第3話:ニート、少しだけ見直される
「ふぅ……」
森を抜けて街道に戻った俺たちは、ひとまず大きく息をついた。
初めての討伐依頼は、どうにか成功に終わったらしい。
「お疲れ!」
ライラが背伸びをしながら笑う。
「眠、よくやったじゃないか!」
「……いや、俺、転んで石投げただけだぞ?」
「結果は結果だよ。あれで一体仕留めたんだ。立派なもんさ」
快活なライラは、意外と褒め上手らしい。
調子に乗りやすい俺は、思わず頬が緩んだ。
「ふん、まぐれに決まってるでしょ」
ミリアが腕を組んでそっぽを向いた。
「でも……まあ、足手まといじゃないだけマシね」
「そ、そんな言い方しなくても……眠さん、ちゃんと頑張ってましたよ」
ユナが小声でフォローしてくれる。
僧侶はやっぱり優しい。
(なるほど……この三人、性格はバラバラだけどバランスいいな)
俺は一人で納得しながら、街へと歩き出した。
◆
夕暮れ時、ギルドの扉を押し開ける。
冒険者たちでごった返す中、俺たちは真っ直ぐ受付へ向かった。
「依頼達成です。ゴブリン三体を討伐しました」
ライラが袋に入れた魔石をドンとカウンターに置く。
受付嬢が驚いた顔をした。
「まあ……! 本当に討伐できたんですか?」
「はい。証拠もありますし」
ユナがこくこくとうなずく。
「ふふ、意外とやるのね」
ミリアがこちらをチラッと見てくる。
そのとき、背後から野次が飛んだ。
「おいおい、本当に戻ってきやがった!」
「ニートがゴブリン倒したって? ははっ、信じられるかよ!」
「きっと女たちが全部やったんだろ!」
周囲の冒険者たちが大爆笑。
テーブルを叩いて笑う奴までいる。
(……くっそ。こいつら、マジで笑いすぎだろ)
悔しいが、事実、俺は転んで石を投げただけだ。
反論できない分、余計に恥ずかしい。
「うるさいな!」
ライラがドンとカウンターを叩いた。
「依頼はちゃんと達成したんだ。笑いたきゃ勝手に笑え!」
「そ、そうですよ! 眠さんだってちゃんと役に立ちました!」
ユナも必死に庇ってくれる。
ミリアは腕を組んで、冷たく言い放った。
「まあ、役に立ったのは事実よ。あれで一体倒したんだから」
三人の言葉に、少し胸が熱くなった。
(……なんだよ。意外と優しいじゃん)
受付嬢が報酬袋を差し出してくる。
「はい、こちらが今回の報酬です。お疲れさまでした」
中には銀貨が数枚。
俺にとっては見慣れない通貨だが、三人は慣れた手つきで分配を始めた。
「これは経費、これは食費……んで残りを四等分だな」
ライラが器用に計算していく。
俺は渡された銀貨を受け取りながら、妙な感覚にとらわれていた。
(俺……初めて働いて金もらったんじゃね?)
ニート時代にはあり得なかったことだ。
なんだか少しだけ、胸が誇らしくなった。
◆
依頼を終えてギルドを出ると、夜風がひんやりと肌を撫でた。
街の灯りがあちこちで揺らめいている。
「今日はここまでにしよう。宿に戻るぞ」
ライラが言うと、ミリアが頷いた。
「明日はもっと難しい依頼を受けるんでしょう? 休養は大事ね」
「そ、そうですね……。眠さんも、ゆっくり休んでください」
ユナが微笑んでくる。
「……ああ、そうする。俺、寝るのは得意だからな!」
そう答えると、ライラが大笑いし、ミリアが盛大にため息をつき、ユナが「ふふっ」と笑った。
なんだかんだで、悪くない一日だった。
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