いざ、地球へ

 意外にもぐっすりと眠れた俺は、部屋を眺めた。


 昨日と何ら変わらない、AI達にとっての日常であり、俺にとっての非日常がそこにはあった。


 俺は部屋を出て昨日リズと話した場所へ向かった。


 そこには、もうすでに準備完了だと言いたそうなリズと、大きな宇宙船があった。


「もう行けるわよね?」


「ああ、荷物は十分だ」


「いい?これから全員で地球に向かうわ、ステルス艦の構造を応用してあるから、くれぐれも窓の外に出ないように!」


 リズはAI達に話しかけて、宇宙船に飛び乗った。


 するとAI達も一人、また一人と宇宙船に乗った。


 AI達は、自ら自分の体を切り離し、綺麗に配置していく。


 エイリアンのようなAIたちも、柔らかい体の表面を体の中心にしまえば、見た目は他のAI達と変わらない。


 そうすることで小さな宇宙船にも、300余りのAIが乗り込むことができるのだ。


「カインさん、私はドアを閉めるので」


「ああ、失礼」


 俺は宇宙船に乗って、リズのところへ行った。


「しばらくは、その防具外さないほうがいいわ、地球に完全についてからにしなさい。人間の体はもろいから」


「そういえば、リズの体も人間の皮膚じゃないのかい?」


「私の意思で特殊なコーティングを施してあるの」


「そうか」


 AIが言う"私の意思"が妙に気になったが、俺はそのままにしておいた。


「行くわよ!」


 宇宙船は僅かな音と振動とともに、月面を飛び立った。


「これで……帰れるんだ……地球に」


 後ろを振り向くと、人類軍とAI軍が戦っている。


 同期は……ルーガと……


「リズ、ルーガとリカが……戦ってる」


「リカ!?」


「ヘレナを殺して、ルーガとも戦っているの?何をする気?」


 リズも、リカの謎の行動に明らかに動揺を隠せていないようだ。


「とりあえず、行くわよ」


 リズは宇宙船のスピードを上げ、地球に向かった。


「リカは、ヘレナの奴隷的な扱いじゃなかったのか?」


「もとはそのはずよ、ただ、今回ヘレナが月世界に来たのは偵察の為、人間の感性で、月世界を伺って欲しかったの。でも、万が一ヘレナが何か重大情報を流せば大惨事になるわ、だから、私と同じ人型AIにリカっていう名前が与えられて送り込まれた」


「じゃあ、ヘレナがリカに殺されたってことは、ヘレナは何をした?」


「わからない」


 リズはしばらく頭を抱えて悩んでいたが、そろそろ地球に着く事を察したのか


「着陸態勢に入るわ」


 と一言行ってハンドルを握り直した。


 まもなく大気圏内に入り、雲の下に入った。


 空が少しずつ紺から青に近づいていく。


 外を眺めていると、景色を見るまもなく機体が青い熱を帯び、やがて土埃にまみれた。


「出て、宇宙防具は要らないわ」


 外に出ると、まず俺の視界に飛び入ったのは草木の緑、そして、青々と広がる、澄んだ空だった。


 いつぶりだろうか。


 ここで空を見たのは。

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