【貞操逆転世界】で逆レ〇プされたい! してくれなきゃ嫌だ!
BIBI
第1話 ブスが美人扱いで草
『女性とは違い、男性は性欲が殆どありません。その点で男女の恋愛観は、かなり違いますね』
ブラウン管テレビから音が聞こえる。映像は古臭くて、音も悪い。
「…………」
黒髪の少年――コウヤは洗い物をしながら、テレビの音を聞いていた。
男女の価値観が一変して、二日目。まだ慣れるはずもなく、彼は今の世界に違和感を覚えている。
世界の変化に気づいているのは、現状で彼だけ。
一人取り残された孤独感を抱きつつも、コウヤは環境に順応していた。
『人気女優の大咲坂未さんは、どう思いますか?』
テレビ画面に映る細いキレイ系な女性は、番組の司会だ。
『そうね。男と女では美的感性が真逆……』
テレビ画面に映る太った女――大咲。こんなでも彼女は人気女優らしい。
『私は男から魅力的だと言われているけど、女からは毎日の様に化け物扱いされちゃうのよ』
大咲の自虐的なトーク。会場が笑いに包まれていた。これには仏頂面の司会者も、笑いを堪え切れていない。
『私も一応女だから、鏡で自分を見ても不細工だとしか思わないのよ。だから男の人から美人扱いされても、正直かなり気まずいのよね。息子からも美人扱いされるけど、嬉しさ半分気まずさ半分ね』
大咲の話は事実である。この世界の男は美的感性が逆転している。
それは顔だけの話じゃない。今の世界では、体格がゴツくて高身長の女がモテる。その理屈で言えば――。
「え? 何?」
黒髪を肩まで伸ばした少女――チグサは、男から超ブサイク扱いされている訳だ。
華奢な体。低身長。小さな胸。可愛らしい顔立ち。彼女は男に普段から、気持ちが悪いとブス扱いされている。
「いや、何でもない……」
隣で首を傾げるチグサから、コウヤは目を逸らした。
「そ、そっか……」
不思議そうな顔を浮かべながらも、体の向きを変える。冷蔵庫を開け、牛乳を取り出してコップに注ぐチグサ。
「…………」
コウヤは黙って料理の皿をテーブルに運びながら考える、どうにかしてチグサに逆レイプされたいと。
この世界の女は性欲がめちゃくちゃ強い。特にチグサほど非モテなら、なおさら性欲を持て余しているはずだ。
それなのにチグサはコウヤを襲わない。どうしたものかと、コウヤは肩を落として溜息を吐く。
『福岡では最近、こういう事件が増えていますよね。基本的に男性は働く必要がなく、念も鍛えません。それ故に女性は容易く男性を襲えてしまう』
司会者が沈痛な面持ちで語っていた。この世界では超能力者が存在している。男がどれだけ鍛えたとしても、超能力者が相手では抵抗できなくて当然だ。
それもあって女が男をレイプする事件は、後を絶たないし抑止も難しい。
「怖いなぁ」
コウヤは呟き、少し【鍛錬】を思い出す。
念の鍛錬は単純だ。強い念を直に感じると、自然と鍛えられる。
だから効率を上げたいという建前で、先程までチグサとコウヤは裸で密着していた。コウヤとしては彼女が発情して、襲ってくれると期待してたが――。
チグサは純粋だから、レイプに興味がないのだろう。
全く変な事をする素振りも見せず、鍛錬を終えてしまった。
この分では童貞卒業も遠いなと、コウヤは溜息を吐く。
◆
チグサは男自体が苦手だった。女から見れば美人なチグサも、男から見れば逆に不細工だと思われてしまう。
自分から見て不細工な女が、男から見れば美人に見えるらしい。不細工な女が男からチヤホヤされ、自分は見下されていた。
別に美的感覚に限った話じゃない。自分が理解できない物が評価される社会。それが不快だと感じるのは、人の性質だろう。
その例に漏れず、チグサもまた男嫌いを拗らせてしまった。昔は漫画やラノベの様な都合のいい恋愛に憧れていたが、今は違う。
周囲から男のいる家庭環境は嫉妬されていたが、彼女は自ら捨て去った。確かに幼い頃は優しい理想の兄に憧れていた。しかし何時しか、彼女は夢を見なくなった。
気が付けば男の悪口を延々と言い続けてしまう。
それほどチグサは男に不満を抱えて生きている。
「――チグサ。どうかした? ご飯できたけど?」
リビングのテーブルには出来立ての料理が並べられている。夕食の準備を済ませたコウヤはエプロン姿で、ソファの前まで来ていた。
「え。あ……、ごめん。ボーっとしてた……」
チグサは目の前の彼に気づき、ハッとした様子で顔を赤らめる。
「何か悩みがあるの? あるなら聞くけど?」
安堵した様子で笑い、テーブルに向かう。コウヤはエプロンを脱ぎながら、チグサの方を見た。
「……寧ろ悩みがなくなった感じがする。幸せだから、肩の力が抜け過ぎているのかも」
目を伏せながら、テーブルに着いてチグサは苦笑する。本音だった。今朝から機嫌がすこぶるいい。
昨日と今日、鍛錬と称してエッチな体験をした。それだけが理由ではなく、単純に兄との蟠りが解消されたことが心底嬉しかったのだ。
「へぇ。それならよかった」
そう微笑みながら、リモコンを掴む。アナログ故に機器の性能が悪い。何度も同じボタンを押す事で、やっと音量が大きくなる。
「…………っ!」
少し握力が落ちて、リモコンを落としそうになる。まだ夕方だと言うのに、コウヤは強烈な眠気に襲われてしまう。
『大咲さんは本当に男性から熱狂的な人気ですよねぇ』
テレビ画面では大咲が絶世の美女だと特集されていた。
「…………」
目が腐りそうな思いだった。観るだけで苦痛。
思わずコウヤはチャンネルを切り替える。ニュース番組で止め、リモコンをテーブルの上に置く。
「やっぱり兄さんも、美人が好きなの?」
少し俯き、悲しそうな声が出て自分でも内心驚いた。チグサは体が羞恥心で火照るのを感じる。何で分かりやすくショックを受けているんだと、おろおろ焦り始めた。
「僕は顔で人を好きにならないよ。どうでもいい。一緒にいて楽しい事が重要だよ」
何気ない様子で、コウヤはコップを口にした。ゴクゴクと麦茶を飲み、「チグサだって楽しい人が好きだろ?」と笑う。
「え。あ……、うん……」
自然と赤面して顔を上げてしまう。チグサは質問に驚き、目の前の兄を異性として意識した。自分と似た整った容姿を持つ兄を見て、胸が張り裂けそうなほど高鳴った。
「――――っ!」
何も言わず、席を立ってトイレに向かう。
「~~~~っ!」
チグサは分からなかった、自分の気持ちが。あれだけ嫌いだった兄に、もう心を許してしまっている。
一緒にいて楽しい。心が安らぐ。
だからこそ不快だった。高が性欲で今までの受けてきた侮辱を許していいのかと、チグサは思い悩む。
散々今まで男の悪口を言い続けて、少し優しくされた途端に骨抜きでは馬鹿みたいだ。これで恨みではなく僻みで、悪口を言っていただけと白状しているに等しい。
それはチグサのプライドが許さなった。異性に恵まれた人達から見て、男の悪口ばかり言う自分はどう思われていただろう。
ブスの僻みだと、見透かされていたのではないか。
想像するだけで、胃がキリキリと悲鳴を上げる。だから過去を正当化する為に、チグサはコウヤを嫌いだと思い込もうとした――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――その結果。
「……全部、兄さんが悪いんだから」
深夜、チグサはコウヤにキスしていた。無断で部屋に忍び込み、ベッドで熟睡する兄にキスをして舌を捻じ込む。
本人に自覚はないらしい。初めて男に優しくされて、彼女は舞い上がっている。だからこそ極端な行動に出やすくなっていた。
自分が兄を恨んでいる。男が嫌いなんだ。それを証明したい。今まで侮辱されてきた恨みを許してはいけない。
その心理が、彼女の中で強姦を正当化してしまう。
本当はただ、性欲を我慢したくない。それだけなのに、これは復讐だからと心の中で言い訳していた。
「ずっと、酷い事を言われてきたんだよ? 許せない……。復讐だから、これは……」
とにかく免罪符が欲しいのだろう。強姦を正当化する為に、彼女は兄を恨んでいるフリをしている。
煩いほど息を乱し、彼女はコウヤの上着を脱がしていく。
「こんな……。いつ鍛えたの……?」
チグサは生唾を呑み込み、服のはだけたコウヤの姿を見た。よく鍛えられた彼の筋肉に優しく触れて、彼女はベロっと舐めた。
コウヤは念を殆ど消耗したとはいえ、まだ微弱に残っており、チグサの興奮を著しく昂らせるには十分な力があった。
―――――――――――――
〈あとがき〉
「続きが気になる!」
と思ってくれた人は【★】してくれると嬉しいです!
モチベが上がります!!
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