第2話 決闘

――寮・七篠の部屋


「結局…どうするんだい?」


「どうするも何も、決闘するしかないだろ?あのアホみたいな貴族相手には遅れを取らないさ」


「本気で言ってるのかい?」


「ああ」


「そ…そうか。ならいいんだ」


「煮え切らない態度だな、不安か?」


「そ…そりゃ不安に決まってるだろう!ヒメ君は僕にとって初めてできた友達なんだ!」


「そうか、ま、心配しなくていい。勝つからな」


「勝つって…算段でもあるのかい?」


「明日の21時と言うことはそこまでは自由時間があるということだ。明日から始まる学園のカリキュラムが終わるのが15時、つまり6時間の余裕がある。その6時間で魔人型のECMAの改造カスタムを施す。それで問題ないだろう。固有魔法が来ても何とか出来る」


「いや、問題大有りだろう!第一、改造するって言ったって素材が…」


「すまないんだが、君に残った5000ポイントの残金を俺に投資してくれないか、このリストの上から順に買えるだけ俺にプレゼントしてほしい」


「…分かった、僕にも問題があったからね。ちゃんと返してくれよ?」


「ありがとう、こっちも準備を済ませる。最悪一つもなくても何とかするさ、だから心配しなくていい」


――携帯工房内


「そんなこんなで決闘の時間まで残り3時間だよ…ヒメ君…本当に大丈夫かい?」


「ああ、余裕だ。それにしてもよく全部買ってくれたな」


「ああ、魔法を使ったのさ、おかげで何もなく無一文だよ」


「魔法?固有魔法を持ってるのか?男なのに!?」


「ああ、珍しいのかも知れないけど、使い勝手がかなり悪くてさ。ちょっと見せてあげる」


そう言うと彼は銅貨1枚を取り出した


「何の変哲もない銅貨だな、価値はパン一斤って所か?」


「これを、こうする」


目の前にパン一斤の丁度半分が出てきた


「パンが出てきたな、丁度一斤の半分、これが魔法か」


「僕はこれを不等価交換ボッタクリと名付けた、能力は手元にある貨幣を生贄にしてちょうど半分の価値の物を出せるんだ」


「男の能力にしては便利だな」


「だろう?」


「よし、あとはこれをこうして…」

実際粉砕機とコーティングマグネットを手に入れたのはでかい。

これで俺がダンジョンに入って手に入れたダンジョンの壁を加工して…コーティングマグネットと配合すると…


「何してるんだい?」


「世界への挑戦」


「??????」


「全てのダンジョンの壁は魔力を反射、吸収するのは知ってるか?」


「ああ、知ってはいるが…まさか!?そんなバカな真似をするつもりかい!?そんな事をしたら君は死んでしまう!いや死ぬならいい!最悪機体そのものがダンジョンの一部になって君はモンスターになってしまうんだぞ!?」


「俺の極端に低い魔力量(と昔の家でされた実験で経た身体)なら多分大丈夫だからな。おそらくは乗りこなせるはずだ…まぁ、これを実験してた奴等は全員死んでそれが歴史書にも載ってるけどな、でもこうするのが一番なんだ、信じてくれ」


「……分かった、信じるよ。最悪が起こっても任せてくれ」


「改造は完了したから。時間までは少し休むことにするよ」


――過去の夢


寝ているといつもの事だが昔の事を思い出すなぁ…


「にぃに!遊んで!」


「ああ、少し待っててくれ…もう少しでこれが読み終わるんだ」


「にぃに、休み時間はずっと勉強してる、たまには妹弟子ぼくと遊んでほしいよ」


「ああ…うん。そうだな」


懐かしいな、実家から逃げた後に拾ってくれた時の事が鮮明に思い出せる…


師匠あのひとは元気なんだろうか。妹弟子は奴隷にされてたのが腸が煮えくり返りそうになったが…


この時の俺は復讐する為に力を手に入れようと必死だったな…戸籍を偽るために男装を始めたのもこの頃だったっけ…


俺は強くなる。そのためだけに武術やECMAの事を勉強していた…

手っ取り早く強くなるのに一番楽だったから…


これより昔のことは…思い出したくもないな…


〜〜〜


「お前みたいな無能!誰も愛さない!」


バァン!ベチン!


「ウグッ…姉さん、なんでこんな酷いことするの?」


「姉さんなんてそんな汚い口で言わないで!私はあなたみたいな無能の姉なんかじゃないわ!」


ベチン!ベチン!


「ウグッ…助けて…誰か!母さん!父さん!」


「誰もあなたみたいな無能助けないわ!」


「サラ姉、それが終わったら私に貸して。実験に使うから」


「良かったわね!アイがあんたのこと助けてあげるって!」


「気持ち悪いこと言わないでよ?誰がこんなの助けるって?」


俺が実家にいた頃。俺の世界は座敷牢の中しかなくなってた頃、よく腹いせに鞭で打たれたり実験につきあわされたりしていたな…


「今からあんたの身体に色々なモンスターの血を流し込んで人間が強くなるかどうか見てみるわ、普通に考えたら拒絶反応が出るだろうけど、あんたが死んでも全く問題ないからね」


「ぐぅ…がぁぁッ!イタイイタイイタイイイイイッ!!」


「ふーん、そんな感じになるんだ。見た感じは変わってなさそうだからこれは失敗だね。ま、いくらでもモンスターは居るし、頑張ってね」


「アッ…アァ…」


〜〜


「結局全部失敗かぁ、コレはこういうところでも無能なんだね…って気絶して聞いちゃ居ないか」


「調子はどうかしら?」


「こりゃ駄目だね。この方向じゃ論文にもできない」


「そう、今度はどんな実験をするの?」


「そうだなぁ…義眼についての研究も進めたいし、そっちをやってみようかな、ほら〜起きろ〜愚妹」


「グウゥ…ウゥ」


目を覚ますと姉が目玉を持っていた。

この時の俺は記憶が少し曖昧だが拘束されてたと思う。


「元気そうだね、じゃあ君を強くしてあげる」


「この最低位ワーストゴブリンのでいっか…麻酔は必要ないよね?」


「あ!アアアッ!ウアアアアアアァ!!!」


「おっ、こっちは成功したみたい。まぁ実験以上の価値はないけどね。良かったね愚妹、右眼が無能の目からゴブリンの目位にはランクアップしたよ。ありがとうは?」


〜〜


「よく聞きなさい、無能。飯の時間よ」


「………」ズリ…ズリ…ドンッ!


「感謝の言葉が聞こえないわねぇ?」グリグリ


「ありがとう…ございます…」


「声が小さいのよ!」ズドン!


「あっ…ありがとう!ございます!」


「よくできたじゃない。食べていいわよ、ソレ」


そう言うと目の前にはドッグフードと匂いのきつい水を犬用の皿に盛り付けたのを地面に置いた


「あんたには犬のエサと便所の水で十分でしょ?」


「……」モグ…モグ…ズルルッ゙…


「あらどうしたの?早く食べなさい」


「は…はい…」


こういう拷問を4年間も受け続けてよく生きていたな、俺


――携帯工房内


「おいヒメ君!開始30分前だぞ!早く起きてくれ!」


「ああ、すまないな」


「ずいぶん魘されていたが、大丈夫か?」


「いつものことだから問題ない。闘技場に行こう」


――闘技場・受付


「あら、本当に来たんですのね。遅いからてっきり逃げたのかと思ってましたわ。これじゃ用意した首輪も無駄になるかもってハラハラしてましたの」


「ハッ、貴族様は余裕のないことで」


「揃ったようだね?僕はこの決闘の見届け人を務める3年生、解説ナレタだ。決闘のルールを説明させてもらうよ?簡単にだからすぐ終わるさ」


「決闘のルールはシンプル!参ったと言うか気絶するか死ぬかしたら負けだ!質問は?」


「ない」


「ありませんわ」


「OK!なら早速始めようじゃないか。両者がリングに入って最初の3カウントが過ぎたら開始だ。用意はいいね?」


――


【さぁ始まりました七篠ヒメVS犬瀬キョウコの1年生同士の決闘!実況は私実況レポが】


【解説は僕、解説ナレタがお送りするよ!】


【さぁ早速と決闘用意ができたようですので!3カウント行きましょう!】


3!


2!


1!


「「勝負!」」


「私の力を見せつけてあげますわ!煌びや華な爆破フラワーエクスプロージョン!」


【ああっとこれはどうしたことだー!七篠さんの周りが急に爆発し煙で包まれたー!来場の皆様とテレビをご覧の皆様は問題なく映せるようカメラに細工を施してますのでご心配なく!】


【どうやら犬瀬さんは最初から固有魔法で勝負を決めに来たみたいだね。こりゃ開始前のトトカルチョの倍率通りの結果になりそうだ】


「これが私の固有魔法の一つ、煌びや華な爆破フラワーエクスプロージョンですわ!ってもう聞こえてませんわよね」

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