第5話 詳細まとめ

 というわけで、これが俺が余命一年と宣告されたときのことだ。あれから半年が経った。

 すごいよな、ハッピーモードいえーい! と浮かれた次の瞬間に一家離散だったもんな。幸せな家族が崩壊するところを見てしまった。

 まとめるとこんな感じだろう。まずは魔法について。


・ここは異世界で魔法がある

・この国では赤子に魔力鑑定を行うが、俺の魔力が異常

・魔力が大きすぎる+赤子なのにその魔力が発現してしまっている

・魔力が発現した赤子は生後一年以内に魔力の暴走が起こる

・俺の魔力が大きすぎるため、もし魔力の暴走が起こればただでは済まない


 つまり、俺は余命一年な上、この国の災禍になりかねない爆弾だということだ。しかも、いつ爆発するかは不明。

 地球で言えば、核兵器がそこにあって、そのスイッチはなにもわかってない赤子が握ってるってところかな。

 うん、そりゃ、あの司教が取り乱したのは無理もない。

 父が俺を母から引き離したのも当然だろう。

 俺の魔力が暴走したら、母の身が危険だからな。

 次に、俺の家族についてまとめる。


・うちは公爵家。やんごとなき家系

・父は国の要職に就いており、さらに世界一の魔法の使い手でもある

・父と母は俺が生まれるまでは仲睦まじかった

・父が俺を連れ去ったことで、母は気に病み、父とは没交渉になったらしい

・父は母には俺が死んだと伝えたようだ


「ふぁふぁ……」


 パパよ……なぜそんな悪役に……。

 いや、でもわかる。これは父が必死に俺を守ってくれているからだ。

 俺の魔力暴走による災禍を免れる唯一の方法。それは俺の魔力が暴走する前に――俺の命を絶つこと。

 核兵器のスイッチを赤子が持つなら、赤子がスイッチを押す前に亡き者にすればいいのだ。

 で、母にはそれをしたと告げたんだろうな。母に言ったということは、もはや対外的には俺はいないものになっているはずだ。

 あまりに魔力が強すぎる赤子。しかも魔力がすでに発現していた。今後のことを加味し、父が自ら我が子を殺した、と。

 そして、世間はそんな父を氷の死公爵と噂している。


「ふぇー……」

「っどうされました? なにか苦しいことが?」


 思わず、悲しみの声をこぼすと、俺を抱いていたメイドはあたふたと焦る。

 このことを考えると、いつも胸が苦しくなるのだ。俺を守るために父はすべてを背負ってくれている。

 仕えている国を裏切っても、最愛の妻に恨まれても、世間に云われない石を投げられても、それでも、俺の命を守る道を模索してくれた。

 おかげで俺も生後半年。割とすくすく育っている。


「ライルード様、私はいつでもそばにおります。ライルード様の最期のとき、この身も必ずお供いたしますから」


 メイドは俺をあやすように揺らしながら、呟く。

 ……いや、だからふおーん。不穏! 赤子をあやす言葉じゃないから、それ!

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