第5話 捜索(美咲編1)
女性「はー、今日も掲示板に名前がないか。」
震災の日から一ヶ月。美咲は緑山町に住んでいた恋人の消息を探していた。
学生時代に同じサークルだった彼は、隠すこともなく私に好意を向けてきていた。告白も一度は断ったけれど、最後は彼の熱意と誠実さに押されて付き合ってしまった。
付き合った期間は1年ちょっとくらいでそこまで長くはないが、仕事で疲れた私の
美咲「はー、私ってこんな女々しい女だったんだ。」
大切な物は失ってから気づくとよく言われるが、まさしくその通りだった。
彼の消息が不明になってから、私の心には大きな穴が空いていた。スマホにLINEのマークが付く度に、彼からの連絡だと期待しては落胆する毎日だった。
彼は死んでしまったかもしれない、と恐ろしい推測が脳裏に何度もよぎり、それを振り払うため彼が住んでいた緑山町に足を運んだこともあった。
彼が住んでいた家は大きく崩れ、立入禁止の黄色いテープが貼られており、風が吹く度に砂埃が舞っていた。まさに
彼の写真を持ち色々な避難所を周り聞き込みもした。そこでは彼の友人にも出会い、彼かもしれない男性を遠目で見たと証言をもらった。
その友人の一言の証言が今の私を支えており、彼の捜索を続ける根拠がそこにはあった。
美咲はスマホの電源を切り、ゆっくりと目を閉じた。彼と過ごした楽しい日々、これから彼と歩みたい輝いた未来。そんな光景が閉じたまぶたの裏にぼんやりと浮かぶ。
美咲「ゆうくん…、あなたは今どこにいるの?」
(八浜町での祐司と絵名)
祐司は突然夜に目が覚め、あたりを見渡した。
仮説住宅の中で、恋人の絵名が苦しそうな顔を浮かべ、隣で眠っている。
絵名「…いや…しなないで…」
弱々しい彼女の声が静かな仮設住宅に響き、胸が締め付けられる。
彼女の愛情に偽りはない、と信じている。ただ、彼女はなにか大きなものを背負っている。そして、まだ僕はそれを知らない…。
彼の直感がそう告げていた。
祐司「僕は記憶を取り戻し、早く君の隣に対等に立てる人間になりたいよ。」祐司はそうつぶやき、絵名の髪の毛を優しく撫でた。
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