第15話 配信事故、ボイチェン切れ

マスター昇格の瞬間。

コメント欄は大歓声に包まれていた。


『おめでとう!!』

『ソロマスター伝説www』

『幻影クロウ最強!』


「……フッ、まぁ当然だな」

そう呟いて、俺はマイクを切り――

――た“つもり”だった。


■ ボイチェンオフ


椅子にもたれて大きく息を吐く。

「はぁ……疲れた。指いてぇ……」


普段の低音イケボではない。

ボイスチェンジャーを通さない、素の高めの声――

そして、TSで得た幼い女の子の声が、配信にそのまま流れた。


コメント欄が凍りつく。


『……え?』

『今の声なに?』

『イケボじゃなくね??』

『これ……女の子の声?』


■ 配信切り忘れ


気づかない俺は、机に突っ伏してぼやき続ける。

「ったく、社畜やってた頃より疲れるわ……これでやっと寝れる」


コメント欄が爆発。

『社畜!?』

『女社畜ゲーマー説www』

『いや声ガチで幼女なんだが』

『待て、これ事故配信じゃね?』


■ 気づいた瞬間


ふと画面を見上げると、まだ“配信中”のランプが点滅していた。

「……ッ!?」


慌てて切断。

だがすでに遅く、切り抜き職人たちは数秒の事故映像を保存済み。


■ 締め


翌朝――SNSのトレンドには「幻影クロウ 素声流出」が並び、

まとめサイトには《最強荒らし配信者、実は女の子だった!?》の記事が溢れていた。


俺は頭を抱え、呻いた。

「……ふざけんな。俺の伝説、こんな形で広まるのかよ」

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