Death人狼② 第一話

  「あ、悟くん、おはよう、ございます……」

「おはよ」

「……今日は小テストですけど、対策、してきましたか?」

「………」

悟は固まる。

「もしかしてですけど、小テストだってこと、忘れてましたか?」

「……忘れてた」

「あ、ノート、よかったら見せますよ」

「え、マジで⁉ よっしゃあ!」

「仕方ないですので……」

悟と杏奈は笑いあう。あの惨劇を二度と思い出さないように。けれど、そんなことは許されなかった。ぐん、と引っ張られたかと思うと、悟は教室ではない場所に立っていた。隣には杏奈もいる。

「ここって……」

「Ladies and gentleman! ようこそデスゲームへ!」

そこには変わらないGM。

「……来たか」

百夜もいる。新しい参加者は四人。

「では自己紹介をしましょうか!」

「……山上悟やまがみさとる

「む、村上杏奈むらかみあんなです……」

百夜びゃくや

城ケ崎雅じょうがさきみやびですわ。あなたたちのような庶民がわたくしを誘拐しようだなんて身の程知らずですわ。必ず、我が城ケ崎家が罰を与えますわ!」

雅は綺麗な黒髪で肌は透き通るように白い、自信過剰なところがありそうだ。

「え、えっと、僕は斎藤蓮さいとうれん

蓮は長い前髪でおどおどしている。杏奈と同じタイプだろう。

「ん……ぼくは桃宮望ももみやのぞむ

望はボサボサの髪の毛をかきむしる。けだるそうな雰囲気だ。

「俺様は林大樹はやしだいきだ!」

大樹は恰幅がよく、ガキ大将みたいだった。

「自己紹介は済んだようですね。私のことはゲームマスターを務めますのでGMとお呼びください。それではルール説明をいたします」

それはこの間のルールと同じ。


・参加者は途中で帰れない

・デスゲームは人狼ゲームのことを指す

・暴力はルール違反。また、二階に上がることは禁止とする

・ルール違反、または人狼ゲームで退場となった者は死亡する

・ゲームマスターは公平な立場である

・進行はゲームマスターが行う

・役職は、人狼2、狂人1、村人3、占い師1

・勝利条件は人狼サイドは村人陣営の全滅、村人サイドは人狼の全滅

・会議は一日一回、十五分間。投票は一日一回、会議の後。すべて広間で行う

・部屋には決められた人しか入れない

・人狼同士は誰か分かるが、狂人は知らない。また狂人も人狼が誰かは分からない

・狂人は占われても「白」と出る

・占い師は一度しか能力を使えない

・生き残れば願いを一つかなえられる

・死ぬ間際にヒント等言ってはならない


前回参加した三人は知っていたが他の四人は顔を青ざめる。

「し、死亡って、ど、どういうことなんですの……?」

「そのままの意味ですよ。人生からご退場いただきます」

全く同じ返しをするGM。ただ、最後は違った。

「じゃ、じゃあ、願いっていうのは……?」

「この人狼ゲームに生き残った方は必ず一つ、願いを聞き入れましょう。世界一周、お金持ちになりたい、どんなお願いも叶います。また、

「……⁉」

全員が固まった。GMの秘密。なぜ左手を隠しているのか。なぜデスゲームを開催するのか。謎だらけだ。

「おもしれえじゃねえか」

大樹が不敵に笑う。

わたくしも覚悟を決めましたわ。デスゲームとやらに参加しようではないですの!」

「ではみなさん、それぞれ各部屋が用意されております。お部屋にあります、一番上の引き出しを開けてください。それぞれの役職が書かれたカードが入っております」

悟たちは部屋に向かう。

(俺の役職は……と)

悟の役職は……「占い師」

(マジかよ。使うタイミングも難しいし、吊られたら終わるじゃねえか)

「皆さま、確認できましたでしょうか? それでは会議を開始しますので広間にお集まりください」

全員、広間に集まる。

「で、COカミングアウトは?」

誰も何も言わない。

「つまりなし、か。チッ。これじゃあ、吊れねえじゃねえか。投票、誰に入れたらいいんだよ」

「ふん。必要のない人を吊ればいいんですわ。そうですわねえ、斎藤連。あなたに投票いたしますわ」

「は……? な、なんで⁉」

「必要ないからですわ」

「感情で決めんじゃねえよ」

「では誰を吊れと言うのです? わたくしの心はすでに決まっていますので説得は無理ですわよ」

「そ、そんなあ……」

蓮は今すぐにでも泣きそうな顔だ。

「大体、死亡、とか書いていますけど、実際に死ぬわけないんですわ。比喩というものでしょう?」

「いや、実際に死ぬんだよ」

「ご冗談を。そんなことが許されるなら、今頃全世界の人間は死んでいますわ」

雅の言うことはごもっともである。確かに死ぬと言われても信じられないだろう。だが、悟は目の前で人が死ぬところを見ている。

「投票の時間です。投票箱に投票用紙を入れてください」

それぞれ、投票する。

「開票します。今回、追放されるのは……城ケ崎雅です」

「はあ⁉ な、なんでですの⁉ あなたたち、絶対に許しませんわ! わたくしに投票したこと、後悔して死ぬことですわね! パパに言いつけてやりますわ! わたくしのパパはすごいんですの! あの城ケ崎竜也なんですのよ⁉」

雅は怒りをおさえられないみたいだ。

「いや、なんで怒ってんの? 君が言ったのと同じことをしただけじゃん。ぼくにとって必要のない人を吊っただけなんだけど。文句言わないでくれる?」

「うっ……⁉」

雅は何も言い返せない。

「覚悟はお決まりでしょうか?」

悟はGMを睨む。

(前回はそんなこと、聞きもしなかったくせに)

「ほ、本当に死ぬわけではありませんわよね?」

「本当に死にますよ」

「う、嘘ですわ! そんな冗談、やめてくださいまし!」

「冗談じゃ、ありませんよ」

「嫌ですわ! まだやり残したことが、たくさんありますのに! パパ、パパ! 助けて!」

「それでは、向こう側に行ってらしゃいませ」

そう言いながらGMは優雅なお辞儀をする。その瞬間、壁から無数のナイフが飛び出してきて雅を貫いた。声も出せずに倒れる雅。

「う、うわああああああ⁉」

連が叫ぶ。無理もないだろう。人間が目の前で串刺しになったのだから。

「ほ、本当に死ぬんだ……次は僕の番……⁉ し、死にたくないよぉ!」

「うるせえ! 黙らねえと次、お前に票を入れるぞ!」

「ひゅっ……!」

大樹に脅され、連が黙る。

「それでは皆さま、お部屋にお戻りください」

GMは相変わらず、二階でにこにこと笑っている。その笑顔が不気味に思えた。雅の部屋の扉には×印。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る