崩れる

 「姉さん……」

 「うん?」

 「……ずっと、好きだよ」


  震える声でそう告げると、紗羅は微笑んだ。

 「私も。……ルナは私の大事な妹だもん」


 その一言に、美緒の心は完全に崩れた。

 “妹”という言葉が、刃のように胸を裂いた。

 泣き出すルナを、紗羅は抱きしめながら何も言わなかった。

 ただ、雨音の中で二人の呼吸だけが静かに重なっていた。


 ルナはその腕の中で、目を閉じた。

 姉の体温を感じながら、涙をこぼし、心の奥で願った。


 ――このまま時間が止まればいい。

 ――もう、花なんて咲かなくていい。


 けれど、現実は残酷だった。

 彼女の喉の奥では、次の花弁が静かに育ち始めていた。

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