第4話 中二病VS中二病
「じゃあ俺、仕事行ってくるね。お昼は冷蔵庫に入ってるから、あっためて食べな? ピンポン鳴っても、絶対出ちゃダメだよ。外には、怖~い人がいっぱいいるんだから」
「もぉ~、毎日言わなくても分かってるってば。いってらっしゃ~い」
「いってきま~す」
出勤する時、
黄葉くんを監禁していることは、誰にも知られてはならない。
俺がいない間に、
下手したら誘拐犯に仕立て上げられて、
あと基本的に、独身寮は同棲が禁止されている。
バレた場合、会社からなんかしらの処罰を受ける可能性がある。
もうすでに、
もともと、数日だけ預かるつもりだった。
これ以上一緒に住むなら、同棲可の社員寮へ引っ越す必要がある。
引っ越しかぁ、面倒臭ぇな。
だけどこれからもずっと黄葉くんと暮らしていくことを考えたら、引っ越ししないと。
そうと決まれば、引っ越しの手続きをしておくか。
毎朝、黄葉くんから「いってらっしゃい」と言ってもらえるだけでモチベーションが上がる。
黄葉くんが待っている家に早く帰りたくて、仕事の
黄葉くんに「カッコイイ」と言われたいが為に、身なりにも気を
オシャレな服を買ったり、美容院へ行ったり、筋トレをしたりして体作りもしている。
急に女性社員たちが
働きぶりが認められて昇進し、別の部署へ移動することになった。
それにより上司の尻ぬぐいするヤツがいなくなり、上司の無能っぷりが明らかになった。
俺の
無能上司は、
ざまぁみろ。
重要な仕事を任されるようになって大変だけど、その分やりがいも給料も上がった。
残業が減ったから、黄葉くんと一緒にいられる時間も増えた。
「黄葉くん、次のお休みはどこ行きたい?」
「ディスティニーランドに行ってみたいっ!」
「俺も黄葉くんと行きたいと思ってたから、行こうか」
「やったぁ~っ、楽しみぃ~っ!」
「ふふっ、俺も楽しみだよ」
可愛すぎて、ついつい甘やかしまくってしまう。
黄葉くんが来てからというもの、良いことしかない。
こんなに幸せで、いいのだろうか。
黄葉くんがいない生活など、もはや考えられない。
20年と言わず、一生、俺の側にいて欲しい。
꒰ঌ♥໒꒱꒰ঌ♡໒꒱
一方その頃、天界では――
「やっぱり、黄葉ちゃんが心配だな……」
天使階級の下級第三位に位置づけられる大天使は、人間に最も近い位置にいる。
天使の階級で一番下の第八位階だが、トップクラスの能力や権力を持っている。
上位天使との違いは、神と人間の間を仲介して人間に
大天使は
下級第三位の
背中に
「
翼を消し、人間に姿を変える。
白シャツ、黒ネクタイ、黒のスラックス、黒革の編み上げロングブーツ。
さらに、背中に大きな十字架が
「これでよしと。待ってろっ、黄葉ちゃん! 今行くぞっ!」
紫牟田は、黄葉が監禁されている独身寮へ向かって走り出した。
誰がどう見ても中二病ファッションであることに、紫牟田本人だけが気付いていなかった。
꒰ঌ♥໒꒱꒰ঌ♡໒꒱
コスプレ少年は、独身寮の周りで
どう見ても、
中二心が
「ちょっと、そこの少年。ここで何してるの?」
「あ、ちょうど良いところに。すみません、ボクの友達がここにいるって聞いて来たんですけど、何か知りませんか?」
「友達って、どんな人?」
「ボクよりちょっと小さい男の子で、黄葉って名前なんですけど……」
「なんだ。その子なら知ってるよ」
「えっ? 本当ですか! 会わせて下さいっ、ぜひっ!」
コスプレ少年が、
よっぽど、黄葉に会いたいらしい。
その時、白淵の直感が働いた。
隣人の
今まで一度も人を家に上げたことがない藍染が、自分の家に
藍染は、誰に対しても優しいタイプではない。
全く興味がない相手には塩対応だが、心を許した相手にはスーパーダーリンを
きっと藍染にとって黄葉は、特別な存在に違いない。
おそらくこの少年は、何らかの事情を抱えて家出してきた黄葉を探して来た。
もし黄葉の居場所を教えたら、連れ戻されてしまう。
連れ戻されたら、黄葉はいったいどうなってしまうのか。
うっかり「知ってる」と答えてしまった、数秒前の自分を
白淵は苦笑いをしつつ、適当に嘘を
「あ~……、えっと、ごめんね。1回だけ会ったことはあるんだけど、どこにいるかまでは知らなくて」
「そうですか……」
少年は分かりやすく、しょぼんと落ち込んで肩を落とす。
期待だけさせて、嘘を吐いてしまった罪悪感に少しだけ心が痛む。
可哀想なので、事情だけでも聞いてみようと話し掛ける。
「なんで、黄葉くんに会いたいの?」
「黄葉ちゃんが、何も言わずに急にいなくなっちゃったんです」
「何も言わずに、ねぇ?」
「そしたら神様が、『
「は?」
「黄葉ちゃんが
「いやいやいや、ちょっと待って! 理解が追い付かないんだけど……っ!」
「服装だけじゃなく、中身も中二病だったか」と、白淵は驚いた。
普通の人間だったら、ドン引きしただろうが。
中二病をこじらせている白淵は、少年の話に興味を
この単語に、中二心をくすぐられない中二病患者はいない。
「あのさ、立ち話もなんだし、良かったら近場のカフェでも行かない? おごるよ」
「え? 良いんですか? ボク、カフェ行ったことなくて、行ってみたかったんです」
「代わりに、色々聞かせてもらっていい? オレ、
「ボクは、大天使の
紫牟田は
中二病をこじらせているが、根は素直な良い子のようだ。
中学生くらいになると、おしゃれな大人のカフェに憧れる。
入ってみたいけど入りずらい、という気持ちも分かる。
かといって、
ひとりでカウンター席に座り、「マスター、いつもの」とクールに決めてみたい。
白淵は中学時代の自分と重ねて
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