第3話:ニート、少しだけ見直される

「ふぅ……」


森を抜けて街道に戻った俺たちは、ひとまず大きく息をついた。

初めての討伐依頼は、どうにか成功に終わったらしい。


「お疲れ!」

ライラが背伸びをしながら笑う。

「眠、よくやったじゃないか!」


「……いや、俺、転んで石投げただけだぞ?」

「結果は結果だよ。あれで一体仕留めたんだ。立派なもんさ」


快活なライラは、意外と褒め上手らしい。

調子に乗りやすい俺は、思わず頬が緩んだ。


「ふん、まぐれに決まってるでしょ」

ミリアが腕を組んでそっぽを向いた。

「でも……まあ、足手まといじゃないだけマシね」


「そ、そんな言い方しなくても……眠さん、ちゃんと頑張ってましたよ」

ユナが小声でフォローしてくれる。

僧侶はやっぱり優しい。


(なるほど……この三人、性格はバラバラだけどバランスいいな)


俺は一人で納得しながら、街へと歩き出した。




夕暮れ時、ギルドの扉を押し開ける。

冒険者たちでごった返す中、俺たちは真っ直ぐ受付へ向かった。


「依頼達成です。ゴブリン三体を討伐しました」

ライラが袋に入れた魔石をドンとカウンターに置く。


受付嬢が驚いた顔をした。

「まあ……! 本当に討伐できたんですか?」


「はい。証拠もありますし」

ユナがこくこくとうなずく。


「ふふ、意外とやるのね」

ミリアがこちらをチラッと見てくる。


そのとき、背後から野次が飛んだ。


「おいおい、本当に戻ってきやがった!」

「ニートがゴブリン倒したって? ははっ、信じられるかよ!」

「きっと女たちが全部やったんだろ!」


周囲の冒険者たちが大爆笑。

テーブルを叩いて笑う奴までいる。


(……くっそ。こいつら、マジで笑いすぎだろ)


悔しいが、事実、俺は転んで石を投げただけだ。

反論できない分、余計に恥ずかしい。


「うるさいな!」

ライラがドンとカウンターを叩いた。

「依頼はちゃんと達成したんだ。笑いたきゃ勝手に笑え!」


「そ、そうですよ! 眠さんだってちゃんと役に立ちました!」

ユナも必死に庇ってくれる。


ミリアは腕を組んで、冷たく言い放った。

「まあ、役に立ったのは事実よ。あれで一体倒したんだから」


三人の言葉に、少し胸が熱くなった。

(……なんだよ。意外と優しいじゃん)


受付嬢が報酬袋を差し出してくる。

「はい、こちらが今回の報酬です。お疲れさまでした」


中には銀貨が数枚。

俺にとっては見慣れない通貨だが、三人は慣れた手つきで分配を始めた。


「これは経費、これは食費……んで残りを四等分だな」

ライラが器用に計算していく。


俺は渡された銀貨を受け取りながら、妙な感覚にとらわれていた。


(俺……初めて働いて金もらったんじゃね?)


ニート時代にはあり得なかったことだ。

なんだか少しだけ、胸が誇らしくなった。




依頼を終えてギルドを出ると、夜風がひんやりと肌を撫でた。

街の灯りがあちこちで揺らめいている。


「今日はここまでにしよう。宿に戻るぞ」

ライラが言うと、ミリアが頷いた。


「明日はもっと難しい依頼を受けるんでしょう? 休養は大事ね」

「そ、そうですね……。眠さんも、ゆっくり休んでください」

ユナが微笑んでくる。


「……ああ、そうする。俺、寝るのは得意だからな!」


そう答えると、ライラが大笑いし、ミリアが盛大にため息をつき、ユナが「ふふっ」と笑った。


なんだかんだで、悪くない一日だった。

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