6.探偵部の初依頼は、まさかの幽霊?
「ハムスターって、あのハムスター?」
「ええ、多分あのハムスターよ。」
なんでハムスターを飼ってほしいんだ?てか、家で買えばよくない?なにか、家では飼えない事情があるのだろうか…。
「それは先生に聞いてみないとわかんないかなー。」
「そう…。じゃあ分かったら私に連絡して。電話番号はこれ。」
「ええっと……よし、打ち込めたよ。明日までには分かると思うから。」
え〜っと……話が進みすぎてよく分からないんだが。てか、部活を週5はやるって条件としてはおかしくないか?ハムスターの陰に隠れているが、こっちのほうが…いや、ハムスターの方がおかしいわ。
「とりあえず、ハムスターの件は分かったから。もう片方の部活を週に5回やるっていうのはどういうこと?」
「別に、大した理由はないわ。ただ、やるからにはしっかりやりたいだけよ。」
部活の活動日数に関しては、部活に入ってから決めても良いんじゃないか?わざわざ条件に出すことじゃ無いと思うんだが。なんだか、面倒事の匂いがするから触れないでおこう。
「まあ、分かった。今日のところは帰ってもらって大丈夫だから。」
「ええ、それじゃあ。さようなら。」
「バイバイ〜。」
…………
翌日の職員室にて
「ハムスタ〜?部室で動物を飼っても良いと思ってるのか?常識的に考えろ、ここは学校だぞ。」
「そこはなんとか〜。頼むよ〜りょうちゃん先生!」
まあ、こうなるだろうなとは思っていたが。ふむ、どうするべきか。先生を説得するというのは、現実的じゃない。なら、取るべき手段は一つしかない。
すなわち、強行突破だ。
俺たちは昨日登録した電話で彼女を呼び出した。
「まさか、ハムスターが飼えるようになったってこと?」
「それはね……うん、詳しくは矢坂くんに。」
「どういうこと?」
「簡単なことだ。無理なら強行突破するだけだ。」
「「?」」
そう、簡単なことなのである。無理なら隠しとうせばいい。それだけの事である。先生は部室にはあまり来ないと昨日確認が取れたし、あとは先生が来る日だけ別の場所に隠せば問題ない。うん、我ながら完璧な作戦だ。
「それって…大丈夫なのかしら?」
「隠せば問題ないのだよ。」
そう、比企谷八幡も言っていた。問題は問題にしない限り問題にはならない、と。
「ま、まあ、そういうことなら。約束通り入るわ。」
「うん!これからよろしくね。」
というわけで、晴れて部員も3人になったことだしようやく部活を始めことができる。柄にもなく、わくわくしているのは、俺の感がこれから楽しことが起こる、そう言っている。
でも、間違いは起こさない。俺があの日にした選択を忘れてはいけない。それが、俺の負の十字架なのだから。
「さて、晴れてこの教室は私たちのものになったし、まずは自己紹介しようよ!」
そういえば俺、この黒髪ロングさんの名前知らないんだよな。
「私の名前は塩谷結菜。好きな食べ物はアップルパイ!お父さんが探偵をやっていて、高校では探偵部を作ろうと思ってます!よろしくね。」
「
この黒髪ロングの美人は鹿沼葵というらしい。髪の艶が普通のそれとはレベルが数段違っている。雰囲気は、塩谷と比べると全体的にお
「最後は俺か。俺は、矢坂優作。好きなものはトマトスパゲティだ。よろしく。」
「よし、自己紹介も終わったことだし「ごめんなさい、ちょっといいかしら。」なに?」
「探偵部というのは?」
「そうだったね。それじゃあ、探偵部について説明しようじゃぁありませんか!」
「探偵部というのは、簡単に言うと生徒から調べてほしいことを私たちが実際に調査する、そういう部活になる予定だよ!」
なるほど、さながら「学校探偵」と言ったところか。
「まあ、良いんじゃないか。」
「ええ、私も異論はないわ。」
「よし、それでは探偵部の活動スタートだよ!」
………
翌日、俺は寝不足の体にむち打ちながら、西校舎の一階の一番奥にある視聴覚室に向かっていた。
理由は言うまでもないが、昨日から部活が始まったからである。
視聴覚室の扉を開けるとそこには既に部活仲間達が居た。
「あ、遅いよー。もう始まってるよ!」
「こんにちは、矢坂くん。」
「遅れたな。こんにちは、鹿沼さん。」
「さあて、早速依頼が届いております。」
「え、もう?早くない?ていうかどうやって届いたの?」
「あれ、教室入ってくる時に見なかったの?扉の横にポストあったでしょ?」
「見てなかった。ていうか、告知とかしたの?いくらなんでも早くない?」
「それは、私たちが昼休みに掲示板にポスターを貼ったりしたからね。」
あれ、俺遅れてない?てか、鹿沼さん思ったよりずっとやる気だった。
「そんなことより、早速依頼の説明するから矢坂くんは座って。」
「あ、はい。」
俺は、前回同様にホワイトボードの前の長机を挟んだパイプ椅子に座る。唯一、前回と違う点はその隣に鹿沼さんがいるところだ。
「今回の依頼はこちら!」
そう言って、ホワイトボードをくるりと反対側に回す。デカデカと書かれた女子の文字がある。
「今回の依頼は、夜の校庭に現れる謎の人影の正体を調査して欲しい!です。」
「謎の人影、ね。」
夜の校庭か。早速、危険な匂いがしてきたな。これ、幽霊とかだったらどうすんの。普通に足の震えが止まんないんだけど。
「夜まで校舎に残れるのかしら?」
「ふっふっふ。そんなこともあろうかと、部活動延長届を書いておいたのだよ。」
「「お〜。」」
なにこの子。前とは比べものにならないほど成長してる。あまりの用意周到さに一瞬、誰か疑ってしまうのは仕方がないだろう。なにせ、早とちりしたり、よくわかんない理由で俺のこと誘ったりするし。
「質問があるんだけど、その影は先生とか見たりしてないの?」
「そういえば、社会の田中先生は見たって言ってたね。」
「じゃあ、田中先生に話を聞きにいきましょう。」
「あー校庭で走ってる姿か。確かに見たな。」
「具体的に何時とか覚えてますか?」
「えーっと、10時頃だった気がするなぁ。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「10時頃となると、生徒は全員帰ってる時間だろうから、やはり外部の人間というのが最有力候補だな。」
「そうね。まあ、幽霊という可能性も否定はできないけどね?」
そう言ってこちらを見てくる鹿沼。う、俺がビビってたのが分かっていたのか。
「まあ、とりあえずは10時近くなるまで待機だね。」
塩谷がそう言うと、各自で好きなことをし始める。
俺は、鞄に入れていた文庫本を取り出して、物語の海に深く沈んでいくのであった。
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