第19話 起床

 頭痛いな……。あれ、俺確か目が回って……。俺が横になっているところは自分の部屋のベッドだな。


「起きたか相棒」

けい


 横を見ると勉強机に座って宿題をしている慶がいた。よく見ると慶の頬に湿布が貼ってある。いったい何があったんだ?


「龍牙のことだが、行動を監視することにした。あれもこれも嫌と文句を言って監視も断っていたからさらに殴っといた」

「……そうか」


 俺が甘かったのかな。霊を食べるとは言っても、龍牙は人であり俺たちの弟だからと優しくも厳しくしていたけど、それがダメだったのかもしれない。


「相棒は間違ってねぇぞ。それにそのままの対応で続けろ」

「でも、もう難しいかもしれない。また約束を破られるかもって思うと」

「大丈夫だ。それによ」


 そう言って部屋の入り口を見る慶。廊下に気配がある。おそらく龍牙だろうな。


「おい、入ってこい」


 荒々しい声を上げる慶。

 しばらく待っていたが、入ってこない末っ子に慶がイラつき、椅子を倒す勢いで立ち上がり、ドアを思いっきり強く開けて龍牙を部屋の中に引きずり込んだ。

 慶が殴っといたと言っていたが、龍牙の口や鼻に絆創膏が貼ってありと、相当争ったのがわかるほどだ。

 龍牙が慶を睨んだが、一瞬で目をそらし、視線を下に向けた。


「あ」


 居たたまれなくなったのか、龍牙は俺たちの部屋から出て行った。


「あいつ」

「追わなくていいよ。強制的に謝罪をされても龍牙が反省してないと意味ないだろ?」

「相棒が言うならいいけどよ」

 

 今後しないためにも反省してからの謝罪が欲しい。けど、慶が言うように今後しばらくは監視が必要になる。


「それと、慶?」

「おう」

「イラついたからって、今後殴るの禁止」

「う……」


 兄弟喧嘩だとはしても、傍から見れば不良だと思われる。それは慶のためにもならない。


「そういえば、俺、気絶してからどれくらい眠ってた?」

「1日だな」

「1日か……」


 結構気絶していたんだななんてのんきなことを考えたが、学校を1日休んでしまったと考えると、相当やばいな。


「学校にはなんて?」

「体調崩したって言っといたぜ」


 外を見れば、もうすでに外は真っ暗だ。


「俺も宿題しようかな。あるよね」

「おぅ、あるぞ。その前におふくろと親父が下にいるから起きたこと伝えてこいよ」

「ああ、確かに。じゃあ1階行ってくる」


 気絶する前に聞こえた母親の声。相当心配しているだろうから安心させないとな。

 ドアを開けて廊下に出ると、階段から見て右奥。今は誰も使っていない部屋の前で龍牙が突っ立っていた。

 部屋を出て行って、階段を下りた音がしていなかったから部屋にでも行ったのかと思ったが、まさか突っ立っているとは思わなくて、肩を揺らしてしまった。

 

「おお、どうしたそこで」

「……なにも」

「そっか」


 そう答えて自室へと入っていく龍牙。何か思うことでもあったのだろうか。

 そう思いながら階下へ行く。居間で父親と母親がテレビを見ているのか音が聞こえてくる。


「母さん、お腹すいたんだけど、ご飯の残りある?」

「龍! もう起きて大丈夫なの?」

「もう平気。心配かけてごめんね」


 気絶する寸前に聞こえていた母親の声。それから相当心配していたのか、全身をくまなく見られているけど、俺どこも怪我してないよ。


「気絶しただけだよ、母さん」

「それはそうなんだけど」

「大丈夫。心配ありがと」


 俺が心配性なのは母さん譲りなのかもしれないな。


「母さん、俺お腹空いたな」

「今から温めるわね」


 そういってキッチンに向かう母親。今日の夜ご飯はなんだったんだろうか。料理が温まって出てくるのが楽しみだ。

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