第2話 秘密の影
祐司は、目覚めた時にいた緑山町から歩いて八丘町に移動した日を思い出した。
(避難所探し)
絵名と祐司はホコリが舞うガレキの町を2人で歩いていた。
絵名「ゆうくん、大丈夫?」
絵名は歩いている最中に何度も祐司に声かけてしまう。
祐司「大丈夫だよ。覚えのない町だし、ガレキもすごいからキョロキョロしちゃっただけだよ。」
祐司の目の焦点が定まっていない。明らかに正常ではない。
絵名「足が疲れたなら休憩する?」
祐司「大丈夫!体力があるのかそこまで足は疲れてないよ。」
絵名「ゆうちゃんはバスケやってたからかも。足の疲れじゃないなら…こうだ!!」絵名は祐司の手を握ってギュっと握った。「触れ合うとね、安心に繋がるんだよ。きっと不安だったんだよね」
祐司「絵名…ありがとう。見透かされちゃったね。でも…これならなんかまだまだ歩けそうな気がしてきた。」
絵名の優しさが心に染み渡るのを感じた。記憶がない日々の中で絵名の存在は祐司の心の穴を少しずつ埋めていた。
絵名「それなら良かった。緑山町の避難所より混んでいない避難所を早く見つけないとね。大変だけど頑張ろう。」
絵名は笑顔で祐司をリードするが、その右足は微かに震えていた。
(仮設住宅)
絵名「今日は仮設住宅の入居手続きをしに役所に行ってくるね。」
ある日の朝食に絵名が笑顔で伝えてきた。
祐司「そうなの?僕も暇だし一緒に行こうかな。」
絵名「ううん、ゆうちゃんは待ってて。物資の運搬とかガレキの整理とか男手は避難所でいっぱい求められてるよ。」
絵名は即座に仕事を突き付けてきた。
祐司「え…あ、そうだね。僕ももっと自分にできることを探さないとね。」いつも一緒に行動していた絵名から別行動を突きつけられ、心がざわついた。
(避難所での頑張りが少ないと思われている…?、それとも役所に僕に見せにくい何かがある…?)
記憶がないためか、祐司は小さなことでも大きく心が揺さぶられる。
絵名が出かけた後、祐司は避難所の周りを歩き始め、仕事を探し始めた。
祐司「こんにちは、運ぶのを手伝いましょうか?」初老ながら必死に頑張っている男性を見つけ、声をかけ、手伝いをした。
男性「いやー助かったよ。ありがとうね。あの彼女さんと一緒にいる人だろ?この前も彼女が手伝ってくれて助かったんだ。お礼言っておいてよ。」
祐司「そうなんですか? 絵名、そんなこと一言も言ってませんでしたよ。」
祐司の胸に誇らしさが広がる。
男性「本当に優しい子だよね。最近の若い人は自分のことばかり優先する人が多いのに。」
「でもね、君……彼女のこと、よく見てあげてくれよ。無理をしすぎるタイプだよ。避難所でも色々な人を気にかけて助けているじゃないか。彼女は※足をケガしているのに※」
祐司「え!? 絵名は足をケガしているのですか?」
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