第11話 – すべてが崩れる

このエピソードは少し長くなったため、二つのパートに分けることにしました。どうぞお楽しみください。


森は静まり返っていた。破壊された寺院の廃墟の中、二人の戦士の荒い呼吸だけが響いていた。


五十岐(イツキ)の小さな体は震え、唇は裂け、微かな光が彼の肌の裂け目をかすかに修復していた。


向かい側では、徹(トオル)の肩が上下に揺れ、腕に再生の光がちらつく。二人とも疲れ果て、血を流していたが、まだ立っていた。


最初に動いたのはトオルだった——目にも止まらぬ速さで。踵が五十岐の肋を打ち抜き、少年は後方に飛ばされ、折れた柱にぶつかり、粉塵が舞う。咳が森に響いた。

五十岐(弱々しく、血を垂らしながら):「レ…レンジ…」


トオルは血を滴らせ、にやりと笑った。


「弱ぇな…お前のオーバードライブも、今度は通用しねえ!」


膝を震わせながら立ち上がる。目の奥の微かな光が揺れたが、消えはしなかった。


トオルは再び突進する。拳は弾丸のように飛ぶ。五十岐はかろうじて身をかわす。二発目の拳がかすめ、石の床を割る風が巻き起こる。


胸が燃えるように熱い。震える声で囁く。


五十岐:「オーバードライブ…フラッシュ…」


胸の印が燃え上がり、全身の血管と筋肉にエネルギーが爆発する。彼は光の彗星のごとく消えた。


再び姿を現したとき、拳はトオルの顎に激突した。


木々を突き破り、枝を砕き、血が森中に弧を描く。トオルはよろめき、顎が割れそうになりながらも笑った——その笑いは空気を震わせるほど冷酷だった。


五十岐は膝をつき、血の中で唇を震わせながら囁いた。


「ごめん…レンジ…俺たちは…お前の呪いを…解けなかった…俺…約束を破った…」


涙に濡れた無垢な瞳は、虚空を見つめていた。


トオルは爪をしならせながら立ち上がり、突進する。五十岐は目を閉じ、終わりを受け入れる覚悟をした。


その時——森が揺れた。影の中から、異形の巨大な獣が異常な速度で現れた。


その口がトオルの頭をがっちりと咥え、体ごと引きちぎり、呪わしいほどに音を立てて飲み込んだ。周囲に血が飛び散る。


体は崩れ落ち、生命の痕跡は消えた。幽霊のような獣は咀嚼し、飲み込み、そして——そっと五十岐の額に前足を置いた。光の小さな脈が揺らぎ、獣は消えた。



五十岐の胸はゆっくりと上がり、彼は生きていたが意識はなかった。


ゴーストマーケットにささやきが広がる。


ゴースト1:「今の感じた…?」

ゴースト2:「森…揺れた…」


ヴェールを被った女(蜜のように甘く、ガラスのように鋭い声):「もしかして…またあの人間かしら。あの…人間のタマ…最高に美味しそう…」



赤い髪の少女は無表情で地平線を見つめ、瞳は冷たく虚ろだった。



幻影の中。


俺、モモ、そしてリンは黒神(クロガミ)、ライハ、そして何百もの泣き叫ぶ霊と向かい合った。リンが先頭に立ち、彼女の**白黒形態(シロクロケイタイ)**は輝いていた。


陶器のような肌、胸から腰にかけて渦巻く入れ墨。鐘の音が鳴る——低く、悲しげで、終わりのない響き。


俺は笑い、腕を氷の刃に変える。幽霊の群れを旋回し、氷が咬み裂き、血が花火のように飛び散った。


「さあ…触ってみろ!」


モモも続く——青い炎が空中をかき分け、打撃は発火し、霊の手足を裂く。フーディーは動きに合わせてわずかにめくれ、下に隠れたビキニの光がちらりと見える。


リンの大鎌が歌う——思考より速く、頭部と胴体を斬り裂く。


血が噴き出し、手足が飛び、戦場は赤と氷の白の嵐となった。


ライハの膝が震える。


ライハ(震えながら):「ケンタ…サヤ…トオル…いない…」


黒神の目が細まる。


「呪いめ、貴様を潰す!」


俺は再び突進する。黒神は念動の闇で反撃し、俺を幽霊の壁に叩きつけるが、体勢を立て直し、笑みは消えない。


モモはライハと衝突——黒い霧の鞭が爪とぶつかり、火花と断裂の衝撃波が飛ぶ。全ての動きが狂気だった。


リンは黒神に向き合う——大鎌対幽霊の槍。衝撃で幻影が揺れる。血とエネルギーの火花が超新星のように空を照らす。


ライハの鞭が一閃——黒光の弧が戦場を横切り、モモに直撃。


衝撃で彼女は横に投げ出され、息を破裂させ、火花が地面に散る。


ライハが息を吐く前に、リンはそこにいた——動かず、音もなく、薄明かりが彼女の背後で揺れる。


大鎌は空中に完璧な一撃の曲線を描く。一瞬、時間が止まった。赤い霧が静寂の中に散る。


ライハの体は膝をつき、消えゆく。リンはその姿勢を保ち、髪が風になびき、煙の中に月光のように鎌が輝く。


モモは鞭の衝撃から立ち上がろうとするが、霧の中から幽霊のような怪物が現れ、全身が牙と影でできたような形で、腕を切り落とす。モモは息を呑み、痛みで視界が揺れる。


リンはモモの叫び声が消える前に動き、光が走り、怪物は粉塵の中に消えた。



リンは落ちるモモを受け止め、優しく下ろす。リンの手に沿った光が傷を癒そうと脈打つが、回復は遅く、モモの顔の色はまだ戻らない。


リンは疲れた息を吐き、目を鋭く光らせる。


リン(静かに、力強く):「もう十分だ。」


冷たい囁きが響く。


「静寂。」


世界が凍りつく。攻撃の途中で幽霊が止まり、口を開き、爪を浮かせる。黒光のリングが広がり、音は蒸発する。


体は内側に折れ、肋骨は紙のように折れ、頭蓋は内側に砕け、臓器は淡い炎の流れとなり、螺旋を描く。


数百の体が無音の爆発で消え、手足が砕け、幽霊の昆虫は空中で生成されては消えた。


強者は叫ぼうとしたが、頭は潰れ、目は陥没した。


戦場は灰と幽霊の塵の嵐となった。鐘の音がかすかに響き、最後の粒子が消えた。


焼け焦げた模様が残り、壁には幽霊のシルエットが焼き付く。静寂——異常で重い。


爆発は沈黙に消え、全ての生物、全ての幽霊の光の残滓は消えた——漂う塵と暗い染みだけが砕けた地面に残った。


モモの瞳が見開かれる。俺の笑みが戻った。狂気と勝利が絡み合う。

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