柳岡 颯 (やなぎおか はやて)

商店街に人が入っていくのを見た。

見ながら私は近所のあちこちに

『さがしています』の紙を貼る。

「猫を探しています。

 見つけたら下の電話番号まで」

と、書いてある。

私は猫を飼ってない。飼ったこともない。

私はキツネ寄りの犬派だ。


とあるレストランに入った人を追いかける。その人に近づいた。「キレイですね」

「えっ、ありがとうございます。

 これ、昨日ユミクロで買ったんです。

 わかりますか、スーパーの横の。

 反対にはガソスタもあります…」

うん、わかるよ。と私はうなずく。

そこのスーパーには何度も行ってる。

そこで流れてる音楽が魅力的で、

つい寄ってしまうのだ。


ふと、

子供がこっちに向かっているのがわかった。

2人だけの時間はそう長くはない。

紬(つむぎ)さーん。何してるの。

早くこっち来てよ、遅いよ。

紬さんの誕生日の話、開かせてよ。

約束したでしょ。今日の夕方に。

聞いてる?ねぇ。紬さーん。

「そんなこと言ったっけ私」

うん、言ったよ紬さん。

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