すような笑い声に包まれた。
***
その後の
そもそも
更には陳
唯でさえ女性の
任務遂行のために、陳
それでも
もちろん、陳
正装の
髪はいつものお団子に結い上げて、同じ
しかし父から預かった親書だけは、唯一大切に何重にも油紙で巻き付けて竹の筒に入れて仕舞い込む。
それを肩越しに結わえ付けて、
「孫
そう言うと平服の上から、分厚い胸板をドンっと叩き付ける。
義賊団の面々も各自の
そんなやりとりを経て、あっという間に出立の日を迎えた。
当日は朝霧が晴れるのを待って、
「きっと
「それじゃあ野郎共、出立するぞ!」
おおぉぉ――っ!
四十余名の義侠団は高らかに雄叫びを上げると、
陳
「
「誰が
隣に腰掛ける
「いやなに、道中で朱
「それに?」
「目的の屋敷まで片道たっぷり二週間の行程になる。その間に姫サマ気取りで
思わず
「まぁ、呼び方くらいなら好きに呼んだらいいわ。あたしはそんな些細なことに
(これで憧れの施
少しばかり変わった隊列は二週間余りを掛けて、無事に目的の
***
【用語註】
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【イラスト】
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