第7話
思いの程この国の女というものは力がつよいらしい。いや、僕が弱いのか、或いはあの時引っ張って来たもう一人のヨナコという女がそうなのかもしれないが。しかしテルと名乗ったもう一人の力も強かった。筋肉の強さというよりは、どこか体の使い方などの気もするが、さすがの紳士である僕でも二人に引っ張られては、いやというより、リリエンタールを名乗るものとしてあまりにも強引に好意を断るわけにはいかない。そうだ、これはあくまでアリステイル・リリエンタールとしてのものだ。そう言い聞かせながら彼女たちについてゆく。
彼女らが歩き進めると、しばらくして目的地である澪車家の屋敷が見えてきた。
澪車家というのは商人の家系である。かの家系は、はるか昔水場近くの小さな商いから始まったと伝記に記されている。曰く、かの者は水を運んでくるものであった。その時水場というも のは皆の共有すべき在であった。しかして、とある日に事件が起こった。大きなる山の神がいたずらにも龍を呼び出しその近くの村の多くを攫って行ったのだ。そこでとある男がその山の神を沈めた。以来水に関する仕事を任せられ、周りの者からこう呼ばれた。
澪の者と。
しかしてあくまでこれは誇張された作り話である。澪の一族はいたがこの話や龍に関しては伝承程度との話もある。しかして澪の一族というものは、時折才覚あるものが現れるのだ。その例として約幾代にわたり澪の一族は運送業や、商い、そして一部貿易系統にまで家業を発展させ、先々代目 の時に帝や貴族相手の商いをしたことまである。そのことがあるのだろうか、いつからか車の字まで加わり澪車と名乗るようになる。
そのため商人と言えども澪車だけはこの地においては別格であり大きな屋敷を有していた。そして現当主の娘である照は使用人に下がるように命じる。彼らはいつものような顔色で引き下がる。皓伝屋との関わりであったり、照という人物のこともあり、何も疑問にならないのであろう。そうして二人は奥の間へと通された。
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