第4話:屋台で歌い出すカラオケ回



「……え、カラオケ?」

目の前で村長が木の枝を握りしめ、熱唱している。

火を灯した松明をマイク代わりに。


「ソォォスをくれぇぇぇぇぇ!!!」

声量がやばい。火柱まで揺れてる。


……なんで俺の屋台で歌ってんだよ!?



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事の発端は昨日のタコモンスター騒動。

「屋台は呪術の舞台だ」と噂が広がり、今夜は村中が集まった。

で、ひとりがこう言った。

「この板は“歌”を捧げる祭壇なのでは?」


……いや、鉄板は焼くもんだから!

歌う板じゃねぇから!!



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【誤解コメディ】発動。


「おぉ!熱を帯びる鉄板は、声を増幅するのだ!」

「ならば歌え!我らの声を供物に!」


次々と村人が屋台に立ち、意味不明な替え歌を披露。

「たこ焼き一丁〜♪」

「ソースましまし〜♪」


しまいには神様まで混じってきた。

「腹が減ったぞぉぉ!オレの愛を歌にのせる!!」


夜空に響く爆音カラオケ。

村が揺れる。鉄板も揺れる。俺の鼓膜が死にそう。



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耐えきれず、俺も叫ぶ。

「はい、3杯目ええええ!!」


……場が静まった。

次の瞬間、爆笑と拍手。


「呪文きたぁぁぁぁ!!」

「聖なるコールだ!!」


なんでだよ!?俺の決め台詞が宗教化してるじゃねぇか!!



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【ギャグ爆発シーン】

盛り上がりすぎて屋台がグラグラ。

鉄板がズルッと滑り落ち――


――ズドォォォン!!

鉄板の上のたこ焼きが大爆発!


ソースが噴水みたいに村人たちへ降り注ぐ。

「ぎゃああああ!」「甘じょっぱい呪いだぁぁ!!」

村はソースまみれ、夜祭は完全カオス。


俺は頭を抱える。

「……これ、俺いつからカラオケ屋台になったんだよ」



---


ふっと、静けさの中で。

『兄ちゃん……歌ってよ』


……弟の声。

ベッドの上で、笑いながらせがんできたあの声。

音痴でも、俺が歌えば笑ってくれた。


「……しゃあねぇな」

夜空を見上げ、小さく口ずさむ。

「たこ焼き一丁〜♪」


鉄板の灯が、まるで弟の笑顔みたいに揺れた。



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