第13話秘密のノートと謎の封
第一部 静かな朝
その朝、教室の空気はどこか違っていた。
大きな窓から差し込む柔らかな陽光が、机の上を照らしているのに――
教室全体が静まり返っていた。
生徒たちは小声で話し合い、宿題をしたり、ぼんやりと窓の外を見つめたりしている。
ケンゾは自分の席に座り、ノートを開いたまま、心ここにあらずといった様子だった。
頭の中では、数日前の空港の光景が繰り返されていた。
リリィの最後の笑顔。
そして彼女が残した、あの言葉。
――「もし私がいなくなったら、この光の向こうで探して。
“Lynux”という名を持つ人を、訪ねて。」
その言葉が今でも耳に残っている。
胸の奥に何か重たいものが宿り、息をするたびに締めつけられるようだった。
窓の外では風が木々の葉を揺らしている。
その穏やかな朝の空気が、かえって不安を際立たせた。
ケンゾは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
だが、脳裏にはあの「斜めの円」の記号が消えることなく浮かんでいた。
――あの記号。あれは偶然じゃない。
もしかすると、全ての始まりなのかもしれない。
---
第二部 突然現れた封筒
昼休み。
ケンゾは一人で静かな教室に戻ってきた。
誰もいない教室の中で、机の引き出しを開けた瞬間、彼は目を疑った。
そこには、見覚えのない茶色い封筒が一つ入っていた。
少し古びた紙の端に、薄く「斜めの円」の印が刻まれている。
――まさか……。
鼓動が速くなる。
それは、リリィがノートの片隅に書き残していたものと全く同じだった。
彼は慎重に封を切り、中から一枚の紙を取り出す。
文字は見知らぬ筆跡だったが、その内容は、まるで彼に語りかけるようだった。
> 「ナウファル・ケンゾへ。
この手紙を読んでいるということは、
君の旅が今、始まったということだ。
“斜めの円”の印を見失うな。
もう一つの世界が君を待っている。
Lynuxを探せ。
それが君の真実へと導く鍵となる。」
ケンゾは紙を見つめながら息を呑んだ。
現実離れした内容なのに、なぜか心の奥で「本物」だと感じていた。
---
第三部 手がかりを追って
放課後。
ケンゾは帰ることなく、学校の廊下を歩き回っていた。
壁、床、掲示板、階段の影――。
いつもなら気にも留めない場所に、彼は目を凝らす。
そして、階段の下の壁にそれを見つけた。
「斜めの円」。
今度のものは、より鮮明に刻まれている。
鼓動が早くなり、息が詰まりそうになる。
偶然じゃない。誰かが意図的に残した“印”だ。
彼は壁に手を当てた。
冷たい感触。しかしその奥に、かすかに“呼吸”を感じた気がした。
――この印は、危険じゃない。
むしろ……導いてくれている。
---
第四部 アリフとの会話
校庭の裏。
夕日が差し込むベンチで、ケンゾは友人のアリフに封筒を見せた。
「アリフ、この印……見たことあるか?」
アリフは首を傾げ、しばらく考え込む。
「いや、見たことはない。でも、どこかで似たようなのを見た気がする……。
たしか、図書室の古い本に。」
ケンゾの瞳に一瞬、光が宿った。
「本当に? なら、調べに行く。」
アリフは眉をひそめる。
「気をつけろよ、ケンゾ。こういうの、あんまり関わらない方がいい。」
ケンゾは微笑んで首を振った。
「それでも、俺は行く。リリィのために。」
---
第五部 図書室での発見
放課後の図書室。
静まり返った空間に、紙の擦れる音だけが響く。
ケンゾは古びた本棚を一つずつ調べていった。
そして、一冊の分厚い本を見つける。
『異界の象徴と記号』――。
ページを開くと、そこにあった。
あの「斜めの円」の記号が、はっきりと描かれていた。
> 「この印は、次元の門を意味する。
“特別な意識”を持つ者のみが、
この印の示す道を見抜くことができる。
その導きの先には――Lynuxがいる。」
ケンゾは息を詰め、ページを握りしめた。
これまでの出来事が、一本の線で繋がっていく。
――この世界の裏には、何かがある。
リリィは、それを知っていたんだ。
---
第六部 夜の独白
夜。
机の上には、古い本と茶色い封筒が並んでいた。
蛍光灯の光がわずかに揺れる。
ケンゾは日記帳を開き、静かにペンを走らせた。
> 「今日、俺は“印”の意味を知った。
この道の先に何があるのかは分からない。
でも、リリィを見つけるためなら――俺は進む。」
時計の針の音が部屋を満たす。
ケンゾは手のひらの上の印を見つめ、
その線の一つひとつを、まるで記憶に刻み込むようになぞった。
――もう、普通の生活には戻れない。
---
第七部 異変の予兆
その瞬間、部屋の明かりが一瞬だけ点滅した。
空気がわずかに震える。
まるで、何かが目覚めようとしているように。
> 「Phase 01 ― SkyEarth、起動準備完了。
ユーザー・ナウファル・ケンゾ、同期開始。」
ケンゾは息を呑んだ。
その声は、確かに“現実”の中で響いた。
胸の奥で何かが“開く”感覚――。
彼の世界は、静かに、しかし確実に変わり始めていた。
---
第八部 終章
ケンゾは窓の外を見上げた。
夜空に星が瞬き、風がそっとカーテンを揺らしている。
リリィの笑顔が、脳裏に浮かぶ。
その笑顔は、もう一度会うための“約束”のようだった。
「いつか必ず……。
俺は答えを見つける。Lynuxに会い、リリィを取り戻す。」
ノートの上の「斜めの円」が、かすかに光を放った気がした。
それは新たな旅の始まりを告げる灯火。
こうして――ケンゾの“SkyEarth”への物語が、静かに幕を開けた。
---
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます