第17話 事故? 事件?
俺の願いが届いたのか、それとも食べ終わったのか静かになった。
目を付けられていた何かはいなくなったが、変わりに別なのが俺を横から覗いている。
もしかして俺のことを食べようとしている?
見えていることがばれないように黒板と説明している先生だけを見ていたが、しばらく俺の周りを歩いて用事がすんだのか消えた。いったいなんだったんだ?
何事もなく授業が終わり、放課後。帰ろうとしたら龍牙も同時だったのか、3人で帰ることに。
相変わらず無表情だが、どこか嬉しそうだった。
「何か良いことあったのか?」
「少しね」
「そっか。龍牙が幸せなら俺はそれで」
兄弟や家族が幸せならその理由は何も聞かない。
「内容聞かねぇのか」
「うん」
「相変わらず兄弟ラブだな」
「別にいいだろ。つかそれにお前も入ってるんだからな慶」
「ありがてぇこった」
楽しく会話しつつ家まで帰っていると、人だかりができていて、その先にはパトカーや救急車が止まっていた。
「事故?」
「さぁな。ただ、車の事故ではねぇな」
車なら煙がぶつかった衝撃で煙が出ているだろうが、見ている限りはない。
「行こうぜ。見て同情したらついてくるからな」
「確かに」
目を付けられるのは今回限りにしてほしい。慣れているとは言っても神経がすり減るから疲れるんだ。
帰ろうと足を進めると、末っ子が隣にいないことに気付く。振り返ると、事故現場をなんの感情もないままじっと見つめていた。
何か思うことがあるのだろうか。それとも何も思っていないのかわからない。
「龍牙。帰るよ」
「ん」
「何かあった?」
「
興味ないモノにはさっさと見切りをつける末っ子。そそくさと帰っていく様子を見ながら俺らも帰ることにした。
帰り道はなんて事のない話をして帰るだけ。今日クラス内で何があったか。授業中何をしたのかっていうなんてことない話。
「ただいま」
「3人ともおかえり。帰り道大丈夫だった?」
家に帰ると母親が心配そうに俺らを見ている。テレビをつけっぱなしだったのか、この街で不可解事件が発生したとニュースキャスターが言っている。
「事故か事件かで警察と救急車がいたけど、俺らは特に」
「車の事故ではねぇなって話はしてたぜ」
「それならよかったわ。あ、良くはないわね。人が亡くなっているわけだし」
親が子供の心配をするのが普通だ。でも、亡くなった人は可哀想ではある。
「最近は物騒ね。学校では不審者が出たりとかあるのでしょう?」
「そうだね」
あとは霊がいたり、俺がストーカーまがいのことをされたりとか。
「ともかく手を洗っておいで。お義父さんからお煎餅が届いているわよ」
「よっしゃ!」
洗面所へ向かっていく慶。龍牙はすでに手を洗って自室に行っていた。いつのまに。
俺も手洗ってお煎餅食べるか。じいさんが送ってくれたのっていろいろと種類があって美味しんだよな。王道の醤油味とかワサビ味。あと、のり煎餅とか。
「お茶いる?」
「いる。煎餅にはお茶は必須だろ」
「はいはい」
フフッと笑ってお湯を沸かしに行く母親。俺も手伝うか。といってもコップを出すだけなんだけどな。
「おい、相棒。ニュース見てみろ。こいつ学校で張り出されてた不審者じゃね?」
「え?」
慶に言われてテレビを見ると、死亡したのは、この街で不審者が発生していたという情報とともに、紹介されていた中肉中背の黒い帽子を被っている男だった。
「本当だ。ということは、不審者を警戒しながら帰る必要がなくなったってこと?」
「そうなるな」
「何はともあれよかった」
慶用のコップを置き、お茶ができるのをこたつに入りながら待つ。
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