第20話 大賞のお知らせ

数日が過ぎたある午後。

郵便受けの中に、厚みのある封筒が入っていた。

差出人には——絵本大賞事務局の文字。


「……えっ。」

いろはの心臓が一気に跳ね上がる。指先が震え、思わず封を開いた。


——「佳作に選ばれました。授賞式にお越しください」


大きな文字が視界に飛び込み、息が止まった。

「お母さん! ねいろ!」

駆け込む声に、ようことねいろが振り向く。


「え? え? なに?」

「ほらっ……! 佳作だって!」

差し出された紙を見て、ようこが口元を押さえ、ねいろが目を丸くする。


「ほんとに……いろは……!」

「すごいじゃん! やったじゃん!」


声が重なり、リビングに拍手が広がる。

胸の奥がじんわり熱くなった。

(つづり……聞こえてる?)

心の中でそっとつぶやく。

手にした紙が、彼との約束の証のように見えた。

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