カドゥンラル・スルタンルウ〜ヌール・バヌ・スルタン〜ヴェネチア貴族の少女・セリムニ世の妻

のの.まゆたん@病持ち返信遅めXも✿感謝

第1話

トプカプ宮殿の中にある広い後宮の一室

時代はオスマン帝国の繁栄期、スレイマン大帝の時代


「はい、セリム皇子様…葡萄酒ですわ」

誰より綺麗な寵姫がゴブレットに赤い葡萄酒を注ぐ


「あ、ありがとう、僕の可愛いヌール・バヌ」

「父上、母上には内緒だよ…まぁ、本来ならイスラムでは酒は禁止…薬としての飲酒ならね」


「そうさ、薬だよ、薬…酒を愛した者達は多い」


「ええ、心得ておりますわ…父君のスレイマン大帝に母君のヒュレッカム皇后様…うふふ」


「一杯だけですもの、くすくすっ」


セリム皇子は自分の金色の髪に手をやり

頭を軽くかいた後で

満面の笑みでゴブレットの酒を飲み干す

「明後日には異母兄のムスタファ皇子が遠征から帰るのか」

「そうですわね」

「まぁ、異母兄のムスタファ皇子は良い兄、人格者でこんな私でも、優しくしてくれる」

「陛下…」



「……」何か言いたげに上目遣いで

セリム皇子は寵姫のヌール・バヌを見る。


「今日は皆さまとご面談のご予定がありますから、皇子、でも…」

「でも…?何だいヌール・バヌ?」

「…夜、夜伽前にお薬の葡萄酒をお持ち出来ますわ、殿下」

「ああ、なんて素敵なんだ!愛しているよ」

「うふふ、皇子様」

抱きつかれて、彼女はまた…くすくすっと笑うのだった。


気がつけば、もう後宮の寵姫としての暮らしに

馴染んでいた。


相手は酒好きだが、優しい皇子に愛され…


彼女は生まれはイタリア、ヴェネチアの名門貴族だが、庶子(正式な婚姻以外の子供)だった。

ただの政治の駒として、悪評高い年老いた貴族の男の再婚相手になるはずだったのだか…



◇ ◇ ◇

後宮(ハーレム)に居る、奴隷の寵姫の一人

後のヌール・バヌ・スルタン



※伝承ではイタリアのヴェネチア共和国の貴族の娘

チェチーリア・ヴェニエル・バッフォ


そうして彼女の伯父ですが

後々にヴェネツィア共和国の元首(ドージェ)

セバスティアーノ・ヴェニエルだとも言われる


彼女は1537年前後にエーゲ海のパロス島にて

オスマン帝国海軍に捕まり

奴隷として彼女はイスタンブールの後宮(ハレム)に送られたと言われています。


※庶子の御話などフィクション含みます

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