Kitten's Gardenへようこそ♪︎
まえがき
シリアスはここまでだ!
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「いらっしゃいませ……あら、可愛いお客さん」
「こ、こんにちは……」
「こんにちは♪︎ これはうちの
お姉さんに連れられてやってきたのは、猫カフェ『Kitten's Garden』。あまり人の目に付かないような裏路地の先にあったお店だ。
中に入ってすぐ迎えてくれたのは、これまた綺麗なお姉さん。灰色の髪に白のメッシュが入った珍しい髪色で、顔付きは日本人ではなく外国人っぽい。
そんな彼女は、僕を笑顔で迎え入れてくれた。
「この子ね、何か嫌なことがあったんだって。放っておけなくて連れてきちゃった」
「そうなの……なら、可愛いネコちゃんが癒してくれるここはぴったりね♪︎」
「あっ、えっと……」
そうして、よく分からないまま僕は奥の部屋へと連れていかれる。
「あの、僕はどうすれば……」
「ネコちゃんの方から来てくれると思うから、もう全部お任せして寛げばいいわよ♪︎」
「オレンジジュースでいいかしら?」
「えっ……あ、あの…お金持ってないです……」
「大丈夫、今回はサービスだから♪︎」
そう言い残して、僕を連れてきたお姉さんと外国人のお姉さんは部屋を出ていってしまった。
後に残された僕は、とりあえず近くの座椅子に座りつつ、部屋の真ん中にある大きなキャットタワーへと視線を移す。
僕の背よりも遥かに高いそのキャットタワーからは、何匹ものネコが僕の様子を伺っていた。
「えっと……向こうから来てくれるって言ってたけど……」
怖がってるのかな……と頭の片隅で考えつつ、こちらを眺めているネコと見つめ合う。
すると───
「……」
「あっ───」
トン───と軽やかにキャットタワーから飛び降りたロシアンブルーのネコが一匹、僕の方へと近づいてきた。
とっても綺麗な毛並みで、どこか上品な雰囲気さえ纏うそのネコは、しばらくフンフンと僕の手の匂いを嗅いでいたと思ったら、気を許したのかそのまま頭を擦り寄せてきた。
「撫でろってことなのかな……」
なんとなくそう感じた僕は、ロシアンブルーのネコの頭を慣れない手付きで撫でてみる。
すると……
「ゴロゴロゴロゴロ……」
「わっ……」
気持ちよかったのだろうか。目を細めてその場にゴロンと寝転がったそのネコは、ゴロゴロと喉を鳴らしながら俺の手に頭を擦り付けてくる。
温かくてふわふわで、とても気持ちいい。
「ニャ~……」
「ナゥー……」
「わわっ、こんなに……」
そんな僕とロシアンブルーの様子を見て気を許したのだろうか。他のネコ達も徐々に集まりだし、自分も撫でろと言わんばかりに鳴き始める。
お姉さんの言った通り、ネコの方から集まってくれたようだ。
急に群がられて少し困惑しながらも、ネコ達に気に入られて嬉しい気持ちでいっぱいだ。
「……ニャッ」
「んっ……!?」
その中の一匹……メインクーンであるがゆえに特に身体の大きな一匹が、僕の上に上ってきた。
他のネコと比べてずっしりと重く、僕の膝の上に座るとちょうど視線の高さが合うぐらいだ。
「……」
「えっと……ひゃわっ……!」
数秒間僕と見つめ合っていたメインクーンは、おもむろに僕の首元へと顔を近づけて匂いを嗅いできたのだ。
ふわふわな体毛と長い髭が首筋を擽り、思わず変な声が出てしまう。
手で撫でるならともかく、こんなに近くまで来られると僕はどうすれば……。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、満足げなメインクーンはそのままもたれ掛かるように僕に身体を預け、ゴロゴロと喉を鳴らし始める。
……これは、抱き締めてもいいのだろうか……。
リラックスした様子のメインクーンを驚かさないように、ゆっくりと両手をその背中に回し、抱き締めてみる。
「ゴロゴロゴロゴロ……」
「~~……」
……暖かい。
こんな風に誰かを抱き締めたのはいつぶりだろうか。
思えばお父さんともお母さんとも、こんな風に抱き締めたり抱き締められたりはしばらく無かった。
僕は仕事をしているお父さんやお母さんのことが好きだし、邪魔をしたくないと思って随分長い間『甘える』なんてことはしていない。
でも本当は───
「あれ……?」
「ニャゥ……?」
気付けば僕は、メインクーンを抱き締めたまま涙を流していた。久しぶりに感じた温かさに、ずっと抱えていたものが溢れたのだろう。
「お待たせ……えっ、どうしたの……!?」
「あっ、うっ……これはっ、その……!」
ちょうどそのタイミングでやってきたのは、オレンジジュースを持った最初のお姉さんだった。
メインクーンを抱いたまま泣いている僕を見て驚いたのか、オレンジジュースのコップを近くのテーブルに置き、慌てて僕の側へと寄ってくる。
「大丈夫? うちのネコちゃんが何かしちゃった……?」
「なんでもない、です……んっ……なんだか色々と我慢できなくてっ……」
「……そっか。いっぱい泣いてもいいよ? ここにはネコちゃん達しかいないから───」
僕の胸の中にいるメインクーンは、泣き出した僕に驚くこともなく、むしろ慰めるかのように頬を舐めてくる。
ただ側に居てくれるだけの温もりがやけに嬉しくて……
涙が収まるまで、僕は優しいネコ達を抱き締めるのだった。
♢♢♢♢
「側に居てくれてありがとう……君も、ね?」
「ニャッ」
「ナゥ~」
僕が泣き止むまでずっとおとなしくしてくれていたメインクーンの子とロシアンブルーの子にお礼を言いつつ、その頭を撫でる。
二匹とも、まるで僕の言葉が分かっているかのように返事をし、ゴロゴロと喉を鳴らして気持ち良さそうだ。
喉が渇いた僕は、氷が溶けて少しだけ薄くなったオレンジジュースを飲んで喉を潤しつつ、そろそろ帰ろうかと立ち上がる。
その時だった。
「あっ……」
僕のポケットから落ちたのは、クシャクシャに丸められた紙。意地悪なクラスメイトから色々なことを書かれた紙だ。
嫌なことを思い出してしまった僕がそれを拾うより早く───いち早く反応したのは、周りのネコ達だった。
「っ……!」
「あっ、ちょっと……!」
僕のポケットから落ちたそれを、オモチャか何かだと思ったのだろうか。
ベシッと前足で一度叩き、床を転がるそれを嬉しそうに追いかけ、しまいには口で拾い上げて走り出してしまったのだ。
「あっ、うぅ……」
追いかけようにも、時すでに遅し。
丸めた紙を加えたネコは軽やかにキャットタワーを越えると、そのまま奥の部屋……『従業員専用』と書かれた扉の下の方にあるネコ用の出入り口から、中へと消えていってしまったのだ。
さらにそれを追って、数匹のネコ達が部屋の中へと駆け込んでいった。
「ど、どうしよう……」
後に残された僕は呆然だ。放っておくわけにもいかないし、ネコが間違えて食べてしまったら大事件。
かといって、店員のお姉さん2人は見当たらないし……いたとしても
「……取り返すだけだから……」
そう自分に言い聞かせ、僕は『従業員専用』と書かれた扉に手をかける。
怒られたら、素直にその時は謝ろう。今までだってそうやって───
そう考えて、僕は思いきって扉を開け部屋の中へと足を踏み入れる。
「あの、すみませ───えっ……?」
「これって───あっ」
「ヤバッ……!」
そこには僕が想像していた光景はそこにはなく───むしろ想像を絶する光景がそこには広がっていた。
入っていたはずのネコはそこには見当たらず、なんと、なぜか猫耳と尻尾とメイド服を着けているすっごく綺麗なお姉さん達が何人も集まって、丸められていた紙を覗き込んでいたのだ……!
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