第54話 豹堂蜜羽と虎沢ばにらはフェチを満たすのである。

 ホワイトデーのお返しフェチ満たし、三人目、蜜羽。

 フェチ満たし要望内容――女児服ファッションショー。


 蜜羽(いつものスーツケース付き)と一緒に別室まで来て、私はふと思った疑問を口にする。

「……『撮影会』じゃないんですね」

「えッ!?」

 派手にビクッと反応する蜜羽。

 反応が派手過ぎてスーツケースも倒れた。

「え、あ……え、いいの……?」

「まあ……せっかくなので……あ、他の人には見せないでいただけると……」

「見せない見せない見せないあたしだけの宝物にするッ!」

 すごい勢いで言いながら、蜜羽はスーツケースをガパッと開く。

 出て来た衣装の数々を、私は順番に着ていく。

 一着目、ニチアサ女児向けアニメのキャラ物Tシャツ。

 高校生の年齢で着るのはちと躊躇いがあったが……普通のTシャツには変わりないので着ちゃえば気にならない。

 二着目、クマさん着ぐるみパジャマ。

 あ、これ可愛い……意外と悪くないぞ……でも上から下まで繋がってるタイプだからトイレの時困るな……。

 三着目、名門小学校っぽい感じの小学生制服。

 一応コスプレ品らしい……流石にこのためだけに制服を買ってるわけもないが……いや蜜羽ならギリやりかねんか……。

 と、まあ色々着てた私を見て、蜜羽は……。

「はわわわわわわわわわわ♡♡♡♡♡」

 バグっている。

 声も目もハートまみれでハァハァ息荒げ、スマホで写真をバシャバシャ取りながらバグっている……。

「ランドセルッ!! ランドセルあるからコレも背負ってッ!!」

「え、あ、はい……」

「リコーダーもッ!!」

「リコーダー!?」

 ここに来て新しいアイテム来たな!?

 とりあえず……持つけど……あと吹くポーズもしてあげるか……。

「それッ!♡ すごいすごいどっからどう見ても小学生ッ!♡♡♡」

 小学生制服+ランドセル+リコーダー……。

 うん……これで興奮しちゃうのは蜜羽……だいぶ犯罪だぞ……。

「やばいやばいやばい桃香さんが小学生すぎる……♡ あたしもうロリコンでいい……♡♡♡」

 ついに認めちゃったよ!!

 蜜羽散々今まで「同年代低身長女子フェチ」って誤魔化してたのについにロリコン宣言しちゃったよ!!

 取り戻せよプライドを!!

「ハァ……♡ ハァ……♡ あ、あのさぁ、桃香さん……♡」

「な、なんでしょうか」

「ちょ、ちょっとその格好でよォ――……『蜜羽お姉ちゃん』って言ってみてくれねェ――……?」

 今日の蜜羽ブレーキ無いな!?

 いやせっかくのホワイトデーだからいいけどッ!

「み……蜜羽お姉ちゃん……」

「お゛ッ♡♡♡」

 もはや写真を撮る余裕すらなく、涙目で口を押さえて興奮する蜜羽。

 私は先読みしてティッシュ箱を差し出した。

 荒々しくティッシュを箱から引っこ抜いた蜜羽は、ぐっと鼻を押さえる。

「……鼻血、出ました?」

「……出た」

「……あの、時間延ばしてもいいんでとりあえず鼻血止めましょう」

「おう……」

 流石にあと二人残ってるのに、部屋に鼻血垂らすのはちょっと……ね……。

 鼻血が止まるまで時間がかかりそうだったので、スイートルームのみんなに連絡し、蜜羽が落ち着くまで待ってから交代となった。


 ホワイトデーのお返しフェチ満たし、四人目、ばにら。

 フェチ満たし要望内容――膝枕耳掃除。


 意外だった。

 まさかの原点回帰。

 ばにらは、私と初めて出会った時に見せてくれた、あのジュエリーボックスのような箱を持ち込み、私と一緒に別室へ。

 箱を開け、あの時使った耳掃除グッズ一式を取り出す。

 そしてソファに座ると、耳かきを手に膝をぽんぽんと叩く。

「はーい、ももちー♡ おーいでー♡」

「あ、はい……失礼します」

 私もソファへ向かい、ばにらの横に腰掛けると、ゆっくりと、ばにらの膝に頭を乗せる。

 ばにらは私の耳に優しく手を添え、耳かきで私の耳を丁寧に掻き始めた。

 時にくすぐるように、時に適度な力を入れて。

 ああ……やっぱり気持ちいいな、ばにらの耳掃除。

「懐かしーねー。なんだかんだ、初めてあった時以来してなかったもんねー」

「そう言われると……そうですね……」

 ばにらの耳フェチ満たし手段が、基本的に耳触ったり耳にキスしたり耳舐めたりに移行したから……耳掃除はしばらく頼んでいない。

 というか自分でもしていない……結構汚かったりするかな……と、ちょっと焦る。

「ももちと結婚したらー、ちゃんと定期的にこーやってお掃除してあげるからねー♡」

「け、結婚……」

「考えてるんでしょー? あーしらとの結婚♡」

「ま、まあ……はい」

 割と直接的な表現は、恥ずかしくてあえてボカしてきたのだが……ばにら、滅茶苦茶ドストレートに言ってきた……。

 現状の法的に、いわゆるパートナーシップ的なもの、または事実婚的なものになるとは思っている。

 それは理解しているが、将来みんなとちゃんとした関係になりたいというのは事実だ。

「色々大変だと思うけどー、疲れた時はいつでもあーしに甘えていいからねー♡」

「……ありがとうございます」

 うん……まさかのイチャラブ耳かきタイム……。

 逆に想定してなかったぞこんなの……。

 その後、もう反対の耳も丁寧に掃除して貰い……前にしてくれた耳掃除用ローションとマッサージで仕上げ。

「あーい、完了♡」

「ありがとうございました」

「えーと……時間余っちゃったねー」

 ばにらに言われて私もスマホ時間を確認する。

 まだ一分以上ある。

「ねー、ももち」

 ばにらに声をかけられ、私はスマホから顔を上げる。

「キスしていーい?」

 おお……最終的にやはり耳キスに至るか……。

「あ、はい。どうぞ」

 私はキスしやすいよう、耳元の髪をかき上げ、ばにらの方に耳を向ける。

 ――が。

 ばにらは私の顎に手を添え、顔を前に向き直させると。

 私の唇に、そっとキスをした。

「……っ!?」

「えへへー♡ 耳だと持ってたでしょー?♡」

 フェチ偽装型不意打ちキス。

 そういうのも……あるのか……。

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