帰郷
金色の髪が、風に揺られてなびく。
レースのついた服を着て、故郷の村の家へと向かっていた。
私の名前はリリアといい、かつては王国で女騎士をしていたようだ。
しかし、戦場に迷い込んだ子供をかばい、体がだめになってしまい別の体、魔道人形というものに魂を移すことになったらしい。
魔道人形とは、魔力で動く機械の人形で、見た目は人間とほとんど変わらないものだ。そして、魂を移す技術は、最近、理論上できるとわかっただけで、実践は今回が初めてだったと聞いた。
その結果、記憶の定着が失敗した。
剣を振ってみても、かつての技量はなく、騎士はもうやれなかった。
故郷の家の住所を教えてもらい、帰ることになった。
家につき、ドアをノックすると二人の男女が出てくる。
私を見た途端
「リリア!」
とその男女は喜んだ。
話を聞くとどうやら私の両親らしく、私のことは新聞などで大々的に取り上げられていてもう知っていたようだ。
「お邪魔します。」
そう言って入らせてもらった。
父親と母親である人たちは
「リリア、お前は昔から強かった。」
と昔の私の話を聞かせてくれた。
「そうなんですね。」
私は気を遣い微笑む。
いろいろと聞くが、今の私には他人ごとにしか聞こえず、この二人が両親だということが実感がわかないまま時間が過ぎていった。
そして、母親が私の手を取り
「もう騎士に無理に戻らなくていいんだよ。だから好きなだけここにいて......」
私の目を見て彼女はいった。
次の日、村に図書館があると聞いて、朝から図書館に向かった。
かつての私に関する書物をただひたすら夕方まで読んだ。
初日は、なにかしら思い出せるのではないかという希望があった。
しかし、何冊読んでも、その本の数々の出来事は自分のことだとは全然思えなかった。
しばらくたち、かつての私に関するすべての本を読み終わり図書館に行くこともなくなっていた。
やれることもなくなり、ただ窓から外の風景をぼんやりと眺める日々を過ごしていた。
そんな風にしながらもあることを考えていた。
そしてついに決意した。
私は旅に出る。
四角形の旅行鞄を用意して、着替えなど最低限なものを入れていく。
私は、今の自分の足で、前の私の足跡をたどりたいとそんな衝動にかられた。
今の私にはそれが必要だと強く感じた。
私は誰なのか?女騎士のリリアなのか、それとも......
その答えが旅の先に待っているような気がした。
それならば、行ってそれを確かめたい。
暗闇の中で彷徨っている中、その暗闇に炎が一つ灯されたようなそんな感覚だった。
用意が終わり両親に大事な話があるといって時間を作ってもらった。
「私、昔の私の足跡をたどる旅に出ようと思うんです。」
両親に告げた。
父親と母親はさみしそうにしながらも
「お前がそれを必要だと思うなら行ってきなさい。」
と背中を押してくれた。
そして旅行鞄を力強く持ち故郷の家から旅立った。
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