第2話 中二病こじらせた自称天使
「どこに住んでるの?」
「天界」
「お父さんとお母さんは?」
「天使は神の意志によって創造された
「歳は?」
「少なくとも、138億歳以上じゃないかな?」
「友達は?」
「天使なら、天界にいっぱいいるよ」
かなり中二病をこじらせまくっている。
自分のことを、「
見た感じ中学生くらいだし、マジで中二病なのかもしれん。
ひと通り検査を受けて、異常なしと診断されたので連れて帰ることにした。
今日が休みで良かった。
これから一緒に住むなら、 黄葉くんのものをいろいろ買い揃えなきゃな。
よくよく考えてみたら、力が戻るまでっていつまでだよ?
「黄葉くんの力っていうのは、いつになったら戻るの?」
「分かんない。前に使い切っちゃった時は、元に戻るまで結構かかったよ」
「前ってのは、いつ?」
「う~んとね、人間の時間でだいたい100年くらい前かな?」
「戻るまで、どれくらいかかったの?」
「20年くらいだったと思う」
「そんなにかかるんだ? 大変だね」
黄葉くんの話は、相変わらずぶっ飛んでいる。
その話が本当なら、第一次世界大戦中に力を使い果たして、第二次世界大戦終戦後に力を取り戻したことになる。
力を失ったから、多くの人間が死んだと言いたいんだろう。
第二次世界大戦後に力を取り戻したから、世界中で復興が進み、急成長を遂げた。
中学生が歴史の授業で習った知識から、それっぽい想像をしたってところか。
黄葉くんはどう見ても、100歳越えのジジイには見えない。
フィクションじゃあるまいし、ショタジジイってことはねぇよな。
こんな可愛いショタジジイだったら、喜んで介護するわ。
まぁ、中二病こじらせたガキの
大きく手振り身振りしながら話す、黄葉くんが可愛いから良し。
適当に話を合わせて、
家出少年なら、すぐ迎えがくるかもしれないから高いものは買わない。
服とかは、俺のでいいだろ。
近場のショッピングモールに寄って、あれこれ買い揃えた。
最低限のもののつもりだけだったけど、思ったより買い物に時間が掛かり、家に帰る頃には日が暮れていた。
俺の家は東京都内にある独身寮だから、ワンルームでとにかく狭い。
ふたりで暮らすには、狭すぎる。
さすがに、
自分から黄葉くんを引き取りたいと申し出たから、今さら引くに引けない。
一時的に預かるだけだし、まぁええか。
「狭いとこだけど、ゆっくりしてね」
「ありがとう」
「悪いんだけどベッドひとつしかないから、俺と一緒に寝ることになるんだけど大丈夫?」
「いいよ」
「いいんかい」
昨日会ったばかりの男と
俺だって、自分で聞いといてどうかと思う。
家に招き入れて同衾するなんて、他の人間だったら絶対無理。
だけど、「黄葉くんならまぁええか」と思ってしまう。
黄葉くんだけが、特別なんだ。
俺はいったい、どうしてしまったのだろう。
黄葉くんは同衾に抵抗がないのか、すんなりと布団に入ってきた。
シングルベッドに男ふたりは狭苦しいはずなのに、何故かとても居心地良かった。
꒰ঌ♥໒꒱꒰ঌ♡໒꒱
翌朝、目を開けると黄葉くんの寝顔が至近距離にあって、めちゃくちゃ驚いた。
驚きのあまり絶叫しそうになって、慌てて自分の口を押さえた。
心臓がバクバクと、激しく鼓動している。
天使のように愛らしい、あどけない寝顔を見て思い出す。
そうだ、黄葉くんを拾ったんだった。
今でも、黄葉くんがいることが信じられない。
何故か、すんなりと受け入れられている自分も信じられなかった。
黄葉くんは、本当にビックリするくらい何も知らなかった。
どこでどう育ったら、こんな世間知らずになるんだ?
テンカイってところは、
黄葉くんは、やることなすこと全部俺の指示に
疑うということを、知らないのだろうか?
黄葉くんを拾ったのが、善良な俺で良かったな。
もし、ヤベェヤツに拾われていたら犯罪に巻き込まれていたぞ。
黄葉くんが来てからというもの、毎日が楽しくて楽しくて仕方がない。
何も知らない黄葉くんに、あれこれ教えるのが楽しい。
中二病をこじらせている以外は、そこら辺にいるただのガキなんだ。
「これはねぇ、こうなんだよ」
「へぇ~、そうなんだ! スゴ~いっ!」
黄葉くんは何を見ても驚くし、感激して目を輝かせる。
おっちょこちょいで、喜怒哀楽が激しい。
微笑ましくて、思わず笑みがこみ上げる。
どんな面倒なことも、黄葉くんの為ならなんでもやってあげたくなる。
黄葉くんがいるだけで、世界が鮮やかに色付いて見えた。
今までは仕事で疲れ果てて帰ったら、寝るだけの生活だったけど。
家に帰れば、黄葉くんが待っている。
どんなに仕事が辛くても、黄葉くんを養う為なら頑張れる。
「ただいま~」
「おかえり~」
「ただいま」「おかえり」と、言い合える幸せ。
家に帰ると、黄葉くんが玄関まで迎えにきてくれる。
黄葉くんが可愛すぎて、仕事の疲れもストレスも吹っ飛ぶ。
「外は危険なことがいっぱいだから、ひとりで外へ出ちゃダメだよ」
「そうなんだ? 分かった」
「それに黄葉くん、お金持ってないでしょ?」
「うん、ない」
「どこへ行くにも、お金が必要だからね。行きたいところがあったら、俺が連れてってあげる」
「ホント? やったぁっ!」
黄葉くんは、素直に状況を受け入れた。
監禁されていることにも、気付いていないようだ。
ごめんね、黄葉くん。
一生養い続けるから、このままずっと俺だけを癒し続けて欲しい。
中二病こじらせた自称天使であっても、俺にとっては本物の天使。
因習村になんて、絶対帰すものか。
꒰ঌ♥໒꒱꒰ঌ♡໒꒱
一方その頃、天界では――
「どうしよう? 黄葉ちゃん、どこにもいないんだけどっ!」
「黄葉くんなら、すぐ見つかると思ったんだけどなぁ」
人間界へ熾天使を探しに行っていた
熾天使は、神の聖性を象徴する燃え上がる光を常に放ち続けている。
だからふたりとも、すぐ見つかると踏んでいた。
ところが、どこを探しても熾天使の光を見つけることは出来なかった。
「
「本当にどこ行っちゃったんでしょうねぇ、黄葉ちゃんは」
天界にいる天使たちにも聞いて回ったが、誰も見ていないと首を横に振る。
「まさか悪魔にそそのかされて、
「もし、神の愛し子である黄葉くんが堕天したら、神様大激怒だよっ!」
堕天とは、神の
神に
天界から追放されて、地上まで堕ちた天使は人間になる。
さらに深く堕ちた天使は、堕天使と呼ばれる悪魔になる。
最も神に近い熾天使が堕天するなど、あってはならない。
「一刻も早く見つけ出して連れ戻さなければ」と、天使たちは焦った。
「いいか、お前らぁ! 神様にバレる前に、天使
「「「「「「おうっ!」」」」」」
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