あぁあ

mackey_monkey

はりぼて。

虫の音が嫌いだ。

人の声が、生活の音が、心臓の脈打つ感覚が。

私に生を実感させるありとあらゆるものが私は嫌いだ。


元来、私はそれらのものを好いていた。

だのに、いつの間にやら嫌いになっていた。


原因ははっきりとわかっている。

私の張りぼてのような、社会の中で生きるための支柱なようなものを揺らがすからだ。


その逃避にも似た支柱とは、つらくなったらひっそりと跡形もなく消えてしまえばいいなどという、まことに勝手な考えであり、倫理的にも間違っているだろうことだ。


しかしそれだけが、弱い私が自分の殻から脱することのできる唯一の理由でもあった。

それでいて、脆かった。

つぎはぎの、逃避の先に生まれた理論なのだから当然である。


風の感触や草木のなびくような、自身が生きていること感じさせるものに触れれば、たちまちのうちにそれは崩れてしまう。

そんな逃避の方法さえも恐ろしく感じてしまう。

そうして、再び何もできなくなってしまう。


だから私は、私に生を実感させるものが嫌いだ。

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