第50話 兎佐田桃香は愛の籠ったチョコを食べるのである。
あなたはバレンタイデーにチョコを貰う方だろうか。
私、兎佐田桃香は……去年まで友チョコぐらいしか配っていなかった。
しかし今年はッ!
恋人たちとバレンタインパーティッ!
みんなの愛の籠ったチョコを食べるのであるッ!
季節行事をやる度に何かと集まってイチャイチャしてばかりな気がするが……正直楽しいことは楽しい……。
しかも今回は恋人たちの一大イベントとも言えるバレンタインデー!
いや本当に……百合オタクだった自分がこんなリア充爆発しろな状況になるとは……。
人生どう転ぶかわからんな……いや転ぶってネガティブだな……むしろみんなに抱きしめられてる方向よな……うん……。
感慨に耽っている私だが、今日はまだバレンタインデー当日ではない。
今日は、バレンタインパーティの内容を決める企画会議の日だ。
「じゃ、どんなパーティにする?」
リコがメモ用のノートを広げながら意見を聞くと、早速ばにらが手を挙げる。
「ハロウィンから今日までそこそこ出費はしちゃったしー、やっぱ手作りで節約しながら愛情込めるー?」
げ……現実的……!
そうなんだよな……ハロウィンの材料の買い出しにコスプレ費用の割り勘、クリスマス旅行の時の旅費やお土産代……カラカルグループからの大盤振る舞いなサービスや、薫衣のカードの効果を含め、ある程度無料化・割引できているとはいえ……結構お金は出てしまっている……。
もしも一月の振袖がガチ出費だったら、私たちはとっくに(薫衣以外)破産しているだろう……。
それに毎回薫衣の力に頼るのも、あまりいい気はしない。
今回は年相応な規模のパーティにする……というのは全然構わない。
「ハロウィンの時の調理器具をまた借りれんならボウルとかはどーにでもなるけどよォ――、チョコの場合流し込む型とか必要にならねーかァ――?」
「そこはトリュフチョコにしちゃえばいいよ。確かアレ丸めりゃいいから型いらない」
蜜羽の問いに、桃黄子は答えつつスマホでレシピを検索して私たちに見せてくれた。
確かに、これなら型はいらない。
作り方も割と簡単そうだ。
「生チョコも、バットとラップあれば行けるね……材料も、ネットの簡単レシピだとトリュフチョコの中の部分とほぼ同じだし」
続けてリコもスマホで調べたレシピを紹介。
「チョコそのまんまばっかり作るのもアレだしさー、クッキーとかカップケーキも作んなーい?」
「それでしたら、ハロウィンの時に使った器具が使えますね」
ばにらと薫衣がさらに乗っかる。
うむうむ、ハロウィンパーティで手作りを経験しているから同じように……同じ……ように……。
「なんか……ハロウィンパーティのチョコレートバージョンみたいになってる?」
私が思いつつも中々口に出せなかったことを、リコが口に出してしまった。
いい感じに話が進んでる空気だったから言い出しにくかったのだが……。
とはいえ、みんなも「それな」と言いたげな表情をしていたので、みんな意見は同じだったようだ……。
ついでに言うと、ハロウィンパーティはコスプレという専用イベント要素もあった。
バレンタインデーでコスプレというのも変な話だし今回コスプレ無しになるだろうが……そうなるとハロウィンの時よりもさらに小規模な印象が強い……。
せっかくのバレンタインパーティだというのに……正直もったいないというか……もっと何か欲しいな……。
「もっと……バレンタインっぽいことしますか?」
特に何も思いついていないのだが……私は提案だけしてみた。
「バレンタインっぽいことかー……告白とかー?」
「いや、あたしら全員既に桃香さんと付き合ってんじゃあねーかよォ――」
ばにらの提案にすかさずツッコミを入れる蜜羽。
しかし……バレンタインデーと言えば告白、というのは確かにバレンタインらしさがある……というよりそれ以外無い気もする……。
「あー、でもアタシは桃香にちゃんと告白したことないし、アタシはそれアリかなー」
と、ばにらの提案に乗ったのは桃黄子。
「唐狩さんも、直接好きとは言ってないんだよね?」
「え、ええ……言うタイミングも色々逃してしまったといいますか……」
話を振られ、薫衣はちょっぴり恥ずかしそうに笑う。
そうだ……この二人はまだ直接私に「好きです」と言っていない……気がする。
もう感覚が麻痺してんだよな……足触らせてとか息頂戴みたいなフェチ満たしで十分二人の「好き」は伝わってるからな……。
「じゃあアタシと唐狩さんは改めて桃香に告白しまーす!」
「いやズルくねェ――ッ!?」
「アタシらの立場からしたら、先んじて桃香に告白してるそっちがずるいんですー、だ」
蜜羽と桃黄子がじゃれつき始めた横で、リコが顎に手を当てて考え……。
「じゃあ、全員改めて桃香に愛の告白しちゃう?」
と……すごいこと言いやがった。
いやリコ・ばにら・蜜羽から一回ずつ告白されてる経験あるけどさぁ!
ある程度間を置いてぶつけられた想いであってさぁ!
今回はたぶんパーティ当日中ほぼ連続で来るじゃん!
告白ガトリングガンじゃん!
「……えーと……そうなると私は全員に告白する感じですかね?」
告白ガトリングガンに備えて反撃の告白マシンガンを用意しておこうと、私はリコに確認する。
「んー……せっかくだし、桃香だけホワイトデーにお返し用のなんか企画しておいて欲しい感ある」
「私だけ!?」
告白マシンガン弾丸装填不可!?
無防備で告白ガトリングガンを受けろと!?
「わかるー、めっちゃわかるー」
「ホワイトデーに桃香さんからなんか返してほしい……ッ! すごく欲しい……ッ!」
「それに桃香さんは夏休みの終わりや体育祭でだいぶ負担の大きな告白をなさってますし……今回は受ける側に回ってもよろしいかと」
「あ、ホワイトデーの三倍返しは値段じゃなくて愛情でいいから。ただでさえ人数多いし」
うわぁしかもみんなその方向でノリ気だ!
あと桃黄子の「三倍返しは愛情でいい」ってのはフォローのつもりか!? 逆にプレッシャーがエグいぞ!?
「まー、そう難しい顔しないでよ」
眉間に皺を寄せて悩んでいた私の頭を、リコがぽんぽんと優しく叩く。
「みんなが桃香に色々気持ち寄せて、桃香がそれに応えてくれるっていう視点で見れば、結局いつも通りなんだから」
「それはそうかもしれませんけどぉ……」
ホワイトデーのお返し……どうしようかなぁ……。
さっき言われた通り派手な告白はもうしてるし……ピンキーリングでアクセサリープレゼントもしてるし……。
手作りお菓子……も、みんなでやってたとはいえ、実質ハロウィンでやってるようなもんだし……。
なんか新しいの……考えたいな……。
それから数日後。
バレンタインデー前日の放課後、私たちはいつものホテルのスイートルームへ。
今日のうちにチョコを作り、翌日のバレンタインデー当日、私にチョコを渡しながら告白大会をする運びとなった。
恋人たちがキッチンスペースで楽しそうにチョコを準備している声を背中に……私はソファに座って待機。
一応みんなで楽しむパーティなのだから私も手伝うと言ったのだが……もはや私の恋人たち、私のためにチョコ作る企画としか認識していない。
故に私にあげるチョコを私が手伝うのはなんか違うだろう、ということになり……手持ち無沙汰な感じのまま私はソファでそわそわしている。
……女の子たちが五人も集まって私ひとりのためにチョコ準備してるって……すごい……ドキドキするな……。
しかも明日、告白ガトリングガンが私を狙ってるんだよな……。
耐えきれるのか……私……?
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