外伝【初めてのテラ・レギオンズ】

※ここはプロローグ内でテンポにより省いた描写の補完です。

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「かなり設定できるんだな」


 麻葉は【テラ・レギオンズ】を開始して、チュートリアルステージにて一通りのチュートリアルを済ませた後、幾つかの設定をしていた。


「アバターとプレイヤー名かどーするか」


 アバターの設定はかなり多岐にわたっており、身長も変えられるし、顔も自由に変更が可能だ。


 だが、細かい設定を色々見ていく度、ドンドンとアバターを変更するための気力が麻葉の中で萎えていった。


「いいや、素のままで、髪だけ金髪のショートにして終わりにしよ。後でも変更できる様だし……あとはプレイヤー名か」

 

 こうしたMMO系のゲームは初めてな麻葉だったが、本名で行くのは流石に不味いのは知っており、何かいい名前を腕を組み考える。


「……【シャガ】、【月下美人】【アサガオ】。いや、なんか違うな」


 何がいいかと、コンソールを入力しながらいろいろ考え、


「【朝姫】。……いや、姫って何だよ。プリンセス気分か私」


 そう言いながらも、中々良い名前を考えられたと、ニヤニヤしてしまう。


「でも、別の名前考えるのもなー」


 他にピンとくるような名前も考えられず、口では「しょうがないなー」などと言いつつも、【プレイヤー名:朝姫】と登録する。


「あとは、初期レギオンの選択かえっと、【格闘、射撃】【防御、回避】の2つの内から1つずつ選ぶんだったか」


 始める前に聞いた光冴の話では、攻撃避けれる自信があれば【回避】。攻撃を避ける自信がないなら【防御】を付けた方がよいとのこと。


 ここら辺の設定は後に装備でも何とかなるレベルらしく、気にしなくていいらしい。


「回避ぐらい何とかなるだろ。じゃあ【格闘、回避】で」


『設定が完了しました。【テラ・レギオンズ】の世界にようこそ』


 アナウンスと共にチュートリアルステージのテクスチャが崩れ、目の前に初期装備の剣を持ち、回避用のブースターがついた【レギオンⅠ】が収められている格納庫に移動される。


「足、動くんだな」


 初めてのVR体験。


 現実ではまだ動かない足をトントンと叩き、感触を確かめる。


「実際に、治ったわけじゃねぇが」


 いい感触だ。麻葉は動く足に感情が高ぶってきた。


「あれが私の機体か。でっけーーー!」


 早速、自分の機体である赤く塗られた10M級のレギオンⅠの大きさに感嘆の声を上げる。


「早速動かすか。軽く慣らしておかないとな。【レギオンⅠ】」


 【テラ・レギオンズ】では乗る登録ロボットの名前を唱えるだけで、光の塊となりロボットの中に搭乗できた。


 一応自力での搭乗もできるが、基本的にはこうして登録した機体名を唱えるのが【テラ・レギオンズ】内では主流だ。


「おお、高い。周りも見えるんだなこれ」


 コックピットは全天周囲モニター――360度全てを映し出すモニターとなっており、全方位がしっかりと確認できる。


 麻葉がコックピットの椅子に座ると左右のレバーが麻葉の手の長さに届くように自動的に動いてくれる。


「レバーで動かすのか?」


 レバーを握ると、コンソールが開き、説明画面を表示した。


「左レバーで前後左右調整。右レバーは武器系の調整。足のペダルで上昇、ダッシュ、ブレーキ調整か」


 初期設定ではこうなっているが、設定で色々な変更が可能だ。


 それこそやろうと思えばレバー操作など要らず、コンソールでの入力操作や、ピアノの様なボード上での操作、ギターでの操作など、お金をかければ脳波コントロールもできるようになる。


「さて、動かしてみるか」


 慎重にレバーを動かすと同時に、ゆっくりと機体が動いた。


 全方位モニター内に、発着場などのいけるところがピンで表示され案内を出してくれる。


「えっと、兄貴との集合場所は……」


 ロボットサイズにできた街並みを眺めつつ、ワンケンゴー像という犬型ロボット像を探す。


「あれか……確かに目立つな」


 犬が二本立ちして刀を天に突き刺すその姿は遠目からも目立ち、待ち合わせスポットとして人気なようだ。


「【プレイヤー名:ライトアウト】……ああ、いた」


 人……ではなく様々なロボットたちがいる中でプレイヤー名を頼りに光冴を見つけた。


 光が今乗っているロボットは麻葉と同じく人型のレギオンⅠだが、光冴の機体は色が灰色で、大人しいめカラーリングをしている。


「触ればいいんだっけ」


 【テラ・レギオンズ】内のプレイヤー間での通信は【全体通信】【フレンド通信】【ふれあい通信】の3つがある。


 【全体通信】は周囲全体に、無差別でばら撒かれる通信。【フレンド通信】は登録した人物同士でできる通信。【ふれあい通信】は機体を触れ合わせることでできる通信であり、登録してない者同士でもできる。


「兄貴ー来たぞー」


「【朝姫】……その声、麻葉か」


「すぐわかれよ」


「いやだけど、姫って……」


「あッ!?なんか悪いか!!」


 くすくす笑う光冴に、キレ散らかす麻葉。


「姫って自分で名乗るのか……。ククッ、【黒姫】もそうだけど、やるなお前」


「うるせーよ。別にいいだろ。他に思い付かなかったんだよ!それより早く案内しろ!!」


 笑いながら追及する光冴に、赤面しながらも話題を逸らそうとする麻葉。


「それじゃあ初心者クエストに行こう。発着場に行行くぞ。ついでにフレンド登録もしといてくれ」


 フレンド登録をし、光冴の案内で発着場に付く。


 発着場の先には海が広がっており、大海原と青い空が麻葉を待ってくれている。


「クエストに飛ぶときや、エリア移動したりするときにここは使うんだ。今回は必要ないからそのまま発進してくれ。真っすぐ行けばいい」


「光冴は来ないのか?」


「ああ、初心者クエストは初心者しか受けられないしな。フレンド通信はいつでもできるから、分からないことがあったら聞くんだぞ」


「その初心者クエストの内容は?」


「【敵から15分生き残ること】」


「……わかった」


 何か変なミッションのように感じたが、麻葉にはそれが本当に初心者クエストなのかもわからず、光冴の言うことにしたがい発進のためのカタパルトにレギオンⅠの足を乗せる。


「グットラック麻葉」


『カタパルトスタンバイ。コントロールをそちらにお渡しします』


「レバーを前に出せば発射される。操作に慣れたら教えてくれ、案内してやる」


「わかった。じゃあな兄貴!また後で。【レギオンⅠ】【朝姫】出るぞ!!」


 そうしてレバーを押すと、カタパルトが発射され、海の上を赤いレギオンⅠが駆けていく。


 光冴からの通信を切り、広い海の上をレギオンⅠの乗り心地を試す。


「ハハッ、いいな。これ」


 加速時の重力を感じながら、レギオンⅠの足を海につけ、跳ねる水しぶきたちを見て、感動する麻葉。


「この世界は自由なんだな」


 今までの不自由な気持ちが解放されたかの如く、何処までも続く海を見つめ、進んでいく。


「ありがとな兄貴。待ってろ。初心者クエストぐらいすぐクリアしてやるさ」


 この世界を教えてくれた光冴に感謝しつつ、意気揚々と加速を駆ける麻葉だったが、数分後その想いが逆転することになるとは、この時の麻葉は知るよしもない。

―――――――――――――――――――――――

テラ「色々機体の操作方法を説明したけど、あれはイメージしやすいように設定してるよ!だって脳のイメージができないとフルダイブ型は動かしにくいからね!

 うん?色々設定してる方が分かりにくい?

 ダイジョーブ!!そんな君のために機体と直接コネクトすることもできるようになってるよ!お金かかるけど」

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