閑話2 旅の途中のアレコレ2

日が傾き始め、そろそろ夜営することに。


「しかし、現地調達が多いんだな、街間の移動中の食事類って」


指鳴らして(詠唱の代替行為)集めた薪を着火しながらそう零す。


川沿いの道のため、魚を釣りにリエルとステラ、ミレイユやエレスティアが行っており現在不在である。


「こういう食材が取れる場所だとそうなりますが……荒地や砂漠などを通る時は食料や飲み物をそれなりに用意が必須ですな。故に御者も客もアイテムバッグや収納スキルが無いと食事には苦労しますよ」


そういいつつパンやチーズ、ソーセージや干し肉などを取り出すマルスケさん。


ソレ自分の分だけなんだろうか……。


「せっかくだし、米使う? 私の方から出すから」


「ソイツはいいな。あっちの焚き火あとを使ってくれ。こっちは魚焼いたりで使うだろうし、鍋モノのために焚き火いくつもひしめき合わせるのはよくないからな」


ユエの言葉に別の焚き火あとを示すと頷くユエ。


そちらに移動すると土鍋や米びつを取り出して、生活魔法のクリエイトウォーターで米入れた土鍋に水を注ぎ、火にかけた。


「カップル揃って収納技能持ち……しかもかなり収納量あるようですな……」


目をぱちくりさせるマルスケさん。


「……まだ戻ってくるまで時間ありそうだし、こっちはこっちでスープでも作りますかね。……あ、火を使う予定あるなら先どうぞ」


「では、少しソーセージを炙らせて貰いましょう」


串にさしたソーセージを炎に当てて炙り出すマルスケさん。


その間に料理スキルから作りたいモノ――今回は野菜と肉のスープかを選んで素材候補がピックアップされたストレージから選択。


マルスケさんが炙り終えたのを確認したら料理スキルの指示通りに料理していく。


……コンソメの元がアイテムにあるが、コレもそれなりにあるから問題ないか。


個人的には昆布とカツオ節で引いた出汁のシンプルな豆腐多め、ワカメそこそこの味噌汁がほしいところだが――。


「カイト、こっちで味噌汁作るからソッチはそのままでよろ」


「オーケー」


出来た嫁過ぎて怖いなぁ(ゲーム上とはいえ十年付き合いあればこうなる……のか?)


等と会話してたら、ミレイユたちが戻ってきた。


「全然釣れなかったのじゃ……」


「途中でキレて爆破魔法発動させたからですよ。無理やり止めて被害抑えましたけど、音で逃げたようです」


「なにやらいい匂いが……」


「ユエ殿の方でもそそる香りがしますね……」


4人が戻ってきた。


「マルスケさんもパンやチーズ、ソーセージ山分けしてくれるならこっちのスープとウチのパンとか山分けするけど……」


ストレージから全員席に着けるテーブルや人数分の椅子、食器類を出し、白パン類をいくつか食器にのせる。


「! よ、良いので?」


いい反応だ。


「持ちつ持たれつってことで1つ。もし申し訳ないとか思われたなら、マルスケさんの御者経験をいくつか語ってくれれば酒の肴になるかなって」


ついでに酒を取り出すとマルスケさんの目が光る。


「ずいぶんと良い酒と見受けしましたが……ええ、ええ、私の失敗談など、酒の肴になるなら喜んで」


自分の代わり映えしないパン等を(おそらく自分の1食分)山分けしたら明らかに高級な食材を使ったスープや酒などにありつけるとなればそうなるのかもしれない。


ついでにユエは炊いたご飯をおにぎりにしてる。


「おにぎりと味噌汁……私たちの故郷ではパンとスープと同じポジションの料理は、ほしいひとセルフサービスで」


小山のように積まれたおにぎりと鍋が真ん中に置かれる。


エレスティアやミレイユ、リエルやステラも席に着く。


オレは手を合わせていつも通りに。


「――では、いただく命に感謝を込めて、いただきます」


「「「いただきます」」」


当たり前になってるユエに、数日でユエに?躾けられたミレイユ、エレスティアもそれに続いた。


「ふむ? 聞いたことない挨拶ですな……しかし、食事のありがたみを忘れさせぬ良いモノです。どれ、私も――いただきます」


マルスケさんもそう頷いて倣ってくれた。


そしてオレたちがリエルを見るとワタワタしたあと


「い、いただきます!」


と慌てて手を合わせてそう告げた。


「とりあえずこっちのおにぎりや味噌汁は気になるなら言ってくれれば渡すから」


そうユエが告げてオレが頼むと頷いて2つほどおにぎりを皿に乗せて渡し、その後に木の御碗に味噌汁をよそって渡してくれた。


おにぎりを一口食べる。


シンプルな具のない塩おにぎり。


うん、美味い。


米無いと調子でない……訳では無いが、オレのソウルフードだなと思いつつ、味噌汁を一口。


汁だけだが、しっかりとした味噌と出汁の味が舌に染み込み、それぞれの香りが鼻の中を満たす。


「流石ユエ。米の硬さもいい塩梅だし、味噌汁も美味い」


「カイトの好みはバッチリ」


サムズアップするユエ。


「……妾も食べてみたいのう」


「ん、とりあえず味噌汁の具はソッチのスープと同じように匙で掬うといい」


リエルの言葉にユエが頷くと


「わ、私も」


「自分もいいですかな?」


「食べてみたい!」


「私も機械ですが、消化能力あるので、お願いできますか?」


と全員がお願いし始める。


オレはユエに目配せしておにぎり配布を担当し、ユエに味噌汁を任せる。


「……ほう、これはこれは」


「不思議な味じゃのう。もう一杯!」


「具を丸のみしてるよこのお貴族様……」


「ふむ……米の中に混ぜたりできそうですね?」


「これは……良いモノです。おにぎりとやらをおかわりお願いします!」


そんなこんなで賑やかな食事の時間は過ぎていくのであった……。

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