第14話隠されたシンボルとシステム

第一部 ― 問いを運ぶ朝


その朝、学校はいつもと変わらないように見えた。

窓から差し込む陽光が教室の机を柔らかく照らし、生徒たちの笑い声が静かに響く。

だが、ケンゾにとって、その光景はどこか異質だった。

まるで世界そのものが息をひそめているように感じたのだ。


昨日見つけた封筒と、斜めの円のシンボル。

あの記号の線一本一本、紙の感触までもが、何かを「示している」気がしてならない。


ケンゾは腕時計をちらりと見た。

あと五分で一限目が始まる。

だが、今日はどうしても授業を受ける気にはなれなかった。


彼は隣の席のアリフに小さな声で話しかけた。


「アリフ……図書室に行かないか?」

「え? 今?」


アリフが眉をひそめる。

「もうすぐ授業が始まるぞ?」


ケンゾは首を振った。

「……探したいものがある。どうしても。」


アリフは少し考えた後、ため息をついた。

「……わかったよ。でも、先生に見つかっても俺のせいにするなよ。」



---


第二部 ― 図書室のシンボルの痕跡


図書室の空気は、どこか重く感じられた。

黄昏色の照明が温かく灯り、窓から射す光の粒が埃をきらめかせる。


ケンゾは昨日見つけた古びた本――『異界の象徴と謎』を開いた。

ページをめくるたびに、インクの匂いとともに何かが蘇る気がした。

やがて、そこに再び“斜めの円”のシンボルが現れた。

しかも、今回は微妙に違っていた。

線の中に、まるでコードのような追加の模様が刻まれている。


「これ……暗号か?」

アリフが本を覗き込みながら呟く。


ケンゾは小さく頷いた。

「いや、もっと深い……これは“導き”だ。リリィに関係している気がする。」


彼は本を傾けながら、角度を変えて眺めた。

その瞬間、線の一部がゆらりと動いたように見えた。

――まるで、意志を持つかのように。


「……本気でこの先を追うつもりか?」

「もちろん。これは偶然じゃない。リリィの“メッセージ”だ。」



---


第三部 ― システムの起動


ケンゾが記号を見つめていると、突然、図書室の灯りが一瞬だけ明滅した。

次の瞬間、彼の頭の中に声が響いた。

それは人間の声ではない。

まるで電子の囁きのように、直接意識へと流れ込んできた。


> [System Online]

[User: Naufal Kenzo]

[Phase 01: Symbol Recognition – Initiated]




「……システム?」

ケンゾの喉が乾く。心臓が早鐘を打った。


「ケンゾ? どうした?」

アリフが不安そうに覗き込む。


ケンゾは頭を振る。

「な、なんでもない……気にするな。」


だが、確かに聞こえた。

この“声”は現実だ。

そして――次の指令が続く。


> [Instruction: Analyze Symbol – Diagonal Circle Detected]

[Recommended Action: Locate Key Envelope / Hidden Journal]




ケンゾはページに触れた。

微かな振動が指先を走る。

何かが始まろうとしている――そう確信した。



---


第四部 ― 校舎の痕跡


ケンゾとアリフは再び校舎を歩いた。

静まり返った廊下に、二人の足音だけが響く。

壁のひび、床の汚れ、机の傷――どれも意味を持つように見えた。


やがて、空き教室の片隅でケンゾは見つけた。

机の表面に、薄く刻まれた“斜めの円”の印。


指でなぞった瞬間、再びあの声が響く。


> [Signal Detected]

[Location Key Confirmed]

[Next Step: Locate Hidden Journal]




アリフが青ざめた顔で言う。

「……ケンゾ、本当に大丈夫なのか? お前、何かに“操られてる”みたいだ。」


ケンゾはゆっくりと首を振った。

「違う……導かれているんだ。」



---


第五部 ― 秘密の日誌


二人は再び図書室へ戻った。

古い書架の奥、ほこりをかぶった本の裏――

そこに、小さな黒いノートが隠されていた。


表紙には小さくこう記されている。


> “見つける覚悟を持つ者へ”




ケンゾはそっと開いた。

最初のページに、見知らぬ筆跡でこう書かれていた。


> 「これを読んでいるということは、ケンゾ、お前の運命はすでに動き出している。

斜めの円のシンボルこそが“鍵”だ。

それを追え――やがて“Lynux”に辿り着くだろう。

世界は、お前が知る“現実”ではない。」




ケンゾの胸が高鳴る。

リリィ、記号、封筒、そしてこのノート。

全てが一つの線で結ばれていく。


「……ケンゾ、これ以上は危険だ。」

アリフの声が震えている。


だがケンゾはノートを強く握った。

「たとえ危険でも構わない。俺は進む。リリィのために――真実を知るために。」



---


第六部 ― リナックスの影


ノートを閉じた瞬間、視界の隅で“何か”が動いた。

黒い影。

長い外套をまとった人影が、廊下の奥に立っていた。


「……誰だ?」

ケンゾが息を呑む。


次の瞬間、その影は霧のように消えた。


「アリフ、今……見たか?」

「何を?」

「……黒い影。あれは――リナックスだった。」


アリフは顔をしかめた。

「ケンゾ……お前、もう限界だよ。」


だがケンゾの瞳には、恐れよりも確信が宿っていた。

「違う。これは始まりだ。あいつに、必ず会う。」



---


第七部 ― 夜の独白


夜。

机の上に並ぶ封筒、ノート、古びた本。

ケンゾは自分のノートに今日の出来事を書き込んでいた。


> 今日、俺は“導き”を感じた。

記号は俺を試している。

そして――何かが目覚めようとしている。




窓の外の星が瞬く。

風が静かにカーテンを揺らした。


そのとき、耳の奥で囁きが響いた。


> “Phase 01 – SkyEarth Awakening”




ケンゾは拳を握りしめた。

「……もう、戻れないな。」



---


第八部 ― 終幕と予兆


深夜。

ケンゾはノートに描いた“斜めの円”を見つめていた。

部屋の灯りが一瞬、明滅する。

冷たい風が背筋をなぞる。


> [System Online]

[User: Naufal Kenzo]

[Mission Phase 01: Symbol Synchronization – Active]




ケンゾは息を整え、封筒とノートを握りしめた。

胸の奥で、恐怖と決意が交錯する。


「……待っていてくれ、リリィ。必ず、もう一度会いに行く。

 そして――リナックス。

 お前の“世界”を、この目で確かめてやる。」


窓の外の風が優しく吹いた。

まるで彼の決意を祝福するかのように。


斜めの円は、微かに光を放った。

それは――新たな“物語”の幕開けだった。

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