第18話:妹の挑戦!屋台で一人営業した結果

昼前。

屋台の前でユウタが腕を組む。

「ちょっと村の外に用事ある。今日はお前に任せる」

「……はぁ!?私に!?」

「たまには経験積めよ。どうせ毒舌で文句言うだけよりマシだろ」

「むっ……言ったわね」


妹はぐっと拳を握る。

「わかったわ、完璧にやってみせる!」


姉はにこにこ。

「まぁ!妹ちゃんの初挑戦ですね!」

「姉さまは応援してるだけでしょ!!」


屋台の前に村人たちが集まる。

「今日は妹様が焼かれるのか!」

「供物の新時代だ!」

「いやだから“焼かれる”じゃなくて“焼く”!!!」(妹)


鉄板にタネを流す。

――ジュワッ!

湯気と共にいい香りが漂う。


「……やればできるじゃない」

妹がドヤ顔になった瞬間。


くるっ、と回そうとした玉杓子が滑る。

ぐちゃぁ……鉄板がベチャベチャに。


「……え?」

「失敗したぁぁぁ!!」


村人大喝采。

「失敗供物だ!」

「神は寛大だぁぁ!」

「ふざけんなぁぁぁぁ!!!」(妹)


さらに。

ソース壺を傾けすぎて――ドバァッ!

鉄板の上が池状態。


バチバチッ!

炎が走り、屋台が火柱に包まれる。


「ぎゃああああ!!」

村人たちは土下座。

「妹様が呪術の炎を呼んだぁぁ!」

「聖なる浄化だ!」

「違うわぁぁぁぁ!!!」


そこへ帰ってきたユウタ。

「……お前、何分で屋台戦場にした?」

「しょ、しょうがないでしょ!初めてなんだから!」

「初めてでも火事は起こさないだろ普通!」


姉が慌てて間に入る。

「でもでも!ほら、味は……」

一粒つまむと――意外とカリッ。中はとろっ。


「……え?」(妹)

「うん、美味しいですわ!」(姉)


ユウタも一口。

「……お、悪くないな」

妹は真っ赤になって俯いた。

「べ、別にアンタに褒められてもうれしくないんだから!」


その夜。

三人で鉄板を囲み、静かに焼き直す。

ユウタは小さく笑った。

「……まあ、焦がしながらでも成長すりゃいい」


炎に照らされる妹の横顔は、少しだけ誇らしげだった。

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