スリッパを時速(348-3/4+3=x=2y)で投擲した時に発生しうるバーテアが25、コーディンが61.34を記録した時、アルカナは幾つか10文字で答えよ。x及びyの【実数値】を答えよ。
メタルツリー・J・ジュンキング
第0話
――人の領域は、すでに尽きていた。
大地は掘り尽くされ、海は汚れ果て、山々すら資源を吐き出すことを拒んだ。
国は疲弊し、人々は飢えた。
そんな折、北海のさらに彼方に――白銀の大地が発見された。
人々はそれを《月鐘地》と呼んだ。鐘の音のように、冷たく響く風が鳴り渡る場所。
だがそこは、決して人を受け入れなかった。
調査団を何度送り込もうと、すべて全滅。生還者はわずかで、語る言葉は断片的だった。
「夜、怪物が現れた」「七日ごとに災厄が訪れる」――信じがたい証言ばかり。
そして国は、方針を変えた。
――死んでも構わぬ者を、送り込め。
傭兵、犯罪者、裏切り者。問題のある人間ばかりを寄せ集め、臨時の探査団を編成した。
任務は単純。九十二日間の探索を行い、生き残れば帰還。
報酬は破格、だが保証は一切なし。
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輸送船の船倉にて。
粗末な寝台にランプが灯り、荒くれ者たちが揺れる明かりの中に集められていた。
天井のスピーカーから、乾いた声が響く。
『任務説明を開始する。全員、耳を傾けろ。』
声は感情を排した、官僚めいたものだった。
『夜間は警戒を怠るな。生存者の報告では〝夜間に怪物が現れ仲間を凍らせた〟とある。信憑性に欠けるが、十分注意しろ。
それと――あの地では七日ごとに大きな災害、あるいは《魔法》と称される現象が発生するそうだ。眉唾物だが、生存者を疑うつもりはない。用心しろ。』
ざわめきが、船倉をかすめる。
『諸君の安全は保障しない。補給は限られる。覚悟せよ。
……それと。同行している船には多少の娯楽がある。ギャンブルは、程々にするなら好きにしろ。
以上だ。』
ブツ、と音を立てて無線が途切れた。
しばし沈黙が流れ――やがて、誰かが鼻で笑った。
「……相変わらず、死んでこいって任務だな」
そうぼやいたのは、鋭い眼光を持つ傭兵の男だった。
名前は――ああああ。
奇妙な名を名乗った時、誰も笑わなかった。誰も、その異様さを指摘しなかった。
「死ぬ気はねえけどな。……ああ、俺はああああだ。元傭兵。魔法ってのが本当にあるなら、ちょっと楽しみだな」
「ふん、夢見がちな男ね」
冷えた声を返したのは、短く刈った黒髪の女。
E968――そう呼ばれるエンジニアだ。
かつては破壊工作を専門としたテロリスト。だが今は、静かに工具を磨いている。
「……ベージュス、です」
神官服をまとった少女が、胸に手を当てて名乗った。
その笑みは純真そのものだが、瞳の奥に奇妙な熱が宿っている。
「俺は『ビック』ベン。大工だ。ま、役に立つかはわからんが……木があるなら家くらい建ててやるさ」
豪快に笑う大男の声に、わずかに場の緊張が緩んだ。
「ケーゴと申す。騎士である。任務とあらば命を惜しまぬ所存」
硬い声で言い切った青年の鎧は古びていたが、背筋だけは折れていなかった。
「……やまかやは、なやかやたまたゎなわなやてにはてて)ゆてやねー……」
温厚そうに微笑む漁師の名乗りは、誰も正しく聞き取れなかった。
だが不思議と、誰も聞き返そうともしなかった。
最後に、ノートを開いていた女が顔を上げる。
「記録係よ。名前は――そうね。GMと呼んで。皆さんを監視し、観察するのが役目」
その視線は冷たく、全員を射抜いていた。
こうして、七人の探査団は月鐘地へと送り込まれるのだった。
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